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第五十九話

カーシャ視点となります。

 客室を出てすぐ、私が目指したのは自室だった。

 誰もいないことを確認した後に、部屋に入った私は部屋のクローゼットを開ける。

 その中には、隠していた大金が入った鞄がおいてあった。


「……これだけあれば」


 そう呟く私の頭にあったのは、アルフォートの不機嫌さを隠さない姿だった。

 ソーラスに対して最初アルフォートは、かなりの金額を喪失したと告げていた。

 それから考えるに、ソーラスが暴れた結果アルフォートはかなり高価な装飾品を失ったのだろう。

 それがアルフォートのあの乱暴な態度の一因であったに違いない。

 本当にソーラスは、火に油を注ぐようなことしかしていない。


 だが、現在私の胸にあるのは、ソーラスに対する感謝だった。


「でもこれだけあれば、その装飾品を弁償してもお釣りが出るに違いないわ」


 鞄を開き、中の金額を確認した私はそう小さく呟く。

 辺境伯との交易を横領して貯めた鞄の中の大金なら、今回の件でアルフォートが得た損害も保証することができるだろう。

 いくらエレノーラの肩を持つアルフォートでも、これだけの金額を援助した私を無下に扱うことはできないに違いない。


「それどころかこれだけあれば、私が公爵家に仕えたいと言っても、断ることはできないわ!」


 現状は、私にとって最善の状況とは言えない。

 ここでこのお金をアルフォートに渡すことに慣れば、私の想定していた未来は全てなくなる。

 例え公爵家に使えることができたとしても、侯爵家で好き勝手していた今よりもはるかに状況は悪くなるだろう。


「それでも、この金額があれば私だけは破滅を逃れることができる!」


 そう呟く私の顔に浮かぶのは、絶望したソーラスや、愛人、そして仲間である使用人達の顔。


「私はあんな結末になるもんか!」


 私だけは、破滅を回避する。

 その未来を疑うことなく、重い鞄を持った私は玄関へと歩きだす。


 重い鞄を抱えながら、私は周囲を確認する。

 が、廊下どころか玄関付近にさえアルフォートの護衛はいなかった。

 もう全てが終わったと思い込んでいる護衛達の浅慮に感謝しながら、私は玄関へと歩を進める。


 それから私は、慎重に取手に手をかけて力を入れ、扉を開け放つ。


 そして、私の目に入ってきたのは、玄関から少し先のところ、こちらに背を向けた状態で立っているアルフォートの背中だった……。

二話更新についてなのですが、ストックがなくなったため、明日までになると思います。

明後日から一日一話更新になるの思いますが、千を超える程には文字数を増やさせていただく予定です。

何とか一章までは区切らずいきたいのですが、少し更新が遅れる時があれば、「限界を迎えたか」と納得して頂けると幸いです……。

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