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第五話

 頬が熱を帯びる。

 その箇所に呆然と手を当てた私は、その時になってようやく自分が殴られたことを理解する。


 ソーラスは怒りで満ちた目で呆然とする私を睨み、叫ぶ。


「ふざけるな! あそこまで馬鹿にされて引き下がれというのか! あんな卑劣な罠までかけられて!」


 激怒したソーラスに、私は気圧される。

 だが、すぐに私は気圧された自分を恥じるようにソーラスの目を見つめ訴える。


「それでも、今公爵家を敵に回すのは自殺行為です!」


「黙れ!」


「……っ!」


 が、それは逆効果でしかなかった。

 感情的になったソーラスが私へと手を伸ばしてくる。

 まずい、そう考えた時には私はソーラスに突き飛ばされていた。

 大の男の腕力で押された私はあっさりとバランスを崩し、背後の壁へと身体をぶつける。


「ぐっ!」


 背中が壁に強く当たった衝撃で、肺から空気が押し出され、私は地面へと倒れ込む。


「身の程知らずが。お前は侯爵家の下僕、私の言葉に何も言わずに従っていればいいのに」


 地面に倒れた私へと、ソーラスが冷ややかな目付きでそう吐き捨てた。

 その目付きに、私は強い激情を覚える。

 その激情のままに、私は何とか立ち上がろうとして。


「……え?」


 ……自分の身体に力が入らないことに私が気づいたのは、その時だった。


 それどころか怒りの感情さえ、まるで掌の上の水のようにこぼれ落ちていく。

 立ち上がろうと必死に手で地面を押しても、起き上がることが出来ない。

 そんな私に、ソーラスは嘲笑を漏らした。


「それが本来の姿だと、ようやく理解できたかエレノーラ? それなら、次に私が来るまでに、公爵家をどうにかする算段を付けておけ」


 そう吐き捨てるとソーラスは、部屋を後にする。


 ……そんな中、私に出来たのは、屈辱に耐えながら蹲ることだけだった。

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