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第五十五話

アルフォート視点となります

「この手紙からは、まるでお前達が実家から捨てられた責任が、エレノーラにあるように書かれている気がするのだが、それは私の勘違いか?」


「そ、その手紙は違……」


「ほう? だったら、お前達がエレノーラから慰謝料をとるための相談を耳にしたと、使用人が私に教えてくれたのだが、それも使用人の聞き間違いだと言いたいのか?」


「……っ!」


 その瞬間言葉をした失ったアイーダとソイラの姿、それがエレノーラから慰謝料をとろうとしていたことを何より雄弁に物語っていた。

 アイーダとソイラは、この期に及んでもなお、エレノーラを虐げようとしていたのだ。


 そう、侯爵家で虐げていた時とまるで変わらずに。


 エレノーラの居場所が分からず、実家に手紙を送ろうとしたみたいだが、公爵家にいると知れば直接出向いて慰謝料を求めようとしたかもしれない。


「……本当にどうしようもないな」


 その手紙を目の前で握りつぶした私に対し、アイーダとソイラは一言も発しなかった。

 いや、発せなかったというべきか。

 その時になって、私は自分が怒りのあまり二人に殺気を飛ばしていることに気づく。

 ただの令嬢でしかない二人は、その殺気だけで口さえ開けなくなるほどに震えていた。


 が、それ見ても私は殺気を抑えるつもりにはならなかった。


 自業自得であることは分かっているが、最初私は実家から捨てられた時点で、もうこれ以上アイーダとソイラに対して何かする必要はないと感じていた。

 もうこれで、充分な罰だとそう考えて。


 ……故に、まるで反省の色が見えないアイーダとソイラに、私は落胆を隠せなかった。


 エレノーラが一体どれだけ侯爵家のために尽くしてきたのか、そんなことアイーダとソイラにとってはどうでもいいのだろう。

 ただ、エレノーラは虐げる対象でしかないのだ。


 それを知って、情けをかける気など私にはもうなかった。


「この屑達をどこかに捨ててこい」


「そんな!」


「今公爵家に捨てられたら……!」


 私の言葉に、アイーダとソイラがようやく言葉を発する。

 が、その言葉を私が聞くことはなかった。

 護衛達に合図し、二人は連れて行かれていく。


「お願い話を……」


「私達は……」


 最後まで、アイーダとソイラは何か叫んでいたが、それもすぐに聞こえなくなる。


「さて、話を戻すか」


 そして私は、何事もなかったかのようにかのように使用人達へと向き直った。


 ……使用人達の顔に浮かんでいたのは、絶望だった。

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