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第五十二話

アルフォート視点となります。

 ソーラスが部屋から連れ出された後、私の口元に浮かぶのは隠しきれない笑みだった。

 この瞬間を一体どれだけ待っていたか。

 この二年間がようやく形となった、そのことに私はこの場で人目も気にせず喜びたい衝動に駆られる。

 が、まだ喜ぶには早いことを、私は理解していた。


 まだ罰を与えなくてはならない人間達が残っているのだから。


「一体何が……」


「と、当主様が……」


 客室の外から聞こえてくる囁き声。

 聞こえてくる方向に私が目を向けると、そこにいたのは騒ぎを聞きつけて集まった使用人達の姿だった。

 それを見て、私は小さく笑みを漏らす。


「呼ぶ手間が省けたな」


 ……その言葉に使用人達の顔に、隠しきれない動揺が走ることとなった。


 今さらながら彼らも気づいたのだろう。

 私の怒りの矛先が、ソーラスだけではなかったことを。


 が、今気づこうがもう既に遅かった。


 嘲りを顔に浮かべ、私は告げる。


「ここまで侯爵家が問題を起こしていて、使用人に責が及ばないと本気で思ったのか?」


 呆然とする使用人達の後、一人の歳若い侍女が密かに逃げ出そうとしたのはその時だった。

 後ろにいる自分なら、逃げても気づかないとでも思ったのだろうか?

 その浅慮を嘲笑いながら、私は侍女へと口を開く。


「カナリア・アスリーズ、どこに行く気だ?」


「……っ!」


 私の声に周囲の使用人達も侍女、カナリアが逃げようとしたことに気づく。

 非難の目に晒される中、振り向いたカナリアの顔は青ざめていた。

 私が使用人の一人でしかない彼女の名前を呼んだことで、カナリアもようやく理解できたのだろう。


 私には、ただ一人として使用人達を逃がすつもりがないことに。


 私の思惑を理解して震える彼女へと、私は感情を覆い隠した笑顔で告げる。


「エレノーラ嬢を傷つけた屑を許すつもりはない、そう言ったのを聞いていなかったのか?」


 ……その言葉に、今度は他の使用人達全員の顔から血の気が引くことになった。

 使用人達がエレノーラにしたこと、それを全て私が把握していることに気づいたのだ。


 そんな使用人達へと、私はさらに言葉を続けようとする。


「ま、待って! 私は罪に問われないのよね?」


 私の背後から、焦ったような声が響いたのはその時だった。

 振り返ると、私の目に入ってきたのは私に向かって縋り付くような目を向けるアイーダとソイラだった。


「全てを話したら、侯爵家の罪は問わないと言ったわよね!」


 彼女達が告げたのは、私が侯爵家の情報を語る条件としてアイーダとソイラに約束した条件だった……。

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