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第四十八話

アルフォート視点となります。

 ソーラスの表情の変化に、私は悟る。

 ようやくソーラスも、私に縋ろうが無駄であることに気づいたことを。


 笑顔を顔に貼りつけたまま、ソーラスに私はさらに言葉を続ける。


「言っただろう? 恩人を──エレノーラ嬢を傷つけた屑を許すつもりなど私にはない、と」


「……エレノーラ?」


 ソーラスの顔色が変化したのはその時だった。

 私の口から告げられたその名前に、呆然と顔を上げる。

 そんなソーラスへと、私はさも今気づいたように口を開いた。


「ああ、そうだ。エレノーラ嬢は、この私の恩人だよ」


「……ありえない! エレノーラの口からは、一言もそんなこと言われてない!」


「そうだろうね。エレノーラ嬢自身でさえ、公爵家新当主に借りがあることなど知らないのだから」


「何を言って……?」


 私の言葉に、ソーラスの顔に疑問が浮かぶ。

 それを見る私の脳裏に蘇ってきたのは、かつてエレノーラ嬢に救われた時の記憶だった。

 彼女の助けがなければ私は、公爵家当主になっていないどころか、命さえ失っていてもおかしくはなかっただろう。


 だが、その事情をソーラスに細かく教えてやる気は私にはなかった。

 ソーラスに教えてやらなければならないのは、もっと別のこと。


 もう、侯爵家に残っているのは地獄だけという現実、それを教えるため私はソーラスに告げる。


「今さらそんなことを気にしてどうする? 自分の未来を気にかけていた方がよっぽど有益だと思うが」


「……っ!」


 その言葉に、ソーラスは顔を歪める。

 その様子を冷ややかに見つめながら、私はさらに言葉を重ねようとして。


「エレノーラ嬢をあれだけ痛め付けておいてよくそんな態度をとれるものだ。 エレノーラ嬢は未だ床から上がれないのに」


 ……ソーラスの雰囲気が変化したのはそのときだった。


「エレノーラが、未だ床から上がれない……? 何で今のエレノーラの状態を知っている?」



 私の言葉を繰り返すソーラスの顔に当初浮かんでいたのは、どこか何かを考えるかのような表情だった。


 ──しかし、その顔はすぐに憤怒の表情へと変化した。


「……そうか。お前が、お前がエレノーラを侯爵家から奪ったのか!」


 怒りの叫びと共に、ソーラスが掴みかかってきたのは、次の瞬間のことだった。

次回から二話ほど、ソーラス視点入ります。

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