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第四十一話

ソーラス視点となります。

「あれだけのことをして、公爵家を敵に回した人間がよくそんなことを言えるな……」


 そう呟くアルフォートの口調に浮かんでいたのは、ただ疑問そうな響きだった。

 その口調からは、私と公爵家との間のごたごたに怒りを覚えている様子は見受けられない。


 ……だが、本来であれば安堵すべきアルフォートの様子に、私は焦燥を覚えることとなった。


 このままでは公爵家と敵対する原因となった一件に関して、口外されるかもしれない。

 それは私にとって絶対に避けたいことで、何とか阻止しなければならない。


 が、今どうやって独り言に口を挟むのか、タイミングが掴めぬまま、アルフォートがさらに口を開いた。


「……公爵家主催のパーティーの中、私の妹を下級貴族と勘違いした上手篭めにしようし、結果無様に振られたのを逆恨みして暴れていた男が、侯爵家ではここまで強気なのか」


「……っ!」


 顔に朱が走り、屈辱に私は唇を噛み締める。

 それは頑なに侯爵家で隠してきた公爵家での一件だった。

 にもかかわらず、暴露してしまったアルフォートへと私は憎悪の視線で睨み付ける。

 しかし、そんなことをしてもなんの意味もなかった。


「……私としては、周囲の貴族に公爵家にはめられたといい回ることさえ目をつぶる、かなり寛容な対応をしたつもりなのだが?」


 こちらに呆れたような目を向け、そう告げてくるアルフォートに私は内心怒りを抑えられなかった。

 そんなこと信じられるわけがなかった。

 この侯爵家の当主である私の誘いを断った女が、誰の命令も受けていなかったなど信じられるわけがないのだから。

 例え、その女が公爵家の人間だったとしても。

 それでも、その気持ちをアルフォートに告ことなど私にはできなかった。

 内心の不満を隠し、謝罪の言葉を口にする。


「……公爵閣下のご温情に感謝しております」


「はあ……。確かに侯爵家が邪魔でいざと言うときに備えて準備はしていたが、本当にあの騒ぎに私はなんの手出しもしていないのだがな」


 にもかかわらず、なぜかアルフォートの顔に浮かぶのは呆れだった。

 少しの間、アルフォートは呆れを隠さず眺めていたが、その顔を真剣なものにして口を開いた。


「とはいえ、あの時壊したものの弁償。そして、エレノーラ侯爵夫人を虐げたことに対する罰則に関してはきちんと受けてもらうがな」


 ……その言葉に私は唇を強く噛み締めた。

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