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第四十話

ソーラス視点です。

 アイーダとソイラの姿に、もう私は理解出来ていた。

 ここにいる以上、アイーダとソイラがエレノーラのことに関して口を割ったのだと。


 ……そしてアイーダとソイラが口を割ったことにより、私はさらに酷い状況へと追い込まれることになったことを。


「逃げるだけではなくらお前達は公爵家に裏切ったのか……!」


 気づけば私は、アルフォートと共に立つアイーダとソイラへと、そう叫んでいた。

 今さらすぎる後悔が胸によぎる。

 アイーダとソイラが逃げ出したところを実家だと思い込まず、裏切った可能性を考え探し出すべきだったと。

 そうしていればこんな状況には、そう考えて私はアイーダとソイラを睨みつける。


 おかしくて堪らないと言いたげなアルフォートの声が響いたのは、その時だった。


「いや、この二人が逃げたのは実家であっているよ」


 空気を読まないアルフォートの言葉に、私は反射的に敬語さえ忘れ、叫び返す。


「だったらなぜここにいる!」


 もはや私には、先程の余裕は欠片も残っていなかった。

 不敬であることや、今公爵家の機嫌を損ねることがどれだけ不味いかさえ忘れ、私は怒鳴る。

 だが、そんなことなどまるで気にすることなく、アルフォートは口を開く。


「簡単なことだよ。──その二人は逃げ帰った実家の人間によって、私に差し出さたのさ」


「……は?」


 そして告げられたのは、私もまるで想像しなかった事実だった。

 アイーダとソイラには少なくない金をやっていたし、彼女達はそれを実家にも入れていたはずだ。

 なのになぜ、アイーダとソイラは実家に捨てられたのか。

 まるで理由が呆然とする私を他所に、アルフォートはおかしくて仕方ないといった様子で笑いながら告げる。


「ふ、ふふ。いやどうやらこの二人は、自分が稼いでいることを盾にして、実家で我が物顔で振舞っていたらしい。結果、あっさりと実家に見捨てられたと」


 そう言いながら、アルフォートは堪えきれなくなったように笑い声をあげる。


「し、しかも、この二人は高圧的な態度で実家に保護を迫て、その結果がこのざまだと。ふふ。本当になんの喜劇なんだか」


 腹を抱えて笑うアルフォートの後ろに立つアイーダとソイラの顔はいつの間にか朱に染まっている。

 その態度が、何よりアルフォートの言葉が真実だと物語っていた。


 どうやら私を裏切った二人は、勝手に自滅していたらしい。

 しかし、その二人の末路を見た私が覚えたのは、強い怒りだった。


「お前達は勝手に自滅するならともしれず、侯爵家まで巻き込こんだのか……!」


 激しい怒りが、私の胸の中膨れ上がる。

 どれだけ醜態をさらせば、この二人は気が済むのか、そんな思いが胸に膨れ上がる。

 アルフォートに話さないように言われているのか、怒りに顔を歪めながらも何も言わないアイーダとソイラにその怒りをぶつけるべく私は口を開く。


「恥をしれ!」


 初めての私の怒声に、アイーダとソイラの肩が震える。

 それを気にとめず、さらに私は怒鳴ろうとして。


「……元凶のお前がそれを言うのか」


 が、次の瞬間響いた呆れを隠さない声に、私の気勢は削がれることになった……。

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