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第三十六話

ソーラス視点となります

「……公爵家のアルフォートが屋敷にやってきた、だと?」


 突然の来客を私が告げられたのは、カーシャからのことだった。


「は、はは、つまらない冗談はやめてくれないか?」


 最初、その言葉を私はただの冗談としか思わなかった。

 ……いや、そう思い込みたかった。

 だが、私の願望はあっさりと否定される。

 ただ、顔を青くして俯くカーシャの姿に、アルフォートがやってきたことが本当だと気付かされる。


「追い返せ!」


「……っ!」


 その瞬間、辛うじて取り繕っていた冷静さは消え失せ、私はカーシャへとそう怒鳴りつけていた。

 焦燥が頭を支配し、私はそれを呆然とするカーシャへとぶつける。


「私はいない、そう言って早くアルフォートを屋敷から追い出せ!」


「そ、そんなこと不可能です!」


「うるさい!」


 カーシャの言葉通り、今さらアルフォートに居留守が使えはしないことぐらい私だって理解していた。

 この場所に来たというならば、私がいることだってアルフォートは掴んでいるだろう。

 それに、いくらメイド長であるカーシャであれ、高位貴族であるアルフォートを追い出すことなんて出来ない。

 それを理解しながらも、私はカーシャに怒鳴る。


「私は侯爵家当主だぞ! いいから、早くアルフォートを追い出せ!」


 なぜ公爵家がこの場所に乗り込んできたのか、私には分からない。

 公爵家と本格的に問題に関して話し合うのは、もう少し先になるはずだと私は思い込んでいたのだから。

 なのにアルフォートは、私の意表をつくように突然、侯爵家に押しかけてきたのだ。


 ゆえに私は、どうしても今アルフォートと会うことを避けようとしていた。

 エレノーラがおらず、まるで心の準備が出来ていない今、アルフォートと話し合うなんて心の準備など私には出来ていない。

 こんな状況で、アルフォートと話し合うのは、絶対にごめんだ。

 もう一度カーシャを怒鳴りつけ、アルフォートを追い出すように言いつけようと私は口を開く。


 ……若い男性のものと思われる声が響いたのはその時だった。


「何やら、騒がしいが何かあったのかい?」


 今までの足掻きが全て無駄となったことを理解した私の顔から、一気に血の気が引くこととなった……。

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