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第三十四話

カーシャ視点です。

 それからの日々は使用人達、特に私にとって恐怖の日々だった。

 私達の行動を防ぐところか、今までのこと全てを暴こうとするエレノーラを、私達使用人達は力を合わせ排除しようとした。


 エレノーラは、本当の天才だと私達が理解することになったのは、その時だった。


 強欲令嬢と呼ばれているのが信じられないほど、エレノーラは有能で潔癖な人間だった。

 だが、噂だけを信じるソーラスはまるでそのことを認めず、エレノーラを強欲令嬢だと思い込んだ。

 エレノーラと婚約した自分は不幸だと、思い込んでいたのだ。


 そんな主人の信用がまるで得られない状況でありながら、エレノーラは私たちを着実に追い詰めていった。

 一度は私も、不正で蓄えた金銭を持って逃げようとしたが、それさえエレノーラに防がれた。


 思い出す。

 あの時は本当に、エレノーラに私は恐怖した。

 愚かなソーラスが次々と問題を起こし、貴族達との諍いにエレノーラをこき使ってさえいなければ、私達の悪事の証拠をエレノーラは、掴んでいただろう。

 ソーラスに敵視された上、こき使われながらもただ。


 そんなエレノーラに私達がとった最後の手段は、食事だった。


 極端に栄養の少ない家畜の餌しか、私達はエレノーラに出さないようにしたのだ。

 エレノーラに毒入りの食事を渡したならば、優秀な彼女はそれを逆に証拠とし、私達に反撃しただろう。

 が、そんなエレノーラにも弱点があった。


 ──彼女は孤独を誤魔化すためか、耐えることに慣れすぎていたのだ。


 だから、エレノーラは粗食にも耐えてしまった。

 それが、後々どれだけ重大な疾患を身体に引き起こすか、考えもせずに。

 自分だったら、大丈夫だと思い込んでしまったのだ。


 エレノーラが人並みはずれて耐える力があったのは確かだろう。

 事実、エレノーラは想像以上にあの粗食での過労に耐えていた。

 最終的には、二年近くエレノーラはそんな生活を続けていたのだから。


 だが、さすがのエレノーラもそれが限界だった。

 あの優れた知能が見る影もないぼろぼろな状態となり、最終的には使用人の悪事さえ思い出せない状態になっていた。

 ソーラスは大人しく動くと喜んでいたが、エレノーラは明らかに限界だった。

 異常とも言える精神力で、貴族達の諍いを解決していたが、それが後何週間もったか。

 あともう少しあの生活が続いていれば、エレノーラは確実に廃人になっていただろう。


 そのことに私は歓喜した。

 これなら、ゆっくりと準備を整え、侯爵家を逃げ出すことが出来る。

 これだけの金があれば、どんな貴族であれ受け入れてくれる、と。


 しかし、それでもエレノーラの呪縛は終わっていなかった。

 私はエレノーラによって、さらに悪い状況に陥らされることとなったのだ。


 ──そうエレノーラが、侯爵家から逃亡したことによって。

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