表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/86

第三十二話

「ふざけるな! 今まで私がどれだけ……!」


 アイーダとソイラが逃げ出したということに、私は怒りを抑えることが出来なかった。

 傍にあった机を叩きつけ、怒声をあげる。


「絶対に許さない!」


 今思い出せば、エレノーラが逃げ出すきっかけもあの愛人二人だった。

 それでも私は許してやったのに、今さら侯爵家から逃げ出すのか!

 使用人達から怯えの視線を向けられていることさえ気にとめず、私は怒りを露わにする。


「当主様!」


 そんな中響いた、私を諌める声に視線をやると、そこにいたのはカーシャだった。


 その姿を目にした私の中、さらなる怒りが膨れ上がる。

 辺境伯の言っていた不正、それに少なくともカーシャが関わっていることは私も理解している。

 だからこそ、未だ我が物顔をしてこの場にいるその姿を目にする度、強い怒りを私は覚える。

 だが、その怒りを抑え私は口を開く。


「……なんだ、カーシャ」


 怒りを覚えない訳では無いし、いつか報いは受けさせると決めている。

 が、カーシャの実家が侯爵家に味方してくれる数少ない貴族で、今まだ公爵家とのごたごたが片付いていない状況では、彼女を冷遇することができない。


「落ち着いてください。まだ、手はあります」


 一方のカーシャも私のその思いに薄々気づいているはずだが、彼女はいつも通りに口を開く。

 その態度と、未だ状況が分からぬような言葉を告げるカーシャに、苛立ちを覚えた私は、その態度を隠すことなく口を開く。


「ふざけるな! そんなものがあれば私だって!」


「実家から今、今エレノーラ様の足跡を見つけたかもしれないと連絡が来ました」


「……は?」


 一瞬、カーシャの言葉を私は信じられなかった。

 言葉を告げることも出来ず、呆然と私はカーシャを見つめる。

 そんな私を安心させるよう頷き、カーシャは言葉を続ける。


「奥様さえ身柄を差押れば、貴族達の対応も変化しましょう。そうなれば、アイーダとソイラにも然るべき報いを受けさせることができます」


「そうか! よくやった!」


 ようやくこの状況から抜け出せるかもしれない。

 そんな希望を見つけ、私は笑う。


 エレノーラさえ戻れば、状況は大きく変わると。


「カーシャ、実家に命じていち早くエレノーラを見つけるようにしろ!」


「はい!」


 部屋を後にしたカーシャの姿を見ながら、私は声を上げて笑い始める。


「ふふ、ふはははは! とうとう見つけたぞエレノーラ!」


 これならば、カーシャに罰を与えるのも考えてやってもいい、そう思いながら……。

次回から三話ほど、カーシャ視点となります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ