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第三十話

今回から、ソーラス視点です。

 辺境伯があの場を去った後、私達は執事達に強制的に屋敷から追い出されることとなった。

 それも、私が侯爵家であることさえ考慮しない乱雑なやり方で。


「くそ! くそが!」


 帰りの馬車の中、私は強い怒りに支配されていた。

 辺境伯に胸倉を掴まれた時に覚えた恐怖は今、強い憎悪へと変わっていた。


「所詮伯爵位でしかない癖に、こちらが下手に出ておれば調子に乗りおって!」


 発散することの出来ない苛立ちに、私は衝動的に馬車の壁を殴りつける。

 が、丈夫な侯爵家製の馬車が傷つくはずもなく、逆に拳が砕けそうな痛みが私の拳に走る。


「っ!」


 あまりの痛みに私の口からうめき声が漏れる。

 カーシャが私へと声をかけたのは、その時だった。


「だ、大丈夫でしょうか、当主様?」


「黙れ!」


「……っ!」


 情けない所を見られた苛立ちも込めた怒声に、カーシャが肩を縮こまらせるのがわかる。

 だが、そんな態度で私の怒りが収まることは無かった。


「覚えておけカーシャ。私が怒りを覚えているのは、お前も同じということをな! 公爵家の件が終わり次第、不正を私になぜ黙っていたのか、聞かせてもらうぞ!」


「そんな! 私にそんなつもりは……」


「黙れと言っただろうが!」


 顔を青くして俯くカーシャ。

 その姿に少し溜飲が下がるが、直ぐに私の頭の中は苛立ちで占められることになる。


「……私をここまで虚仮にしたこと、絶対に許さぬぞハイリッヒ・マルレイア。その無礼と落とし前を絶対につけてやる!」


 今、一番私が苛立ちを覚えているのは、辺境白にたいしてだった。


「エレノーラが戻れば、いや、屋敷に戻れば今すぐにも他の貴族達が辺境伯と関わらないよう通達を出してやる!」


 口許に笑みを浮かべ、私はそう告げる。

 侯爵家は由緒正しいだけあり、未だ貴族社会に一定の影響力を持っている。

 それを使いさえすれば、辺境伯もただではいれないはずだ。


 そう考えた私は、屋敷に戻り次第すぐさま動き始め……しかしその目論みは、その翌日あっさりと潰えることになった。


 ──関わりのあったほとんどの貴族から届いた、侯爵家との交易を見合わせたいと書かれた手紙の山によって。

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