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第二十三話

 辺境伯が告げた言葉に、そんなこと信じられるわけがない、という思いが喉元まであがってくる。

 ……私がエレノーラに昔言われた言葉を思い出したのは、その時だった。


 ─ソーラス様、辺境伯との交易での不正に関して、調べる許可を下さい!


 そう言われた時、カーシャにエレノーラの戯言だと断言されたこともあり、私は煩わしさしか感じなかった。

 だから、私はエレノーラの言葉をよく聞きもせずに跳ね除けた。

 未だ反抗的だったエレノーラが、私達を困らせようとしているのだと、ただの嘘だと思い込んで。


「……っ!」


 今さらながら、あの時エレノーラの言葉を聞いておけば良かった、などという後悔が胸によぎる。

 それどころか、エレノーラの言葉を戯言だと私に告げたカーシャに対して、どう責任を取るつもりだと怒鳴り付けたい衝動にさえ駆られる。


 だが今は、そんな場合ではなかった。


「……分かって頂けましたか?」


 表面上は冷静に、けれどその目には隠しきれない怒気を露わにして問いかけてくる辺境伯。

 その姿に、私はとにかくこの状況を何とかしなければならないと必死に頭を動かす。

 何としてでも今、辺境伯の協力が無くなるのは避けなければならないと。


 ……しかし、どれだけ必死に頭を回そうがこの状況の打開策が私の頭に浮かぶことはなかでた。


 せめて、不正に関する有益な情報さえ持っていれば、状況は違っただろう。

 が、いままで不正のことすら忘れ去っていた私に、この状況をどうにかする案はない。


「マルレイア辺境伯様、私は誰が不正を行ったのか、心当たりがあります」


 カーシャが、突然声を上げたのはその時だった。

 突然のことに呆然と目をやった私に、カーシャは小さく頷くと、口を開いた。


「栄えある侯爵家の中に不正を行う人間などいるとは思いません。とはいえ、一人候補を上げるとすればこの交易にも関わらっており、なおかつ侯爵家をあまりよく思っていない人間。──奥様、エレノーラ様が不正の犯人かと思います」


 次の瞬間、部屋の中は沈黙が支配することとなった。

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