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第二十話

本日二回目の更新となります。朝にも更新しておりますので、ご注意ください。

 屋敷に辿り着いた私を出迎えたのは、辺境伯その人だった。

 辺境伯は少し驚いたような顔をしながら、口を開いた。


「……まさか、態々出向いてこられるとは」


 その言葉に私は、今更ながら辺境伯から貰った手紙の中に後日伺うと書かれていたことを思い出す。

 だが、そんな悠長に待っている時間など私にはなかった。

 今は一刻も早くエレノーラを取り戻し、公爵家のための対策を練らねばならない状況なのだから。

 が、その内心を覆い隠し私は笑う。


「いえいえ、私の不肖の妻のことでマルレイア辺境伯に出向いて頂く訳には行きませんから」


 どれだけエレノーラを早く戻したくても、この辺境伯の前でその気持ちを露にするほど、私は考えなしではなかった。


 目の前の辺境伯は、一応は侯爵家の下の身分となっており、私にも敬意を使う。

 けれどマルレイア家は、侯爵家になってもおかしくなかった家だ。

 子供がいないことを理由に辺境伯に留まっているが、その権力的には侯爵家、いや、公爵家にさえ匹敵するとさえ言われている。


 そんな相手に、感情的になって不敬を働く訳には行かない。

 故に私は、問い詰めるような形にならないよう意識しつつ、口を開く。


「ところで、私の妻についての話と伺いましたが、一体妻はどこに?」



「……エレノーラ様? いえ、当家にはきておりませんが……」


「…………は?」


 ……しかし、そう私が意識できたのは少しの間だけだった。


 怪訝そうに聞き返した辺境伯に、一瞬私の思考が止まる。

 私は引きつった笑みを浮かべ口を開く。


「ご、ご冗談を……」


 けれど、その私の言葉に辺境伯からの返答が帰ってくることは無かった。

 辺境伯は困ったように口を噤んでおり、その時になって私は気づく。


 辺境伯の言葉は本当で、エレノーラはこの屋敷には来ていないのだということを。

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