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第十七話

「エレノーラが伯爵家にいないだと!」


 私がようやく危機感を抱き始めたのは、伯爵家からのその手紙を目にした時だった。

 今まで私が冷静であれたのは、エレノーラをすぐに戻せると思い込んでいたからだった。

 軟禁されていたエレノーラが逃げられる場所は、唯一連絡が着いた伯爵家だけであるはずだと。


 その考えが間違いであったことは、私に大きな動揺をもたらすことになった。


「だったら、エレノーラはどこに行ったというのだ……!」


 思い出すのは、逃げ出す前私に突き飛ばされ倒れていたエレノーラの姿。

 あの時のエレノーラの状態では、自分の足で逃げられるとは到底考えられない。

 使用人などに馬車に乗せてもらわなければ、長距離を移動などできないはずだ。


「伯爵家ではない、ほかの貴族が手引きしたのか? ……いや、ソレは考えにくいか」


 頭に浮かんだ考えを、私はすぐに否定する。

 エレノーラは貴族社会にも疎まれている強欲令嬢だ。

 そんな人間を助けようとする人間などない。


「まさか、自分の足で歩いて逃げたのか!?」


 その考えに、最悪の事態を予測した私の背中に寒いものが走った。

 あの状態のままエレノーラが逃げ出したとすれば、最悪死んでいてもおかしくはない。

 素人目でも、それぐらい分かるほどに彼女は衰弱している。

 そうなれば、公爵家に対処する手段はなくなってしまう。


 その前に、私達はエレノーラを見つけねばならなかった。


「……それほどまでに、エレノーラは公爵家を恐れていたのか」


 ……エレノーラの忠告を一切聞こうとしなかったことに対する後悔が、私の胸に過ぎる。


 このままでは、その公爵家にエレノーラ抜きで対処しなければなくなるのだ。

 そんな状況を絶対に許すことは出来ない。

 その判断の元、私は廊下にいたカーシャへと叫ぶ。


「カーシャ、急いで他の貴族達にもエレノーラを探すように頼み込め! 見つけたものには相応の謝礼を渡す!」


「は、はい!」


 私の怒声に、急いで走り出すカーシャの後ろ姿を見ながら、私は小さく呟く。


「……金は惜しいが、これでエレノーラもすぐに見つかるはずだ」


 幸いにも、エレノーラが嫁いできてから侯爵家の金巡りは良くなった。

 エレノーラが戻ってくれば、払ったかね分だけ働いてもらえばいい。




 そう考えていた私は気づいていなかった。

 エレノーラの逃亡、その知らせがどんな状況を引き起こすことになるのかを……。

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