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第十五話

本日二回目の更新です。

間違えて開かれた方は朝の更新分からよんでいた抱けると幸いです。

「くそ! せっかく嫁に貰ってやった恩を忘れ生意気を! 素直に動けば良いものを」


 エレノーラの部屋を後にしてから少し後、自室にいる私は、苛立ちを抑えきれずにいた。

 侯爵家当主ソーラスである私に向かって、公爵家に頭を下げろと告げたエレノーラの姿が思い浮かぶ。

 その後、地面に惨めに這いつくばる姿に多少は溜飲が下がったが、未だ公爵家をどうにかすべく動かないエレノーラに、私は徐々にさらなる苛立ちを覚え始めていた。


 控えめなノックが聞こえたのは、その瞬間のことだった。


「ソーラス様、どう致しまたか?」


「私達、お邪魔でしたでしょうか……」


「アイーダ! ソイラ!」


 続いて自室に響いた若い女性の声に、私の顔はたちまちに機嫌を直す。

 急いで部屋を開けると、扉の前には扇情的な格好をした二人の美女が立っていた。


 そう、彼女達こそが私の愛人であるアイーダとソイラ。


 愛しの女性達を私は、緩んだ顔で自室へと招待する。


「いや、君達は何も気にすることは無いさ。少し、エレノーラのわがままがね」


「まあ、あの女は強欲ですものね」


「ええ、本当に淑女としての自覚を持って欲しいものですわ」


 アイーダとソイラは、仮にも正妻であるエレノーラに、嘲りを浮かべる。

 二人とも男爵家の令嬢で、実家の身分的にも下にも関わらず。

 だが、そんな二人の態度を私は咎めない。

 むしろ、大きく頷いてみせる。


「ああ、全くその通りだ。あの女に、せめて君たちの半分程でも淑女としての自覚があればね……」


 私は、さも困ったように深々と嘆息を尽く。


「強欲令嬢と呼ばれた彼女を妻にして上げた私の善意も、理解出来ていないんだろう。本当につくづくどうしようもない人間だよ」


「まあ。ソーラス様をそんなに煩わせるなんて……」


「私達であれば、ソーラス様にそんのようなお手間をおかけはしませんのに……」


 アイーダとソイラは、表情を悲痛なものに変えてそう呟く。

 が、次の瞬間その顔に満面の笑みを浮かべた。


「ですがそれなら、伯爵家にまた注意をして貰うのが良いのでは」


「ええ、以前生意気だった頃と同じように」


 その言葉に昔を思い出した私は、笑みを浮かべ頷く。


「そうだな、それがいい」


 今のエレノーラは、まだ大人しいが最初の方はかなり反抗してきていた。

 それも、食事を抜こうが閉じ込めようが、だ。

 だが、伯爵家はそんなエレノーラの嫌がることを熟知している。

 彼らなら、いくらエレノーラが嫌がろうが、言うことを聞かせてくれるだろう。


 エレノーラとの婚約が決まった時、貴族社会での評判が悪い令嬢が押し付けられたことに私は不快感を抱いていた。

 しかし、エレノーラは想像以上に使える女だった。

 エレノーラを上手く使えば、どんな問題が起きても大丈夫だろうと、私は小さく忍び笑いを漏らす。


 ……その日々が崩れ始めたのは、次の瞬間侍女の一人が部屋に入ってきた時だった。


「当主様! お、奥様が部屋にいません!」


「なっ!」


 それが、破滅の始まりであることを、まだ私は知らない……。

ここから、物語のほとんどがソーラス視点になります。

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