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第十三話

 私の目に止まったもの。

 それは部屋で騒ぎがあった時に弾き飛ばされたらしい、床に散らばる食器だった。

 食器の中身は床にこぼれていて、もう飲めるものではないだろう。


 だが、私がそれに目を奪われた理由は、そんなことではなかった。


「……何よ、これ!」


 床に落ちたスープらしきものを凝視する私の口から漏れたのは、隠すことの出来ない怒りだった。

 一見、スープに見えるその中身。

 だが、平民でありながらお嬢様の侍女になるために様々な下積みをしてきた私は、それがスープなんかではないことをしっている。


 ──お嬢様に出されていたのは家畜に与えられる穀物を煮ただけのものだった。


「こんなものを、エレノーラ様に食べさせていたというの!」


 怒りで、目の前が真っ赤に染まるような錯覚を私は覚える。

 あの使用人達は、侯爵家のために必死に働いてきたお嬢様に対し、家畜の穀物しか与えてこなかったというのか?


「ふざけるな!」


 激しい怒りを使用人達に覚えると共に、私は今更ながらお嬢様が何故、あそこまで憔悴していたのか、その理由に思い至る。


 この穀物は、ある時代では人間が食べていたと言われおり有害ではないが栄養が豊富な訳でもない。

 そんなものしか与えられない状況で、問題が起こる度にお嬢様様は問題解決に奔走させれていたのだ。

 それも、実質侯爵家に一人で軟禁されている状況で。


「……お嬢、様!」


 安心しきった様子で眠るお嬢様の顔を見て、私は唇を噛み締める。

 先程まで私は、お嬢様は精神的な疲れでここまで憔悴しているのだと思っていた。

 が、実際は逆。


 ……限界を迎えていたのは、お嬢様の身体の方だったのだ。


 粗食の上の過労、それがどれだけ身体を蝕むのか、平民である私は知っている。

 こんな状態でありながら、問題を解決するために動くには、一体どれ程の精神力が必要か。

 お嬢様の今の状態は、少なくとも常人であれば動くことも出来ないだろう。


 私と話した時、お嬢様が情緒不安定だったのも当然の話だった。


 ……お嬢様は、こんな地獄のような状況に一人で閉じ込められていたのだから。

この度「虐げらた侯爵夫人は逃亡を決意しました」ですが、ジャンル別異世界恋愛の3位にランクインいたしました。

これも全て、読者様のお陰です。本当にありがとうございます!

そしてそのお礼や、中々前置きが長くなってしまっているので、明日は朝昼晩の3回更新にさせて頂きます。

少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

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