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新希望ヶ丘青春高等学校物語  作者: 大橋 むつお
33/53

33:運命の金ばさみ

新希望ヶ丘青春高等学校物語・33

 『運命の金ばさみ』        



 月曜は朝から雨だったので、学校周りの掃除は今日の火曜日に延期された。


 掃除の班は学年の縦割りになり、栞とさくやは、偶然同じ班になった。

 栞たちの班は、駅から少し離れた切り通しの道という運の悪さだった。何故かというと、そこは先日の地震で地盤が弱っており、地域の人たちも「危ない」と言って近づかない場所だったからだ。地域と連携のないと言っていい希望ヶ丘高校には、事前にそういう連絡がまるで入らず、担当の桑田先生は、あっさりと、そこも清掃区域に入れてしまった。


「どうして、みんなさっさと帰っちゃうかなあ」


 低い切り通しで、その気になれば、薮になった奥まで入っていけるのだが、みんな道ばたの紙くずや空き缶を拾っただけでさっさと学校に引き上げた。

 確かに、そこは片側が切り通し。反対側はちょっとした小川を隔てて傾斜地になった曲がり角で、あまり人目にもつかない。やっぱり、人に見られていないところでは、なけなしの義務感などは、どこかに行ってしまうのが人情というものである。

「奥の方に、ゴミいっぱいありそうですよ……」

「さくやは、無駄に目がいいんだもんなあ……」

 さすがの栞も、そこはパスしたかったが、どこに人の目があるか分からない。近頃では、こういう不用心なところには監視カメラが付けられていることも多い。まして、二人は、ついこないだMNBの五期生に合格し、例の『進行妨害事件』では、栞の顔は、かなりの人に知れ渡っている。

「仕方ないか……」

 栞とさくやは、イヤイヤながら薮に足を踏み入れた、

「う……」

「先輩、ここ見かけは草原やけど、中ジュルジュル~」

「もう、そこのゴミだけ拾って退散しよう!」

 二人は不法投棄されたゴミ袋を三つばかり拾って出てきた……。


「はい、ご苦労様。集めたゴミはここね」


 集積所係の真美ちゃん先生がハンドマイクで声を張り上げていた。

 技師のボス格である鈴木のオヤジが、ゴミ拾いの金ばさみを回収していた。

「こら、ちゃんと洗うて返さんか!」

 鈴木のオヤジの声で、栞は気がついた。

「しまった、金ばさみ!」

 ジュルジュルに足と気を取られて、忘れてきたのである。

「先輩、さくやが行ってきます」

「いいわよ、忘れたのわたしだもん。行ってくるわ」

「これもMNBの修行や思てなあ。次の授業遅れんなよ!」

 学年生指の磯野が、大きな声で嫌みを言う。

 栞は、振り向けば皮肉の一つも出そうなので、何も言わずに校門を出た。

 こんなことで遅刻して、ネチコく言われるのも願い下げだったので、現場まで駆け足で行った。

 靴は一足ごとにグチュグチュと水を含んだ音がした。買って、まだ半月ほどのローファーがダメになるなあと思いながら、時計ばかり気にして現場へと向かった。


 さすがに途中でローファーと靴下は脱いだ。グチュグチュはグニュグニュに変わった。そして薮の中に突き刺したままの金ばさみに気づいた。

「あった~!」


 そして、足を踏み出したところで、空と地面がひっくり返った……。



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