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新希望ヶ丘青春高等学校物語  作者: 大橋 むつお
14/53

14・マックスアングリー・1

新希望ヶ丘青春高等学校物語・14

『マックスアングリー・1』    



「……というわけで、指導忌避のため、手島栞を停学三日といたします」


 慣れた口調で説明をしたあと、作業着姿で小さく俯いている栞の父親に、梅田は申し渡した。

 栞は青白い顔をして梅田を見つめ。父親は、小さくため息をついて俯いた。

 同席した教師のほとんどが、立ち上がりかけた。

 乙女先生は一言言おうと息を吸い込んだ。


「気の早い先生たちだ。話はこれからですよ」


 それまでと違って凛とした声で父親が言った。

「ここからは録音させていただきます。どうぞお掛け下さい」

「手島さん……」


 父親の豹変ぶりに、梅田がかろうじて声を上げ、他の教師(学年主任・牧原 学年生指主担・山本 担任・湯浅)は立ちかけた椅子に座り直した。これからが出番だと思っていた乙女先生は座ったままだ。


「指導忌避と言われるが、栞、以下当人と呼称します。当人は津久茂屋の配達途中でありました。原動機付き二輪車の胴体側面、荷台の商品に通常の目視で視認に足る表示がなされておりました。当人のエプロン、ヘルメットにも屋号が付いておりました、いかがですか、湯浅先生?」

「突然のことで、そこまでは分かりませんでした」

「これが、当該の原動機付き二輪車、並びに、当人がその折着用しておりました、エプロンとヘルメットであります」

 父親は、二枚の写真を出した。教師一同は驚きを隠せなかった。

「当人は、そのおり『すみません、配達中なんで、また後で』と声をかけております。なお、配達の荷物は当日、本日でありますが、卒業式が行われる姫山小学校の紅白饅頭でありました。8時20分という時間からも、当人が急いでいたことは容易に推測できるものと思量いたします」

「いや、なんせとっさのことで」

「湯浅先生は、当校ご勤務何年になられますか」

「な、七年ですが……」

「津久茂屋も、姫山小学校もご存じですね」

「は、はい」

「そうでしょう、この前後のいきさつは、タバコ店の店主も承知されています。当人の返事も含めて。この状況で、指導忌避と捉えるのは早計ではありませんか」

「いや、たとえそうでも、二回目は指導忌避です」

「ほう、待ち伏せが指導にあたるとおっしゃるんですか」

「お父さん、何が言いたいんですか!?」

「事実確認です。ご着席ください梅田先生」

「こいつ、いや、手島さんは、わたしと梅田先生の制止を振り切って、逃げよとしたんですよ。明らかな指導忌避です」

「この写真をご覧下さい。これが当人が制止されブレーキをかけた、タイヤ痕です。あとスリップし転倒した場所まで、約9・5メートル続いております。なお当人の速度は30キロであったと思量されます……」

「なんで、速度まで分かるんですか!?」

「現場の道路は、傾斜角6度の未舗装の下り坂です。逆算すれば、簡単に出てきます」

「しかし、本人は抵抗したんで、許容される範囲で制圧したんです。立派な指導忌避です」

「この状況で自販機の陰から飛び出されれば、パニックになります。当人は務めて冷静に対処しようとして、こう言っています『進行妨害です。現状保存をして、警察を呼んでください』と」

「それが、指導忌避です。ゲンチャは、本校では禁止しとります」

「それは、後にしましょう。先生方がおやりになったのは道交法の進行妨害に該当します。事実事故が発生し、当人も進行妨害と認識、その旨を主張しております。それを無視して職務中の当人を連行されたのですから、事故の証拠隠滅、威力業務妨害になります」

 その時、応接室のドアが開いて、栞の旧担任の中谷が、顔を赤くして飛び込んできた。

「バイトを許可した覚えはありません! そもそもバイト許可願いなんか、ボクは受け取ってません!」

「中谷先生ですな。お呼びする手間が省けた」

「て、手島は、勝手に、そう思いこんで、勝手にバイトやっとるんです!」

「あきれた人だな……」

「なにを!」


「お父さん、もういい。これはわたしの戦い。あとは自分でやる!」


 立ち上がった栞は、顔も手足も、いっそう青白い。怒りがマックスになってきた。乙女先生は、そう感じた……。




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