で、電気神?
蒼莉がここに住み始めて3週間目。
「やけに雷が鳴ってるな…。お前が雨降るのを予想してなかったら、今頃洗濯物を慌てて取り込んでたな」
テレビを見ながら僕は、テーブルでスナック菓子をカリカリ食べている蒼莉に感謝の意を表した。しかし、本人はそんな感謝の意を知らず…。
「いや、ラジオで降水確率が90%以上だって言ってたし…。私の髪の毛が、いつも以上にくるくるだから…」
栗色に少し黒が混じりゆるくカールしたミディアムの長さの髪は、確かに平均的に見るとカール度合いが今日は高い。
「それに、神が来る…気がするから」
かっ、神?人が崇めてるやつ?
「はは〜!やっぱり、本家の貞子家の子供はそういうの敏感だね〜」
なんかしらんが、この一言で雷は少し遠くにいき、雨も少し弱まった。リビングの廊下を繋いでいるドアの前に、一人の者が現れた。
「やあ、久しぶりだね悠芽くん」
そのものはゆっくりと、こちらに近づいて来た。ドア付近に置いてあるテレビの画面がガガーっと荒れた。
「おっと、警戒しないでくれるとありがたいんですが。別に怪しい者ではないよ。うーん、その顔からすると我のことを忘れてしまったのかな…」
『怪しい者ではない』と自ら言っている時点で…、というか勝手に家に入って来た時点で、怪しい者ですよ。
「我は、電気ノ神。まあ、電気神とでも言ってくれ」
『電気神』と聞いた瞬間、蒼莉がキョロキョロし始めた。
「ああ、光神は我が追い払った」
その一言で、蒼莉のキョロキョロは終わり、再びスナック菓子を食べ始めた。
「さてと。次郎さんの孫よ、我を覚えていないのだな?」
「はい。すみません…覚えてません」
「そうか。ならば仕方があるまい。我は、そこの蒼莉と同じ次郎さんの友達なのだ」
だんだん近づいてきたため、テレビの画面がついに消えた。
「おい、邪神。貴様のせいでテレビが見れん。さっさと、この家から出て行ってくれ」
珍しく怒った口調に蒼莉がなった。お菓子がなくなり、その上テレビも見れないからだろう。
「いやいや。我は、邪神などではない!」
「私からしたら、光属性のあるものは邪魔なのさ」
「はぁ…。まあ良い。我は家に帰らん。家に飽きた。だから、しばらくこの家に住むな」
「え、困る。テレビもラジオも見れない聞けないのはイヤだよ。悠芽が学校に行っている間、ヒマでヒマで死んじゃう!お菓子、食べ過ぎると太るし…」
あ、妖怪も太るとか気にするんだ。ってか、ヒマになるなら帰れよ自分の家に。
「おお!そうだった。」
電気神はポケットらしき所から、ブレスレットのようなものを出した。
「これは、我が力を封じ込めるブレスレットでな。これをはめると、人間と同じような感じになって電波を発しているやつは通常どおり動くんだ」
「「始めから、つけてこいよ」」
蒼莉と僕の声が、ぴったしハモった。