共存生活
「は?嘘だよね。私を本気で怒らすと怖いんだからね!」
わなわなと震えている蒼莉は、そう叫びこちらを見るが僕は首を左右に振る。
「嘘じゃない。
ある事故で、僕以外みんな死んだんだ。
僕は、学校で授業を受けている最中だった。
事務の人に呼ばれて、話を聞かされた。僕は耳を疑い、その日から家に帰れなくなった。家族との思い出が詰まった場所だからね。友達や担任の先生などが自殺しようとする僕をずっと止めててくれた。止めてくれた人たちに恩を仇で返すつもりはないから、家族のことは思い出さないようにしてる」
うなだれた僕を見ていた蒼莉はハッ!という顔をした。
「次郎ちゃんは、もう帰ってこないのは寂しいけど、私はここに住むわ。よろしくね、悠芽!」
何を言っているんだ、こいつは。お前も大概人の話きかねぇな。
「だって、家に帰っても誰もいないから寂しく悲しいんでしょ?お互いに。だから、一緒に住めば一石二鳥!」
お互いにという事は、蒼莉にも親がいないんだろうか…。ホロリとする。
「あ、私には親が家にいないんじゃなくてたんに、私が家を出たったてだけね。アパート借りたんだけど、家に帰ると『おかえりー!』っていう声がないから寂しいの。ま、似た者同士じゃない?私たち」
おい、僕の感動を少し返してもらおうか。「似た者同士じゃない?」じゃねーよ。お前は家出少女で、僕は独り身だ。
「ちなみに、私がここに住むと色々な妖怪が来るかもしれないけど良いよね?」
そう言って満足気にスナック菓子を再び食べ始めた。
は?… 全く良くないんですけど。