次郎ちゃん
「ただいまー」
静かな家の中で僕はそう叫ぶ。毎日の日課だ。
奥のリビングから「おかえりー!」という蒼莉の声が聞こえた。一瞬、自分の耳がおかしくなったかと思った。が、リビングに行って見るとスナック菓子を食べながらアニメを見ている蒼莉を確認した。
「っ!お前、なんで人の家でゆっくりしてんの?帰れよ」
指をさして驚いている僕が、異常かのような目を彼女はした。
「えー、人の家ー?私、ここに住むって言わなかったっけ…?」
さも当たり前かのように言う。
「聞いてなーーいっ!」
「いやー。ほんと、悠芽って暴力的な男の子よね。さっさとでてケェ〜って、言いながらバシバシ叩いてきたし…。なに?ああ、この家に住む理由?あんたのおじいちゃんが、私の友達で気分転換に会いに行こうと思ってテレポートしたら、たまたまここに来てたまたま悠芽が孫だったって話」
なんの気分転換だよ。明け方に、テレポートしてここにくんなよ。とまあ、突っ込みたいところが沢山あるが我慢する。
「でてけ」
「やだ。次郎ちゃんが来るまでいるから」
…。非常に、言いにくい。言いにくいが、言わなければならない。
「あー、あのな…。お前の友達…つまり、僕のおじいちゃんはある事故で死んだんだ。おばあちゃんもお母さんもお父さんも…」