ついに悠芽に春が来た?
『笹田奏美好きな人がいる!?』
生徒会が毎月作っている新聞の見出しにそんな事が書かれていた。
遡る事およそ1ヶ月前…。
その日は全校出校日で、今から帰ろうと廊下を歩いていた時だった。
「だろりぃーん」
「おい、蒼莉。変な音を立てんな。気持ち悪がられるだろ?」
僕の隣を歩く蒼莉は、ギロリとこちらを見て一言。
「やっぱり、悠芽には友達はいないんだね。私たち以外…」
「ゔっ。いますよー。親友ならいますよー」
「お前もこの暑さで頭をやられたんだな」
後ろから電気神が、うちわを仰ぎながら言ってきたが無視する。
「あーずーいー……」
両手をだらーんとさせて汗をダラダラかいている蒼莉はそう言いながら僕に荷物を押し付けようとしてきた。
「なにこれ」
「ニモツデス」
「返却します」
ついうっかり貰ってしまった僕は、蒼莉に持つように押し付けるが無理っぽそうだ。
「なんで、全校出校日なんてあるんだろうー」
「ホントだよね!」
友人の秋葉祥子と一緒に前を歩いていた笹田奏美は、くるっとこちらを向き逆歩きをしだした。学年トップの美女と謳われている。
僕は内心、やだなーなんで笹田がこっちを向いて話し始めるんだろー。と思っていた。僕は、凡人中の凡人ですし。…あ、電気神が狙いかな?やっぱ、女子って顔とかで好きになるのが多いのかなー。
「笹田…さんだよね。ごめんね。まだちゃんと全員の名前を覚えきれてなくて…」
蒼莉がごめんねのポーズをする。あざとい奴だ。笹田の周り(遠く)には大量の(ざっと50人ぐらいだろうか)男子がいるが、警護のように5人ぐらいの女子がギランギラン目を光らせているので近寄っては来ない。
「ああ。全然良いよ。転校してきてすぐに夏休みに入っちゃったしねー。えーっと…。じゃあ改めて自己紹介するね。私の名前は、笹田奏美。好きな科目は国語で、苦手な科目は社会。好きな人は〜」
ちらっと笹田が僕の後ろを見た気がした。
やっぱり、笹田って、好きな人いるんだ。
「内緒っ!」
「ああああぁぁっーーー」
と廊下中に男子の悲鳴が響いた。
「嘘だろぉーー!!新人の神に、笹田ちゃんのハートを奪われちゃった!!??」
この一件のせいで、笹田と電気神はなぜかスクープされたりあらぬ噂をたてられていた。
「はぁー」
僕は、生徒会が作った新聞を折り畳みカバンに詰めてため息をついた。教室には数人の男子と女子しかいない。
この新聞を見た電気神は、怒りマックスレベルに達したので授業を最後まで受けずに帰って行った。
蒼莉は、フォルジュールに朝ごはんを奪われたので「体調不良」と言って、ズル休みをしてフォルジュールをぶっ潰すとか言っていた。
よって、今日は僕一人で帰るのだ。親友の章大は、彼女の秋葉祥子と一緒に帰るとか言ってたし…。今日は一人かー。
「あの…。林悠芽くん、ちょっと話があるのでついて来て下さい」
家に帰ろうと廊下に出たら、笹田(仮面を着けた)に行く手を止められた。
悠芽、もしかして奏美に告白される…?
笹田さん、なんで仮面つけてんだろうねー。