思い出ー悠芽
がーっ。がぁーっ。
「…。ん?なーんか、今日はテレビの画面が荒れるなー」
「そうね。ところで貴方?今日は、悠芽の誕生日プレゼントを買いに行くんだから、テレビなんか見てないで、行く準備して下さいね?」
「おじいちゃん!おばあちゃん!いーっぱい買ってきてね!あと、あと、」
「こら、悠芽!もう学校に行く時間だよ!?はい、ランドセル背負って!」
母、実蘭がせかす。
「まあまあ、そんなに怒らずに。まだ、時間には余裕があるじゃないか」
父は、新聞を読みながら母に言った。
「晴樹は、ゆっくりし過ぎなんだよ。あと、五分しかないんだよ。まだ、ご飯も食べ終わってないのに…」
「お母さんも、食べ終わってないじゃん」
「わ、私は時間があるから良いのっ!」
「「はははっ」」
ふしゃーと威嚇する母に、その場に居た悠芽以外の人が笑った。
「行ってきまーす!」
「はい、いってらっしゃい!気を付けてね〜。いっぱい買ってくるからねー!」
玄関でそんなやりとりをした後、悠芽は一目散に学校に行った。
「あー、悠芽ー」
後ろから、隣の家の女の子、深春が僕を見つけ走って来た。
「ね。なんで走ってるの?まだ、時間はよゆうにあるのに」
「ん?ああ、明日は僕のたんじょーびで…」
「あ、プレゼントでしょ?今日買いに行くんだっけ?」
「え。なんで知ってんの?」
「丸聞こえだったから」
「ま、まじか」
二人は、仲良く走って学校についた。
ちなみに、二人は同じ教室で幼馴染みだ。
「林悠芽さん。居ますか?」
事務の人が青い顔で、か細く言った。
「…はい。僕です」
彼女の近くに行き、廊下で話を聞いた悠芽はその場でふらふらっとなり倒れた。
小学校の保健室にて。
「…悠芽ー?大丈夫?」
なぜか、深春が彼の近くに居た。すこし、戸惑っている顔だ。
「…。う、うん…。だいじょうぶ…」
全然説得力のない声だ。
「私の席、廊下に近いし、私の耳は地獄耳だから話が聞こえたんだけど…」
「他の人には言ってないよな?」
「それはもちろん」
「まあ、お前なら聞かれても良いか…」
「悠芽、これからどうするの?私たち、小学生だし…。何もできないよ…?私の家に住む?パパに聞いてみるよ?」
「いや。さすがに親戚ではないお前に頼めないよ。親戚の家に行く」
「どこ?」
おそるおそる、彼女はベットで仰向けになっている彼に聞く。
「東京都…」
「じゃあ、私たち、もう二度と会えないの?」
「多分な」
ここは、岐阜県。
「嫌だ。悠芽と会えないは嫌っ!どう私は学校ですごせば良いの?悠芽のおかげで、あの子達からのいじめを受けなくなったのに…。またいじめられる…」
「じゃあ、お前も一緒に行くか?」
「え?良いの?」
「良いわけないだろ」
泣き出しそうになってた深春の顔が一瞬、輝いたがまた暗くなった。
「うそつき」
「はは」
家に帰ると、車はなく母の置き手紙があっただけだった。
『悠芽へ
もしかしたら、私たちが遅く帰るかもしれないので、おやつ食べててください。
あと、宿題やるんだよー?帰って来てから確認するから。
今日の夕飯は、ビーフシチューだよ(๑˃̵ᴗ˂̵)
母より』