さ、貞子?
「遺産の残り、900万円か。最初の頃は、バンバン使ってたからな。仕方ない…か。今年も、色々なバイトやったし、これで来年までは大丈夫…だよな。ふう。寝るか」
パタリと、銀行の通帳を閉じる。天井からオレンジ色の電気が降り注がれている、少年のような青年のような者は座っていた椅子を机に押し込む。カチリと電気を消す。
「おやすみなさい…」
彼は写真やお守りのようなものが置いてあるローテーブルをちらりと見て、そう呟いた。彼の声に反応する人は誰もいない。例え声が大きかったとしても。ただただ静まりかえった家にスッと消えるだけだった。
彼は、桃色が混じった白い肌にストレートな黒髪と、茶色と赤色が混じったような目をしている。しかしその目には、何も写っていないかのようにどんよりと暗かった。
「がったん」
その音でベットで寝ていた僕は、目を覚まし冷や汗をかく。
何か落ちた?それとも、泥棒…?こんな何もない町に??
懐中電灯を持って、壁に沿って音がしたリビングに行く。
ドアを開けて、部屋を懐中電灯で照らした。テレビの近くを見た時、僕の心臓は止まった。
テレビから、人が出てきてる…!!!!!
懐中電灯を落としそうになり、慌てて持ち直して寝室兼自室に一目散に行こうとした。が、テレビから出てきた人(?)が長い手を伸ばして僕の足をつかんだ。
「ちょっと、待って!ねえ、待って!お願いだから、助けて。頭打ったの。ここに入った時」
ああ、お母様。僕の命日は、今日らしいです。
「ねえ!聞いてる!?」
「聞こえてますよ…。僕を殺すんですよね。ええ、聞こえましたよ」
「いやだから、助けろって言ってんの。頭に、タンコブができたの」
ちらっと、後ろで倒れながら僕の足をつかんでいる人(…?)を見るとかなりの美人だった。
「へー。じゃあ…」
と僕はそこで言葉を切った。美人な人(?)は、ぱあああっと嬉しそうな顔になった。
「さらに、痛めつけてあげよう!」
殺されたくない恐怖心が僕の暴力リミッターをブチ壊した。