第五話 努の現状
レポートきっつい・・・。
アルバイトきっつい・・・。
(訳)時間無いです。
放課後からスタートして能力獲得まで
キーンコンーカーンコーン・・・
気づくと一日が終わっていた。
最後の挨拶が終わるとともに教室から出ていく生徒たち。
仲のいい友達同士で口々に話しながら帰宅する者、
新入生も加わり、新年度早々忙しく部活動に励む者など
それぞれいることだろう。
そんな中、我らが努くんはというと・・・
「あぁ~つっかれたぁ~。」
こんな事言いながら両腕を上にのびーる運動。
今日も一日お疲れ様!
なんともすがすがしい気分だZE!
いつもなら授業が終わった途端にこんな感じで気分も上がる所。
だが、そこに見えるのはどんよりとした暗い影。
うつむいた顔と生気の無くなった瞳。
努の絶望しきった姿がそこにはあった。
ちなみに朝からずっとこの調子である。
他の生徒たちも気にしてはいるようだったが
あまりの落ち込み様に声をかけるものはクラスメイトはおろか、
授業にきた先生方ですら声を掛けるものは居なかった。
途中、絢香も声を掛けてはいたが、
落ち込み切った努には絢香の声でさえ全く届いていなかった。
なぜこんなにも落ち込んでいるのだろうか?
理由は単純。
朝の絢の発言である。
「歴祭かぁ・・・。」
思わずそう呟く。
何度考えても自分が歴祭に合格するビジョンが見えてこない。
いや、正確には想像すらできていない。
どうしたら合格できるのか。
何をすればいいのか。
何もわからない。
何も思いつかない。
そうなってしまうほどに努の実力と歴祭の学力には
努力ではどうしようもないくらいに
大きな、とてつもなく大きな差があった。
あまりにも遠すぎる「学力」という名の高い壁。
自分がいくら努力しても届かないであろうという事実。
そしてその上の領域にある歴祭学院を目指すと言った絢。
自分から離れると言ったようにもとれるその言葉に
幼馴染が、好きな人が離れて行ってしまうという事実と
そこに共に行けない自分の実力の無さという無力さに
努の気分も表情もさらに落ち込んでいくばかりだった。