第一話 大体始めは紹介になるよね。
チャン♪ チャン♪
なんて冗談は机の引き出しの鍵付き金庫の一番奥にでも
永久封印しておいて。
いやほんとに笑えない。
などと思いつつ、目を覚ます主人公の努君。
涙で濡れた枕から体を起こし、先ほどの光景が
夢であったことに心から感謝。
いやー良かったね!夢じゃなかったら本当に
君の物語はここで終わってた所だったよ!
おお主人公よ、死んでしまうとは情けない。
もとい笑えない。
それはそうと、ふと時計に目が行く主人公。
入学式の説明用紙に書かれた時間の20分前を指している。
慌てた様子で着替えだす。
それもそのはず、家から高校まで片道20分かかるのだ。
着替え終わって部屋から飛び出し
「行ってくる!」
短く一言、1階の妹二人に言い残して
間に合うようにと祈りながら
努は通学路を走り出した。
………着替えシーンも見たかった?
男の着替えに需要はないからね、仕方ないね。
ー
走り続けて15分、何とか時間前に着くことができた。
「よぉ、だいぶギリギリだったな。何してたんだよ?」
荒くなった息を整えていると隣から声が飛んできた。
「別にやましいことはしてないよ。おはよう、凌平。」
「おぅ。おはよう、努。」
少しからかうような質問に軽く返事をして、
声の主である凌平に挨拶をし努は席に着いた。
彼は新谷 凌平。
中学1年からの付き合いでよく言えば親友、悪く言えば悪友と言った所だろうか。
まあ要するによくいる親友ポジションの男である。
必ずいるよね。こういった役柄の男子。
色々動かしやすいんだよねこーいうキャラ。
まあ別に他作品みたいにオネエだったりゲイだったり
特殊な性癖もってたりはしないのでご安心。
………他作者さんすみませんでした。
別に悪いとかそういったことじゃないんです!
ちょっと話のネタにしたかった、
それだけなんです!
許してください何でもしますから!
「てか、別にやましいとか聞いてないんだが」
「なんかあったのか?」
「まあ……ちょっとね。」
様子がおかしかったのか凌平にそんなことを聞かれた。
察しがいいのもこのポジションの特徴だね。
「何も無いならいいんだけどな。」
「あぁ、心配ありがとう。」
「おぅ、気にするなよ。友達だろ?」
そういって、肩に腕を回してくる凌平。
何度も言うが別にゲイでもオネエでもないよ?
ホントだよ?
「朝から騒がしいわね、何話してるの?」
後ろから聞こえたその声に心臓が跳ね上がる。
ゆっくりと振り向いた先にいたのは
様子がおかしかったと言われた原因は今朝の夢。
その中に出てきた幼馴染の彼女その人だった。
「い、いや別に何でもないよ?」
少しどもりながらも答えを返す。
「そう?まあいっか。」
「おっす。おはよ、絢香さん。」
「おはよう、絢。」
「おはよう、凌平君、努。」
その綺麗な黒髪を払って挨拶を済ませた絢香は
そのまま自分の席であろう場所に戻っていった。
「いやぁホントに美人さんだよな。」
その姿を目で追っていた俺は
その声で現実に引き戻された。
「あ、あぁ……そうだな。」
と、投げやりに答えてしまう。
幼馴染である絢香、本名 本城絢香は
凌平の言う通りの超絶美人だった。
透き通る様な白い肌、それを引き立てるような
長く美しいしなやかな黒髪は腰当たりまで伸び、
くっきりとした目鼻だち、近隣の高校の中でも
人気の高い今時珍しいセーラー調の制服を
まるでモデルのように着こなすその姿に
中学時代からもファンは多かった。
小、中学とファンクラブも設立されていた程だ。
……ちなみにそのファンクラブ。
先生方や一部の保護者の方々も
入っている人がいたらしい。
なにやってんだよいい大人が。
まぁ、しょうがないよね。
これ完全に作者の理想形だもの。
黒髪ロング最高デス。
本格的に始まりました。
つたない文ではありますが、楽しんでもらえていれば
私としても嬉しい限りです。