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バッドエンドコレクション

占い死

作者: 湖城マコト

『あんたにも死相が出ているね。胸に何かが突き刺さったことが原因で死ぬ。日付は五年後の五月三十日くらいかね……せいぜい気を付けておくことだ』


 俺は、五年前に友人が占い師の婆さんに言われていたことを思い出していた。

 当時の俺達は大学生。飲み会の帰りに繁華街の路上で占いをしている婆さんを見かけ、酔った勢いもあり、俺達は興味本位で未来を占ってもらった。

 その時友人に告げられた未来が、『五年後に何かが胸に突き刺さって死ぬ』という内容だったというわけだ。

 元々俺も友人も占いなど信じてないタイプの人間なので、恐怖心などまるで無く、そんな出来事があったことさえも忘れて今日までの五年間を生きて来たわけだが……結果的には、あの婆さんの占いは正しかった。


 今から一週間前、五月三十日に友人は死んだ。


 占い師の婆さんの言葉通りの日付に、友人は死んでしまったのだ。

 友人の死は自殺だ。自宅マンションの屋上からの飛び降りだった。

 だが、その死には、何かが胸に突き刺さるという要素が完全に抜け落ちていた。

 占いの日付が一致したことには正直驚いたが、しょせんは偶然だったのだと、俺はその時点では解釈していた。

 

 しかし昨日、友人の同僚だったという人物と話す機会があり、友人の自殺の原因を聞いたことで、あの占いはやはり当たっていたのだと俺は気づかされた。

 友人は、職場の上司から酷いパワハラを受けていたらしい。連日続く暴言の嵐に友人は心を病み、自ら命を断つという最悪の決断を下してしまったのだ。


 何かが胸に突き刺さる。

 その何かというのは、物理的な凶器では無く、暴言のことだったのだ。

 胸に突き刺さったのは、言葉、そしてそれが、彼を死へと追いやった。

 

 この事実をもっと早く知っていれば、対策を取ることが出来たかもしれないのに……


 俺は今、五年前に占い師の婆さんを見かけた繁華街を訪れている。

 もう一度、あの婆さんに会わなければならない。

 占ってもらったのは友人だけではない、最初に未来を視てもらったのは俺だ。


 あの時婆さんは言っていた。


『あんたには死相が出ているね。五年後の六月六日に――」


 酔っていたせいで日付しか覚えていないが、あの婆さんは俺に死相が出ていると言っていた。友人が婆さんの占いの通りに死んだ以上、俺にも死が訪れる可能性がある。だが、肝心の死に方や内容に関する記憶がすっぽりと抜け落ちている。本人に会って確かめなくてはならない。


 五年前の婆さんが今でもこの繁華街で占いを行っている保証など無いが、一縷の望みを託して俺は繁華街を駈け廻った。

 友人の死から一週間。今日は六月六日だ。

 時間が無い。




『速報です。繁華街の路上で通り魔事件が発生し、多数の死傷者が出ている模様です。現場は――』

 数十分後。ニュース速報が流れた。






最後のニュース速報の部分は蛇足かなとも思ったのですが、バッドエンド感を出すためにあえて入れました。


その一文を削って結末を、読者の皆様のご想像にお任せする形にするのも有りだったかもしれません。

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