30年の片想い
ここからは覇王様の子守唄2の続きとなっておりますのでよろしければそちらからご覧ください。最初が分からないだけでこのままは読まれてもそこまで支障はないかと思います。
城のテラスに立つ王とその王妃となる少女を見上げ、メイド長であるマリアは心からの笑顔で呟いた。
「良き日ですね・・・」
「ええ」
隣に立つ騎士団団長補佐であるライドは頷いた後、嬉しそうに笑うマリアを盗み見る。彼女を見る自分の心が昔からちらとも変わっていないことを理解し、覚悟を決めた。
ライドはマリアの前に膝をつき、その手をとって見上げる。二人は庭の端にいるためまだあまり目立っていないがすぐに誰かが気がつくだろう。それでもーー
「ずっと貴女を思っていました。出会ったときからこの30年間、ずっと」
伝えたかった。
マリアは何度か瞬きを繰り返した後、昔と比べ細くなった瞳を大きく見開く。ライドはマリアが口を開く前に言葉を続ける。
「何故今かという問いにはすべてお答えします。何故、30年も貴女を思い続けながら思いを伝えなかったか・・・。それは、貴方が傷つくことを知っていたからです。貴女の心にずっと・・・存在している方がいることを知っています。それでも私は・・・貴女を諦めることが出来なかった。それどころか・・・一途に一人を愛する貴女をもっと愛してしまった」
ライドはマリアの手を自身の額に当て、懇願する。
「貴女の心が手に入らないことは知っています。ですがせめて・・・過去の貴女を知り、過去の貴女を私の中に記憶することを・・・許していただけませんか?」
マリアは少しの間を空け、はいと頷いた。
語り始めたマリアの言葉を一言一句逃すまいとライドは聞き入った。