第8話 襲撃
さて今回は 通貨単位です
1エルン小銅貨 十円
10エルン 銅貨 百円
100エルン小銀貨 千円
1、000エルン 銀貨 一万円
10、000エルン小金貨 十万円
100、000エルン 金貨 百万円
1、000、000エルン白金貨 一千万円
ファンタジー系は似た様な種類が多いです。物価なんかは中世だけに食料的なものも含めて高めです。
「あれ僕の出番は」
残念ながら今回は簡単なのでありません。
1年間準備をしていた計画がいよいよ実行に移される事になった。
貴族軍はこれまで自ら攻撃を行わず防衛に努めていたのだが大規模な軍事行動を起こすのである。
大々的に目標は王都制圧であると発表し、行動を開始した。
これはリックが発案してロメロが主導する軍事行動である。
そしてこの軍事行動を含め、5年に渡って描いた行動こそが本当のリックの作戦であったのだ。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「まさかリック坊ちゃまと此処を走る事になるなど。
当時は流石に思いもしませんでした」
「あの時はメアリーに苦労を掛けたよね」
「苦労だなんて、あの状況で一言も泣かず過ごされたのですよ」
「そうだったかな」
「ええ、お屋敷に居た時から思っておりました。
この方は只者ではないと」
「そこまで評価してもらったら頑張らないとね」
「正直接近戦だけならともかくとして、
魔術まで使用されると私では敵いませんからね」
「お母様達を助ける為に身につけた技術だからね」
二人は服の上に黒い衣装を身にまとって王宮へと繋がる地下道を走っていた。
他の部隊も地上での撹乱作戦を遂行中である。軍施設への襲撃と宰相邸宅を襲撃しているのだ。
目指すは王族が幽閉されている王宮の離れである。
「ここを上れば王宮の内部なんだね」
「ええ、この通路に関しては他の誰も知りません。
なにせ姫様専用として作ったのですから」
「お母様の印象が時折悪くなるね」
「お転婆姫でしたから」
「とても優しい人だと思ってたんだが」
「結婚して変わられた部分もありました、
そしてリック様を身ごもられてからも」
「そうだったんだね」
隠し扉の前で装束を脱ぎ捨てた、メアリーは近衛騎士、リックは正装といってもいい格好である。
「それでは打ち合わせ通りに」
まず部屋に侵入したメアリーはリックを背負って歩き出した。
「まて、其の子はどうした」
「どこかの貴族の子息かと、
奥で発見したのですが疲れて眠っているようなので」
「そうか、ご苦労だな。
全く貴族の坊ちゃまだか知らないけど仕事を増やしてくれる」
「まったくですね。
ではこの子は届けますが場内が騒がしくなってますね」
「ああ、宰相の邸宅が襲われたらしい。
近衛も一部駆り出されているぞ」
「そんな事をして大丈夫なのですか、元国王の守備は」
「なに大丈夫さ、人質が居る限りは問題ないだろう」
「そうですね、では失礼します」
大胆な作戦である。今夜開かれる夜会に乗じ、リックが迷子になった設定で堂々と宮殿を進むのである。
見付かってもこちらから近づいていくのである。本来ならまず考えられない事であるだろう迷子も夜会で連れてきた貴族の息子が走り回ったら可能かもしれないと思わせるのだ。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「ちょっと、待ちなさい!」
「やーだよー」
庭を走って逃走する子供と追いかける騎士。
走っていく先にあるのは離れである。
直接離れに向かうのではなく、背中から飛び降りたリックが逃げ惑う演技をしながら離れに近づくのだ。
「何事だ」
「それが子供に逃げられて、どこかの貴族の子息だろうと思うのですが」
「なんだ、人騒がせな、お、いたぞ」
「やーい、捕まえてみろ」
「困ったな貴族の息子ともなれば…」
「いえ御仕置きは必要ですよ」
「そ、そうだな、またんかぁ!」
離れを守備していた兵の一人が参加した。残るは一人である。
「ぐずだなあ、そんなので兵隊なんか務まるのか」
「この、言わせておけば!
おいアレン!お前も手伝え」
「まったく子供一人に何してんだ」
「ハーッハッハハ、悔しかったら捕まえてみろ!」
体術を駆使してヒラリと兵士達の追撃をかわす。そろそろ頃合かとメアリーに目配せをしてから、茂みへと身を躍らせて自ら退路を絶つように建物の裏手へと向かう。
「フッフッフ、ソッチは行き止まりだ」
「知ってるよ」
「「ハ?」」
「だからこうするんだ」
方向転換してきたリックが突然電撃を纏った拳で襲い掛かる。
バチッと弾けた瞬間に二人の兵隊は崩れ落ちた。
「よし、メアリー鍵を取り出そう」
メアリーが表に立って衛兵の代わりを務めている間にリックは離れの内部へと侵入した。
「国王陛下はいらっしゃいますか」
「む、何者じゃ。見るからに兵士ではないな」
「陛下、いえお爺様ですね」
「なん、じゃと?」
「母は何処にいるでしょうか、私の名はリック・ブラウン。
ニーナ・ブラウンの息子です」
「なんと!、ニーナの息子…
ニーナとルークを助けに来たのか」
「はい、時間が掛かりましたが」
「向かいの部屋におるはずだ」
「鍵穴がない…どういう事だ」
幾ら探しても鋼鉄製の扉に鍵穴が無かった。呼びかけて返事を待ってみる。
「その扉は溶接されているわ、外からの魔術でね。そして此処は魔術結界が張られているから抜け出せないのよ」
「お母様達からみて扉の右手に移動してもらっても宜しいですか」
「え、お母様ってあなたリック!」
「詳しくは後で説明しますので」
今は時間が惜しい、一人でも戦い抜ける自信はなくも無いが子供の体力には限界もあるのだ。
「【水刃】」
「【液晶破棄】に合成魔術…」
石の壁を綺麗に切断したリックの魔術を見てニーナが呟く。ああ、この子は間違いない我が子だと確信した。自分の顔にそっくりでいて目元が父親に似ている上にこの年齢にしてこの魔術である。
「やっぱりリックね、こんな事が出来るのは間違いない」
「僕よりも君に似てるからかな。
この年齢でこれ程の魔術を放つとは」
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
煌びやかな衣装に音楽が流れている。空中には魔術師が用意した光の魔術のシャンデリアが輝いている。
ワルツを踊る貴族達の間を一人の少年が歩んでいく。
「さあ、最後のダンスタイムだ」
突然大声を上げたのは入ってきた元国王ジョージ三世とブラウン夫妻、其の隣には元第一王妃マリーと第一王子フランクまで並んでいた。そしてニーナの手には破壊級魔術がすでに浮かんでいた。
「き、貴様等どうやって離れから」
「宰相グリムバルト諦めよ。
既に我等がこうして揃っている事で貴様に勝ち目は無い」
「衛兵!奴等を捕らえよ、現在の国王はグラム陛下である」
「叔父上、諦めたほうが良いでしょう」
「何を言うのだ!
このままではワシの命すら危ういではないかっ」
「父上、諌めきれなかった我が身をもって叔父上には恩赦を…」
「ぬるい、そんな事で助かるものかあああああ」
狂乱したような表情で喚きだしたグリムバルトはグラムに掴みかかり人質にしようとした。
「火の理!火炎の揺らめき、原初の焔よ、我がぅぐはあああああ」
「見えすいた最後だ」
グリムバルトの背後から突如として飛び上がって後頭部を打ち払ったのはリックであった。
一見玩具に見えるような刀を鞘ごと叩き付けたのである。
祖父や両親に後から登場させて、自分は疑われない事を良いことにそのまま会場を駆け巡ったのだ。
言い合いを始めたところで目的の人物にスタスタと近づいたリックを子供だからと見逃したわけではなかった。気がついたらそこにいた、と衛兵は思った。一瞬、宰相達の遣り取りに気を取られた直後だったのだ。
そして宰相の暴挙、まさか国王を人質として上級魔術を唱えだすとは思いもしなかった。
そんな折にいきなり飛び上がった少年が鞘ごと宰相を殴り倒したのである。
まさかこんな……意識を失うグリムバルトは自らを倒した相手が誰なのか理解する事も出来なかった。




