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第6話 過ぎ行く歳月

題名変更しました。


「やっと喋れる、もう一回種族紹介だね」

「今回は何族ですか」

「結構町でも見掛る闇輝人(デュアルブ)だよ、この人達は肌が褐色で筋肉質、黒髪に黒い瞳、長身で力が強くて戦士でも食べれるぐらいなんだけど、職人さんが多いんだ、平和主義ってわけじゃないけど鍛治屋とか鉱山開発が大好きな人達だよ、僕も仲良くしてる」

「あの人達は優秀ですからね」


反乱による王位の簒奪と内戦、さらには対外戦争の爪あとは国内に大きな被害を及ぼした事を物語っていた。


一旦は対ノルテアの為に結集した貴族軍だが簒奪の王位を認める事はなく現在も国王と貴族の対立は続いている。まがいなりにも本来継承権をもつ第二王子の即位なので完全に戦争をするまでには至っていないだけなのだ。しかも人質のように第一王子や国王が捕らえられているのである。


2年の歳月が過ぎた今でさえ終息の形が見えないのだった。


「現在の反対勢力はこれ以上崩れないと思います。

リック様のご実家が皆を纏めておられますので御安心を」


元王国軍第三師団を始めとして戦力の半分を中心とした貴族連合軍は己の領地をもって兵力を保ち簒奪者達に対抗していたのだ。


「だがメアリーこのままでは済まないよな」

「はい、クルネヴィア王国の纏まりが無い状態に他国が付け込むのは明らかな事です」

「どうして反乱を起す必要があったのか本当に謎だな」

「恐らく第一王子に間違いなく決まってしまうだろう後継問題を、盤面をひっくり返してでも阻止したかったのでしょう。宰相の妹が第二王妃ですからね」

「だが国をまともな状態で手に入れれないとなると、意味が無いだろう」

「それはリック様だからこそ思われる事です。

一般の者にそこまでの思慮は望めません」


こんな話をしている二人を見れば誰もが驚くだろう。

一人は美しい騎士姿、跪いて対している相手が少年ともいえない幼子である。


「王族のお爺様お婆様達が囚われてるからか」

「恐らくは旦那様も奥方様も囚われていると見てよいかと」

「朗報ではあるけど、困ったものだ」

「さらには魔王生まれたという話も聞きました」

「それなのに人間は争ってばかりか…

引き続き苦労をかけるけどブラウン公へと連絡を頼むよ」

「お任せ下さい」


祖父であるロメロ・フォン・ブラウンをブラウン公と堅苦しく表現したのは未だ遭っていないからなのか、ちょっとした遠慮の表れだったのかも知れない。



◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



2歳児のリックの一日は忙しかった。とても2歳児の過ごす生活ではない。日々起きてる時間の殆どを魔術の訓練と剣術の訓練に当てていた。空いた時間には現在の情勢を細かく分析しロメロへと指示を出す為に裂いていたのだ。


リックの魂が覚えている事から考え出せる事に限ってではあるが、一年前からメアリーを通じてロメロへと連絡をしているのである。国が疲弊しているといっても実際は現国王と宰相の支配地だけなのである。


反宰相派に関してはリックの献策によって以前よりも豊かな程なのだ。

耕地を4分割して始めるノーフォーク農法に家畜から堆肥を作り出し。さらに水路や灌漑施設の為の水車や風車を生み出したのである。


さらに戦闘様式についてもリックは助言を行った。大量のオースとクロスボウを組み合わせた騎馬兵と鉄壁の守備を目的として重騎兵部隊の設立である。更に工兵を正式に採用して陣地構築の速度を上げさせたのだ。この兵たちに関しては普段は訓練と共に耕作地を作らせているのである。


時折リック自身が自分の知識について疑問に思う事がある。然程ではないが知っている知識の中身に差を感じるのだ。輪作もこの世界に適しているから採用したがもっと大規模な方法も知っているのである。戦闘に関しても武器の種類も違うので限定した中でならこの方法だろうと思われる物を採用しているに過ぎないのだ。


これは自分自身の武器にも現れている。両刃の剣を主流とするこの国において片刃の刀を考えての訓練と槍、弓の訓練をしなくてはならないと思う自分のせめぎ合いがあった。


まだ2歳であるから本格的に剣術を行う程ではないのだが、ここでも違和感があるのだ。どうして魔術については知らないのかと…


そこで思い浮かぶのはこの世界ではない別の世界の住人なのではないかという事である。


思い浮かぶのは九戸という土地や東京という地名である。何か己の過去に関係があるとは思いつつも深く考えても無くした記憶が蘇る訳がないと思い直した。


とにかく今は自分の親族全てを助け出す事に決めているのだ。

少なくとも1年かけて判らなかった魔術については書物を読み漁り、さらにメアリーからも指導を受けて上達はしている。より高度な魔術を習得すべくリックは今日も研鑽を積むのだった。



◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆


宰相達もまさか自分たちを苦しめている存在がリックのような幼子だとは思ってもいない。しゃしゃり出てきたブラウン公爵の差し金だと皆が思っていたのだ。


そして忌々しい事にその親類にルークやニーナがいるのである。

だから攻め込まれても居ない。そして国王と第一王子など即座に処分したいのに出来ないのはこの二人の存在があるからだ。


反乱を起した当日。もう一息で国王暗殺もなるかという場面に颯爽と現れた二人は第一師団の警備を全て突破してくるという恐るべきものだった。


人質にとった国王と第一王妃、第一王子を盾にしてなんとかその暴虐の舞踏を止める事が出来たのである。


幽閉しているこの二人は国王などに危害が及べば確実に暴れだす存在なのである。


二人の息子を殺害した事を仄めかして心を折ろうと試みた事もあったが失敗に終った。メアリー・バンクスの遺体もないのに信じる訳が無いだろうと一蹴されたのである。

確かにメアリー・バンクスは近衛騎士団でも名のしれた存在だった。だが戦争の為に行方は完全に不明であり死亡したのだと信じたい気持ちが上回っていたのである。


人は信じたいと思っているところに不確かな情報ながらも、望む結果を示されると信じてしまうものである。宰相としてはこれ以上問題になる存在は増えて欲しくないのだった。しかも生後2ヶ月に満たない乳幼児など死亡してもおかしく無い状況だったのだ。それに仮に生きていても2歳の幼児である。何ができる者かという油断もあったというには可哀想である。普通なら、そうその乳幼児が普通(・・・)の存在だったら放置しても良かっただろう。だがリックは持てる知識の全てをもって宰相派に抵抗したのだった。


そして宰相の悩みはこれだけではなかった。

祭り上げた第二王子の乗り気の無さである。

できれば引退したいなどというのだから権力を我が物としたい自分にとっては堪ったものではない。

甥であるこの王が居なくては正当性の主張さえも出来ないのだ。


これも強引に宰相が反乱を起した要因ではあったのだが、一旦王位につけてしまえば心変わりもするだろうと期待したのであったが見事に裏切ってくれた。


「宰相よ、和解の方策はまだ立たぬか。

 余が退位して兄上に譲れば済む事なのだぞ」

「なりませぬ、そんな事をすれば我が一族。

貴方の母上である我が妹も皆抹殺されましょう」


自分だったらそうするだろうという脅迫観念から生まれた決断である。

実際宰相に関しては確実に死刑である。


だが第二王子の人となりを知る国王達の判断はそうならないのではないか、第二王子は聡明ではないものの暗愚ではなかった。それ故に国内がこの状態にある事が如何に危険な事かを考えると自分の存在を疎ましくさえ思うのだった。だが親族でもある叔父を殺す判断もつけかねるのだ。優しい心根故に国を滅ぼす典型的な君主ともいえた。


結局、現国王軍と貴族軍での決着もつかず、悪戯に歳月は過ぎ去っていったのだった。

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