第30話 新入生
試験会場の破壊という出来事もあったが、マリエールの鶴の一声でリックの入学は決定した。
そもそもBランクの魔術を放てる時点でAクラス所か本来であれば特別講師でもつけたいとマリエールは語っていた。爆破騒動の後に校長室へと連れられたリックはそこで自分の事をしっている風な口ぶりだったマリエールに尋ねる事にした。
「マリエール校長は僕を知っているのですか」
「ああ、弟子の息子だからね」
「もしかしてお母様の?」
「ハッハッハ、笑える、あのお転婆娘がお母様か、
私も年を取った気分だな。
私もリックと同じで王族の血を引いていてね、
これでもかなりいい年齢なのだよ」
目の前にいる女性はどうみても母親と同年代程であるように見える。
たしかに母などは未だに18歳で通せる程の美しさを保っていたのだが、リックには王族の血まで調べてなかったので理解が及ばない。
「王族ってのは元々魔力が高い人間が多いんだ。
そして血が濃いと髪がその証拠として銀髪になる。
さらに先祖返りを起こすと君や私のような瞳になるのだよ」
確かにリックの髪は母親よりも銀髪で目がシルバーブルーと入り混じった瞳である。アリーに似ているのは混じった瞳もであり、ウィニアには神族と言われていたのだったと思い出した。
「それでこの先祖返りを起こした者ってのは特別でね。
寿命が無いとさえ言われているんだよ。
まあ戦争だなんだかんだと死亡する事はあるんだけどね」
たしかに王族は長生きである、故に人を治める力を神より授かっているとさえ言われているのだ。
「私はその気になればもっと若返る事も可能だぞ、まあ面倒なんでやらんがな」
「それって肉体の年齢を何かの方法で変えているのですか」
「フフフ、それがこのナイスバディを生み出しているんだ」
「魔法ですか」
「半分正解、魔法と魔素を使った私オリジナルの魔術だよ。
実際老化がとまるのは魔法だけで十分なんだ。
元々魔力量が多いと肉体の老化速度が遅くなるんだよ。
光輝人や闇輝人、操魔人がいい例だよ」
そう言われると納得である。そして魔力量の比較的少ない獣人族は普通の人より短いぐらいである。
まあそういう訳で見た目と年齢が合わない理由を説明してくれたのだ。魔法も家庭教師のように出向いて教えたのだそうだ。ニーナも才能があったそうだが校長に就任する為に最後までは教えられなかったというが、天才の子は天才なんだねえと笑いながらリックの魔術を褒めてくれたのだった。
思わぬところで母の師に会ったのだが、母親からは一応連絡は入っていたらしく中々褒めちぎって会ったらしい。
とにかくリックは晴れて魔法学院の入学も認められたのだった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
リックが入学の手続きを終えてから街へと出かけウィニアたちの誘導によって町外れの場所まで赴いた。一軒の屋敷の前でエリーゼたちが話し合っている所であった。どうやら物件を見つけたらしいとリックが近づくと接近に気が付いたエリーゼ達は笑顔で出迎えてくれた。
「お兄様、ご入学おめでとうございます」
「おめでとうございますです」
「リック様、おめでとう御座います」
「さすがで御座いますね、5歳で入学されるとは…」
「最年少記録どころではないのではないですか」
「それがそうでもないよ、実際5歳の入学は異例だけど、
現校長が同じ年で入学してるらしいんだよ。
だから歴代で2人目の快挙だぞとは言われたけどね」
「世の中は広いですな」
「だけどそんな人物のいる所だからこそ学ぶ意味もあるのさ。
それにお母様の師でもあるらしいよ」
それを聞いたレビンとマークは驚いていた。元宮廷魔導師長のニーナ姫といえば天才といわれた人物なのである。そして近衛も敵わない剣と魔法の使い手で唯一勝利したのがリックの父だけという伝説のお姫様だったのだ、その師であるともなればと考えたのである。旅の中でリックの凄さを理解はしているがやはり伝説は伝説であるのだろう。
「それで、この屋敷にしたのかな」
「はい、ここなら精霊が居ても目立ちませんし、
多少の音楽が奏でられても問題ないですから。
お兄様の要望通りだと思います」
リックの条件はエリーゼが述べた通りであり、多少の不便は構わないから郊外で屋敷を見つけてもらっていたのである。
「持ち主は帝国の貴族の方らしいのですが、
家名を告げると即座に了承を頂けました」
「近所の農家で野菜や穀物も分けてもらえるらしいです」
「馬の餌の調達できます」
「ただ、多少大きすぎるのではないかとは思ったのですが」
郊外の物件だからか、屋敷を探していたとは言えどこの倍の人数で暮らしてもおかしく無い程の豪邸であった。金額は元々住んでいないのだからといってかなり安くしてくれるらしい。元々の留学費に加えてこの旅だけでも相当稼いでしまっているので金額にはなんの問題も無かったのだが、維持が大変かも知れない。
「大丈夫ですよリック様、私たちもお手伝いしますので」
精霊達を代表してウィニアがそう告げてくれた事でリックはここに住居を決める事となったのである。
一部精霊には期待は出来ないだろうけど、一緒に住めば楽しくなるので構わないのである。
後にこの屋敷の近くを通ると綺麗な音楽が聴けて、妖精が訪れているなんていう噂が広まる事になるのであるが、まだ先の話である。
リックが契約に赴いた先で待っていたのはマリエールだった。家名を告げて了承したというからには知り合いだろうと思っていたが、まさかマリエール本人の持ち物だったのは意外であった。
ちょくちょく遊びに行くからねといわれたがマリエールならば大丈夫だろうとリックも軽いく受け流したのである。
その後は足りない家財道具や日用品、食料などを買い込んでリック達の帝国での留学生活がスタートしたのであった。
特に初日という事もあって、沢山の料理を作り音楽と共に楽しんで全員が陽気に踊ったりして過ごしたのである。
それからの入学式までの一月の間にリックは冒険者としても活躍をしながら帝国の生活を楽しんだ。
帝国は人種が豊富で光輝人を除けば全ての種族が住民として生活しているのである。住人ではないが光輝人の森も帝国の領地には存在していて、そこから交易のために来る者もいるので帝都には大陸にいる人種全てが存在するといってよかった。
リックはここでも闇輝人の人や獣人種と仲良くなって、直に人気者になってしまった。ついでに商人などの所にも顔をだして自国の商人組合の立ち上げなども手伝ったりと充実した日々を送っていたのであった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
入学式当日、5歳にしてはそれなりの体格とはいえ、明らかに年下が要る事を周りが不審に思う中リックは堂々と校門を潜って教室へと向かった。Sクラス特別編成のクラスであり、立場やそれなりの能力も兼ね備えた者のみが集められる。まだ教室には誰も居らずリックが一番乗りであった。
「おい貴様、邪魔だ!」
後ろから掛かった声は聞き覚えのある尊大な声だった。そして続く声にも聞き覚えがあったのである。
「お久しぶりで御座いますリック様」
尊大な声はリックが殴り飛ばして白目を剥いていたカルロス、そして丁寧な挨拶をしてくれたのはギルベルトであった。
「ん、何処かで見た覚えが…き、貴様なぜ庶民が此処にいる」
「久しぶりですね、カルロス、それにギルベルトさん」
「何故僕が呼び捨てで、爺やにはさんを付けてるんだよ」
「君も此処の学生だろ、だったら僕も一緒の立場だからさ」
「なんだとぉ」
「あら、やっぱりこのクラスだったのですわね」
リックとカルロスの会話にすっと入ってきたのは入り口に立っていた少女である。
気合と才能を必死になって入学を果たしたリリアーヌがそこには誇らしげに佇んでいた。以前のような斬り掛かってくるような攻撃的なものから、一転して優雅な佇まいであった。
「やあ、リリアーヌも入学する事になったのかい」
「それは、そのリック様がいらっしゃるからですわ」
「なんだか前より可愛らしくなったね」
この少年は性質がわるいというか、そしてタイミングも悪いとしか言いようが無かった。もともとカルロスがリリアーヌに婚約を迫った事など知らないから致し方ないのではあるが…
「リリアーヌだとぉ!
もしや君があの?」
「それでリック様、将来の話などを…」
「リリアーヌ、お父さんに言われたの?」
「いえ、父は関係ありませんわ。
そ、それにリリアーヌではなくリリーと呼んで下さい!
私は私の意思でリック様と婚約を前提にで構いませんから、
その、お、おおおお付き合いをしたいのですわ」
相当の緊張していたのだろう、まず結婚を前提に婚約をするなら判るし、付き合うのならばそれもいいだろう、しかし婚約を前提に何をどう付き合うのだろうかと思わずリックは考えそうになったがこう切り出されては適当に返せないのだった。父から聞かされた決闘における母との出会い話のようだと思いながらもゆっくりと返事をしたのだった。
「リリアーヌ、いやリリー気持ちは嬉しいけど、
僕はまだ5歳だ、君のお父さんにも答えた事だけど、
この学校を卒業した時にそういった話をしよう。
婚約というには僕らはまだ幼いよ」
「ではお付き合いするのは構わないのですね」
「遊びにいったり来たりするのに立場なんて僕は気にしないよ」
「では、では、リック様のお屋敷に遊びに行っていいですか」
「いつでも歓迎するよ、賑やかなのは大好きなんだ」
「おい、ちょっと待て、如何言う事だ庶民」
「リック様だれですのこの騒いでる方は」
「うーん、もう帝都だから問題ないんだけど、
カルロス、君はノルテアの第三王子だよね?」
「ふん知っていたのか、庶民にしては博識じゃないか」
「何を言ってるのですか、リック様は将来の婚約者候補、
そしてクルネヴィア王家の血を引く方ですよ」
「なんだと?
おい爺や、本当かぁ!」
「ええ、本当で御座います」
「何故黙っていた」
「元々此方が貴族と身分を偽っていたので御座います。
リック様達からの配慮に合わせておりました」
「うぬぬぬぬ」
「ほら、まあ僕は貴族だけどね、
王族の血は引いてても意味は余り考えてないんだ」
「でも、庶民と罵られる必要はないのでは」
「庶民でも僕は構わないんだけどね」
「リック様には私の旦那様になっていただかなくてはいい、いけませんのよ」
「うん、それは先の話だからね」
カルロスはうぬぬぬと先程から呻いているし、リリアーヌは一杯一杯で暴走寸前だった。
「よーしお前たち、席につけ!」
知らない間に20名の生徒は全員集まっていたのである。そして担任が教壇に…どうみてもマリエールがそこに立っていた。
「フフフ特別にこのクラスは私が面倒を見ることになった、校長のマリエールだ、まあ副担任としてもう一人つくから安心しろ、だがビシビシ鍛えてやるから楽しみにしておけ」
なぜか波乱に満ちた学園生活しか送れそうにない、そんな予感を抱えながらも、リックの魔法学院での生活はこうして開始される事になったのであった。
此処までで一章完結、応募分としての書き溜めも終了です。
更新は完結とせず書き足す方針ですのでマイペースで進めようと思います。




