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第24話 光輝人と精霊

「はぁ光輝人(アルーヴ)の方々にも困りました」

「心配ないよ、もう怒ってないんじゃないかな、お兄様は優しいし」

「そうだといいのですが」

「ウィニアさんも苦労性だね」

「フフフ、他の精霊の面倒をみていたら何時の間にか…」

「じゃあ何時もどおりの事をやっておきましょう、お兄様が居ないけど偶にはいいと思います」

「オホホホ、そう言う時こそ真のヒロインたる私の出番!ですわっ」

「キャラがこわれてませんかリリアーヌさん」

「これが淑女教育の賜物ですわ」

「はぁ、では紹介をお願いします…」

「ばん!こちら、ですわっ」

魔狼(ウィウル)

 魔素を取り込んだベウル

 群れを形成し複数の大狼(ベウル)を引き連れる為注意が必要。

 推奨ランクは銀1以上

 ギルド買取価格

 皮2500 牙4900 討伐5000

「中々倒すのが難しい魔獣ですわ」

「お兄様なら楽勝です」

「流石私の未来の旦那様ですわ」

「それはどうか判りませんがお兄様が素晴らしいのは事実です、そこには同意いたします」

「オーホッホッホ!それ程でもありますわね」

「淑女教育恐るべし」

 光輝人(アルーヴ)の長老が一同に集まっている。

 アルヴヘイム国の指導者達でもある、彼等が話し合っているのは今回の事態についての報告を受けた為であり、また己達の失策を知ったからでもあった。


「それで精霊様方から連絡は…」

「無い…」

「ではお呼びするしかないのでは」

「何といってお呼びするのだ」

「それは…」


 まさか人族ヒューマンに契約者が現れているなどとは想定外である。

 流石に長老ともなれば一方的に驕り高ぶった考えを表明する人物は居ない。だがしかし光輝人(アルーヴ)が優れた一族トライブであるとも誇りに思っているのである。既に思考停止状態に陥っていると言ってもいいだろう。表に出さないだけであって己の抱えている感情を理解していないのであった。


 長老達が考えていたのは操魔人ヴェネフィクス、もしくは光輝人(アルーヴ)からの離脱者、闇輝人(デュアルブ)の何れかに契約者が現れたか、あるいは才能のある特殊なハーフ光輝人(アルーヴ)ぐらいしか想定していなかったのである。


 仮に今精霊に呼びかけたとして何を如何したら良いのかも判らないのだった。


「だが本当に報告の通りのような叱責を受けたのか」

「あの者共の怯えよう…嘘ではないだろう」

「精霊様方が叱責するともなれば大変な事態だぞ」

「それよりもだ、契約者を立てていた事もだが、

 その契約者からの発言も心配だ…

 取りようによっては我等は今後精霊様の加護を無くすぞ」

「ハーフを友と呼んだことか…」

「いや、しかしだなまさかハーフ全てではあるまい。

 その場にいたハーフだけを示した言葉やもしれぬ」

「だが、もしもハーフ光輝人(アルーヴ)全てを示した場合…」

「その場合は咎めもせなんだ我等の責であろうよ」

「だが血が穢れるというのは事実」

「優れた我等の一族トライブの血が流れ出る事だぞ」

「崇めるのは勝ってな行為だとも言われたそうだぞ」

「ようは見放すという事ではないのか」

「それより、監視など付けていて良いのか」

「見失っては何も出来ぬではないかっ」

「謝罪の会見を申し込むのはどうだろうか」

「何を謝罪するのだ」

「むう」


 3賢の長老と呼ばれた者といえど所詮はただ長生きしていただけの人物でもある。想定外の事態が起これば解決策一つ出せないでいたのだ。折角村からの緊急手段を使った連絡も結果が出ないのであれば意味が無かったと言える。


 この事態を収拾する事が出来たのは、結局の所3日間議論を重ねた3賢が途方にくれていた後の事であった。

 そして思わぬ形での解決でもあったのである。



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



 実は精霊達はこの事態を把握していた。


 そもそも自然界に存在する物に宿った意思であり何処にでも存在しようと思えば存在できるのである。


 精霊が契約していない状態でも話す事ができたのが光輝人(アルーヴ)闇輝人(デュアルブ)のみであったのは、その一族トライブの特性とも言える自然に従事する姿勢が生み出した自然と対話する能力、そして魔力量が人などに比べて多かっただけなのである。


 そして信仰の要因となったのは精霊が光輝人(アルーヴ)に力を貸していたからであるが、それは遠い過去に光輝人(アルーヴ)と約束した事が『森を守る為に力を貸して欲しい』と頼まれていた事に寄るものなのだ、そして森や自然は精霊自身でもあると言えるためにその約束は履行され続けたのであった。


 しかしハーフ光輝人(アルーヴ)を疎外していたりと問題もあったのである。如何にしてその問題を解決して行くべきかと悩んでいた時に精霊達はリックと巡り合ったのである。


 リックには告げてはいないし、恐らくその様に扱われるのも拒否されるであろう事も理解している精霊達は王とは呼んでいない。


 だが精霊を実体化させるほどの魔力を音楽という心が躍ったり嬉しくなったりする曲と共に与えてくれる存在なのである。そしてハーフ光輝人(アルーヴ)であるフィーナを助けた事から始まって、彼の行動は分け隔ての無い物であった。


 先日リックが怒りを顕にした時など精霊達からすれば驚いた程だったのである。

 そして怒りの原因が友を侮辱した事に対してであり、己よりも優先してそこに対する怒りを向けた事で更にリックへの信頼は高まっていたのだ。


 光輝人(アルーヴ)の前に姿を現していないのは報復措置などではなく、それが彼等の変わる切っ掛けになればとの願いからの行為だったのだ、長きに渡る付き合いで親愛の情もあったればこその気持ちといえる。


 しかしながら3日間協議している3賢からは碌な意見が出てこなかったのだった。余りに慌てすぎて全てを精霊が知る事が可能な事さえも忘れて話し合っている。


 困った精霊はウィニアを代表として夜の野営中に薪の前で曲を奏でるリックへと相談を持ちかけた。


「リック様、宜しいでしょうか」

「どうにも精霊から様を付けて呼ばれるのは座りが悪い」

「では主様でも宜しいですか」

「それはもっと困るな」

「ではリック様で…」

「うーん、仕方がないのかい」

「はい、諦めてください契約者で名付け親でもあるのですよ」

「う、そういわれるとこの年で子供がいるかのような扱いだ。

 まあいいか、それでどうしたの」

「実は、光輝人(アルーヴ)についてなのですが」

光輝人(アルーヴ)に何か問題でもあったの」

「いえ、実は先日の遭遇の後少し問題が…

 アルヴヘイムで会議が開かれているのですが、

 どうやら契約者問題について困っている様子です」


 リックにとっては何が困るのかが不明であった。

 だが先日の光輝人(アルーヴ)達の態度を鑑みるになにかしらの問題はあるのかも知れないとも察していたのである。精霊達も特に何も言わなかったからその後は話題にしなかったのだ。


「今まで精霊と正式に精霊と契約した者は光輝人(アルーヴ)を初めとして誰もいなかったのです」

「すると僕が史上初の契約者って事だよね」

「そうなります、そして同時に名前を授けた主でもあります」

「なるほどね、それで光輝人(アルーヴ)は血相を変えていたのか」

「その、人族ヒューマンが契約者になると光輝人(アルーヴ)は思いもしなかったようで」


 うーむとリックは考え込んでしまった。光輝人(アルーヴ)が精霊を崇めて居た事は書物で知っていたし、闇輝人(デュアルブ)などからも似た情報は聞き及んでいた。だがまあ音楽が好きで集まり魔力を与える事が出来るのが自分だったのでそこまで深く考えていなかったのも事実である。


「その名前を頂いた精霊が喜んでしまって…

 私もその一人なのですが…光輝人(アルーヴ)に伝えたのですよ」

「もしかすると光輝人(アルーヴ)にとっては一大事だったのかな」

「ですが我等としては栄誉ある事ですから。

 そして主の事を話したりはしないので混乱したのかも」

「崇める対象が名前を名乗って…

 それから理由を語らないか、確かに混乱するね。

 そして先日の騒動か」

「それで呼ばれてもいないので…

 光輝人アルーヴの元へは今姿を現しては居なかったのですが」

「会議が纏まらないと」

「はい」

「それで、どうしたいのかな」

「彼等は自然を愛する私たちの友でもありますが、

 ハーフ光輝人(アルーヴ)となった者や、

 森を開拓する者を蔑んでしまうので、正す事ができないかと」

「うーん、どうなのかなあ、

 血が混ざっただけで蔑むのは如何なものかとも思うけど、

 光輝人(アルーヴ)の問題でもあるからね。

 僕の個人的な感情からすればやめて欲しい事だけど」

「今回の事が切っ掛けとなってくれればと思ったのですが」

「自分たちで考えつかないといけない事だと僕は思う」

「やはり、私たちが告げるのは…」

「精霊は光輝人(アルーヴ)から崇められているんだろう。

 なら、ある意味、神から言われたから止め様となる事になる。

 それは思考を止める事になるよ。

 神が言ったからなんていうのは逃げだ。

 道徳の根底はそういった物も必要だろうけどね。

 実在する存在に言われるのと、

 想像上の物語が語るのでは大違いだよ」


 そこでリックは言葉を一旦途切れさせて、薪を焚き火にべて続けた。


「でもこれまで崇められていたのだから、

 見放すというのも問題かもしれないね。

 単純な生き物に比べれば精霊は崇められても仕方ないさ。

 必要なら助言ぐらいは構わないと思うよ」

「何と助言したらいいか迷うのです」


 なるほど、それが本題なのだとリックも思った。


「難しく考えないでもいいと思うよ」


 過去の約束を守って互いに力を貸していると精霊が思っていた事はこの旅の途中で聞き及んでいた。だからなのかリックの一言は更なる衝撃を齎す事にはなるが、解決の一歩を踏み出させる意見でもあった。



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



「そ、それは…風の…いえウィニア様本当で御座いますか」

「別に無理にウィニアと呼ぶ必要もありませんよ」

「いえ、我等としては精霊様の意思を尊重したく…」

「ですが、先程も述べたとおり、

 我等を崇める必要は本来ないのですよ」

「それは話を聞けば納得もできますが…」


 過去の約束の事を説明して、さらに今後の関係については徐々に改善をすればいい、時間が掛かってもいいじゃないかとリックに言われたのである。そして自然を愛する者同士腹をわって会話する事が最初の切っ掛けになると言われたのである。


「その、確かに言われてみると精霊の方々が、

 敬われる事を避けられていたのは時折感じておりました。

 しかし皆、それを謙遜故だと思い、信じております」


(困りましたわね、これでは主様に来ていただくのは随分と先になりそうです)

 ウィニアもこれは時間が掛かりそうだと思い直してて、リックの助言に従って時間を掛ける事にしたのだった。

 主と認める方から、急激に物事が変わらない事もあるのだと教えられたのだから。

 そして考えた末に長老達に優しく語りかけた。

 「先ずは今までどおり、森を守る事には協力をしましょう」こう伝えたウィニアの言葉に、長老達は三日ぶりに胸を撫で下ろしたのであった。

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