第22話 街道の安全と忘れ物
「今のところの登場人物でこの人のプロフィールをってのは無いね」
「うーん、感想も貰っているけどまだその手の内容のものはないですわお兄様」
「そのうち貰うかも知れないけど極秘資料もあるからね」
「極秘ですか」
「裏設定すぎる物は出せないだろうって言ってた」
「どなたですの」
「一度登場した自称作者さん」
「そうだったのですね」
「うん、他にも女性登場人物がいるけどまだ紹介しちゃ駄目だって言ってたよ」
「マのつく方とかですか」
「あーうん、その人もだね」
「では紹介が出来るまでは別の事でも話題に致しましょう」
「じゃあこれにしよう」
野犬
雑種の野犬の総称
群れで行動する
銅クラスの冒険者の実力だと2匹が限界
ギルド買取価格
皮450エルン 牙300エルン 討伐300エルン
「組合の資料ですわね」
「そう基本の皮の買取価格や特徴なんかも書かれてるね」
「これは意外と種類があるのではありませんか」
「大狼とか魔狼もこの資料はあるからね、他にも大量に魔獣なんかは生息してるし魔物の資料も存在してるよ」
「冒険者組合も面白い物を持ってますわね」
「必要な資料だからね、編集する事で受けれる冒険者のクラスなんかを餞別して犠牲が出ないようにしたみたいだよ」
「これから先にも出てくる魔獣は調べませんといけませんわね」
「まあ、その手の事は重要だから皆に情報は伝えるさ」
「流石お兄様手際が宜しいですわ」
「ご主人様の考え凄いです」
「そ、そうかな」
(照れてますわ、やはり最高ですお兄様の照れた顔)
(最近理解した)
「ワォォォーン」
「ワォォォーン」
「どうやら連絡を取ったみたいだね」
既に魔狼の狩場に侵入している、先程ウィニアが見つけた大狼を始末した時にもう一匹が走り去るのも確認済みであった。
「じゃあ予定通りに、途中で止めて迎え撃とう」
早朝に出発したリック達は中天に差し掛かろうとしている太陽と崖を背にして陣を構える事にした。
「【鉄捧鉄壁】これで完璧だよ」
「ありがとうテッラ」
細かく張り巡らした鉄棒の森、これがあれば流石に大狼は勿論のこと魔狼でさえも機動力は削がれる。
「あら、困りましたわ、まだ時間はかかりますが馬車が…」
「こっちに向かってるのかな」
「そのようですね、護衛のいる貴族でしょうか…
せめて光輝人だったら話して引き返させるのですが」
「うーん、テッラ悪いけどちょっと道を一時的に塞いできて」
「任せてよ」
まあ跡で魔術でもう一度元に戻せば済む話である。
リックの決断はこの上も無く早かった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
街道を進む護衛と馬車は順調に街から出立してリック達の方面へと向かっていた。本来であれば街道に旅人は入ってこれない。通告も出ているし、討伐依頼を引き受けたリック達がいるので後から来た討伐者でもなかった。では彼等は何者なのかという事になる。無謀な商人でも無ければ冒険者でもなかったのである。
「さて、早く魔狼とやらを見てみたいな」
「はい、殿下、直に見れますよ」
執事風の男に殿下と呼ばれた子供の本名はカルロス・モンテ・ノルテア。以前クルネヴィア王国の混乱をついて攻め入ったノルテア王国の第一王太子の息子であった。
実はこのカルロスの目的はリックと同じ留学である。10歳になった彼は王族として留学する必要があったのである。そして彼は今機嫌が悪かった。サラエノ公国の王都を通過する際に祖父からの密書を手渡したのであるが大公の反応は悪く、申し訳ないがこの密書の内容は承服できないと返されたのである。無論既にクルネヴィアと同盟の調印まで済ませた上に娘まで結婚相手と考えているサラエノ大公が裏切るなど在り得なかったのである。
密書の中身はカルロスとリリアーヌの婚約と同盟の締結の申し出だったのだ。ある意味カルロス自体を断ったとも言える結果だったのである。こんな気分にした国などに留まりたくなかったカルロスは街に到着した後も長時間の休息も取らないで出発を命じたのである。魔狼など護衛についている近衛50人にかかればどうという事は無いと街の守衛を押し通して来たのであった。
一方近衛の兵達といえば王宮の警護などはするが魔物討伐などの経験がある物など殆どいない貴族兵なのだった。最初は魔狼の一匹ぐらい数でいけばと勇んだが、守衛を押しのける際に魔狼が数匹に大狼の群れだぞと叫んだ声が全員を緊張と絶望のどん底へと叩き落したのである。
自然と進行速度も遅くなるのは人としては仕方がない事だっただろう。
そんな彼等の前に現れた少女によって突然街道が金属捧によって塞がれたのである。
「ここから暫く通行止めだよ」
少女はそう一言告げるとすっと姿を消してしまった。当然馬車も急停止する事になる。
「どうした、何故進まんのだ」
イライラした声でカルロスが叫んだ。彼の現在の楽しみは魔狼を仕留める事だったのである。Dクラスの魔術を使える自分と50名からの近衛であれば問題無いと考えていたのだ。
確かに10歳でDクラスの魔術を使えるのは一般的にみればそれなりの才能である、探せばそれこそ大量にいるのだが王宮という狭い世界で天狗になっていた彼には判らないことだった。
兵士を危険に晒そうとしている時点で相当な暗愚であるが仮にも主筋の王子である。護衛隊長が王子の叫びに返答をするべく馬を返し、下馬して膝をついてから伝えた。
「殿下、申し訳御座いません街道が魔術によって防がれ先に進む事が敵いません」
「なんだと、そんな物解除して進めば良いではないか」
「畏れながら、不可能で御座います殿下」
「なんだとっ」
「我等の中であの魔術を解除できる者が居りません」
「ならば僕自ら解除してくれる」
馬車を降りたカルロスは先頭へと走っていった。そして唖然としながらその光景を見た。
「なんだこれは!」
林のように乱立する鉄の棒が広範囲にわたって生えていたのである。
魔術を解除したければその魔術を超える力量もしくは同種の別の力によって崩さなければならないのである。
カルロスたちはCクラスの鉄棒を大量に生やしたと思っているが実際はこの魔術はCクラスではなくBクラスである。
だが誰一人として土の魔術のBクラスの中でも難易度の高い【鉄捧鉄壁】など使える者はいなかった。ので見抜けなかったのは仕方が無い。当たり前の話であるBクラスなど使えれば一国の宮廷魔導師の長として活躍できるのだ。そんな知識を持っている者は居なかった。
そして一人の少女がフラっと現れて通行止めと告げて消えたと報告された事でカルロスの癇癪が起こったのだった。
自分の使える魔術をもってしてもこのような現象を反転させることも出来ない事に苛立ったのである。そしてそれを行ったのが少女と見られる事、実際は精霊なので少女ではないのだが報告ではそうされたので勘違いしたのだ。彼は魔法を使える者全てを集めてなぎ倒させるという無茶な指令を出した。
ただ一本倒すだけで相当な力を必要とした命令は兵士達に別の意味で絶望を与えただけであった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「じゃあみんな準備はいいかな」
「はいお兄様」
「大ジョブです」
「お任せ下さい」
「これだけ備えれば完全ですよ」
「「私たちも問題なし」」
返答と共にリックはコンパウンドボウを放った。先頭を走っていた大狼が眉間を打ち抜かれて絶命する。20メムの距離をもって次々に仕留められていく大狼はそれでも勢いを止めないで突撃してきた。
だがどれだけ勢いよく突撃して体当たりをしても【鉄捧鉄壁】の杭はびくともしなかったのである。
弾かれて体勢を崩したところをエリーゼやフィーナ、レビンにマーク、そして精霊達が攻撃を仕掛けていく。
フレイルの一撃は骨を砕き一撃で大狼の命を奪い、精霊の魔法は容易く大狼を切り裂いていった。
大狼の突撃が収まって数が減ったところでリック、エクレール、フレイ、テッラが防御陣地から突撃を逆に仕掛けた。魔狼は3匹、そして残る大狼は10匹であった。
ウィニアが上空から網を飛ばして魔狼の動きを縛りにかかると同時にそれぞれがボーラを投げつけたのである。
突撃してくるリック達に目を奪われていた魔狼達はその瞬間に発せられた輝きと目くらましによって完全に動きを封じ込められてしまったのだ。
リックが事前に全て計算した上で考え出した作戦である。
アヴローラの光の魔法とルナの魔法の組み合わせは凶悪である。不意打ちされてしまえば完全に目がやられてしまう。そして光の魔法は諸刃の剣でもある為に事前に使う瞬間を決めていたのだった。
作戦を立案する時にリックは皆に向かって「戦う前に勝敗は決まってるんだよ」と告げた、まさにこの一連の流れは魔狼にとっての勝敗が決した瞬間であったと言えよう。
魔狼も大狼も光に目をやられ、完全に視界が塞がれた。抵抗するにも足を辛め取られ、さらに網で動きまで制限されてしまった状態では何も出来なかったのである。後は止めを刺されるのを待つ事しか出来なかったのであった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
全ての処理を済ませたリック達は最後に死骸を穴に埋めて焼却すると地形を元に戻して旅を再開させた。
街へはウィニアが実体を伴って門番へと討伐終了の手紙のみを渡しに行ったのである。
そして暫く街道を進んで街に入るところでリックは忘れていた処理を思い出したのである。街道を封鎖していたのだったが、まあ日が暮れる事だし流石に引き返しただろうと考えた。
そしてテッラに街道を元に戻すようにとお願いしたのであった。
多少ではあるが、討伐でリックも気が高ぶっていたのかすっかりと街道封鎖の事を忘れていたのである。
たった一本の鉄棒を処理するのに一日費やしていた為に力尽きていたカルロス一行は近場で野営を始めていた。彼等が何も無かったかのように鉄棒が消えた街道を目にするのは翌日の朝になってからであった。




