第18話 陽気な旅路
フィーナ
種族 :ハーフ光輝人
性別 :女性
年齢 :7歳
婚姻 :未婚
二つ名:リックの侍女見習い
所属 :ブラウン家
戦闘 :近接戦闘F
魔法 :魔法Cランク相当 攻撃D防御C+補助D+
外見 :透き通るような肌、シルバーブロンド、赤と青の混ざった瞳 ハーフエルフ 2歳年上だと思われているが実際は同い年 言葉遣いが怪しいので現在習得中 精霊魔術を使用できる(主に風)現在リックに通常の魔術を教えてもらっている。110cm57:47:52
「私、紹介するのです」
「と言う訳で今回はフィーナの紹介だね」
「フィーナこういう時は恥ずかしがるのが淑女です」
「キャー」
「流石にそれほど恥ずかしがる内容は無いと思うんだが」
「それが淑女としての教育です」
「はい…」
「この場合は『…ボッ』といった具合です」
「女性はこうして作っているのか(濡れ衣)」
「言い掛りですわ、でも今回の話ではそうも言ってられないほど美女だらけになりますわ」
「美女沢山、ご主人様パラダイス」
「もっと私たちも【女】を磨きますわよフィーナさん」
「「オー!」」
エスタット王国の首都から国境を越えるまでに獣の襲撃や野盗などや注意していた貴族達からの追撃などは無かった。それだけを見れば比較的平穏な旅路であったといえる。
音楽を奏でながら進む旅路とは優雅である。
しかし、この音楽によって誘われて寄ってきたのが魔獣ではなく精霊達だった。
「私を」
「一緒に」
「連れてって」
「下さいな」
どこの桃太郎だと言いたい程に精霊が集合してきた。しかもスキーにでも連れて行くような気軽さである。
最初は光の精霊だった、風の精霊と共にやってきたのだ、次に焚き火をしながら楽器を奏でれば火の精霊と闇の精霊が現れ、川辺を通れば水の精霊が、馬車にのってて土の精霊が併走した時はどうしようかと思った、挙句の果てに来てやったぞと落雷と共に落ちてきた雷の精霊には文句を言いたくなった、実際の霹靂なんて起こったら空が落ちてきたかと驚く。
有名所の精霊のみでこの騒ぎである。他にも多数の精霊が契約希望として周囲に集まっているのであった。
もはや異常事態と言っても良い。
(すいません、大変な騒ぎになってしまって)
(いや、別に嫌な事態ではないからいいんだけど)
そもそもウィニアに責任がある訳ではない、どちらかと言えば暢気に音楽を奏で続けたリックに問題があったと言える。
全員が名前を授けて貰おうと集まっているわけで…
別に複数の精霊と契約の儀式を行っても、魔力が吸われ過ぎることや体長に変化が起きたり、制約が発生するなどといった問題は無いと事だけは判っている。
だからと言って適当な名前をホイホイと授けるというのは精霊に対して失礼な行為なのでは無いかと思えてしまう。実際そこまで深刻に精霊は捉えては居ない。しかし気に入ってしまえば今後その名前が通称として定着する事もあるし、人の世で呼ばれ続ける可能性は否めないのである。
焚き火を前にして大量の精霊達に語りかけた。
(一度に適当な名前をつけるのは失礼な気がするんだ。
だから何日かに分けて順番に名前を決めていくね)
(((わかりました)))
(じゃあ、何の精霊か一人ずつ教えてね、
名前が決まった子からウィニアに伝えて呼び出していくよ)
フィーナとウィニアと共に精霊に話しかけては何の精霊かを聞きノートに纏めていった。
後に精霊の聖本と呼ばれる本が誕生する切っ掛けとなった事件であった。
なぜ精霊が此処まで契約に拘ったのかは後々判ることなのであるが、大きな理由はリックの曲が聞きたいからというのだけは述べておこう。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
第一回精霊会議(後々にそう呼ばれた)を終了した次の日からリックは音楽を奏でながらも精霊の名前を考えるというマルチタスクをこなす事になる。既にリックの旅と音楽は切り離せないものになっていたのであった。
音楽がないと物足りないと感じてしまうのである。これはレビンとマークもそう感じる程で、音楽を聴いていながらの旅との差が明らかであった。実際に体感時間の進み具合だけでなく馬車の進行速度まで変わってしまうのだ。
そんな中で一番最初に名前をつけたのは雷の精霊に対してだった。もう一度空が晴れた状態で落雷を味わいたくなかったからであるし、雷の魔法は得意魔法の一つなのである。
(じゃあ宜しくねエクレール)
(可愛い名前だな、気に入った)
お菓子の名前にもなってるという記憶からだ。
女性の名前にサンダーやボルトは流石に捻っても向いてなかった。
他の精霊も知識を応用して決めていった。火の精霊をフレイア、水の精霊をアクア、土の精霊をテッラ、光の精霊をアヴローラ、闇の精霊をルナと、それぞれに名前を授けた。
他の精霊も一日に付き1体は名前をつけていった。
これもリックの日課となっていくのである。たまたま思い出しやすい属性の精霊が先になったとも言えるし、力の強い精霊だから早期に現れた事で順番が早かったとも言える。
精霊に身分の差は無いのだけれども属性を司るこの7人については特別視されているのである。
そして、リックの与り知らない場所で、徐々に広がる大事件として問題になっていったのだが流石にこの場に居るリックを責める事は出来なかった。
勿論その場所とは精霊を敬う種族の都市や村であった。別に精霊魔術が使用不可能になったなどと言った問題では無いのだが、契約ではなく信仰と精霊の声を聞ける事で精霊と接してきた光輝人が一番混乱を極めた。
突然風の精霊がこれからはウィニアと呼んでくださいね、と言い始めたかと思えば、水の精霊までもがアクアと呼んでほしいと言い始める。普段は一番物静かだった光の精霊までもがルナと呼んで欲しいと言い出した頃には様々な精霊が徐々に名乗り始めたのである。
これは闇輝人も同様の事態を招いていたのである。土、火、闇、雷と精霊達は次々に名乗り始めた。まだ闇輝人は他の力の弱い精霊までは余り付き合いも無い為に光輝人と比べれば混乱は少なかったとも言えるが、長い歴史において初の出来事であったと言う点においては同様だったのだ。
そんな混乱を他所にリックの命名作業は順調に進んでいった。精霊の方からすれば誇らしき行為であって、光輝人が騒いでいてもお祭りぐらいにしか考えなかったのは長老達がその事実を知れば涙を流しそうな事態である。
それなりの魔力を与えてやると実態を持つ事もできる7人の精霊は馬車に乗ったり窓から覗き込んだりと暇があれば音楽を聞きに着たりしていた。
すれ違う商人の馬車などからすれば肌の透き通るような美少女や南国風の赤銅の肌の踊り子、ブロンドの髪の格闘家、珍しい髪の色をした長髪で知性的な佇まいのドレスを着た美女、ブラウンヘアがクルっとカールしたちょっと小さな少女、光輝人よりも光り輝く肌を持った銀髪の少女と闇輝人のような漆黒の黒髪と浅黒い肌に黒い瞳をもつ美女と多国籍の美女だらけの馬車が通り過ぎるのである、御者が余所見をして脱輪したりする光景は日常茶飯事の出来事となっていた。
リック本人の意識は別として、知識としては敬う気持ちと精霊キタコレという不思議な感情が湧き出すのであるが、リックはある程度の自然の魔力生命体として捉える気持ちが強いぐらいで接している。
だが回りから見ると、リックを中心とした幼女から美女まで選び放題のハーレムである。
存在自体が知られる事が少ない精霊が一緒に旅をしてて当初は緊張したレビンとマークも段々と慣れて、いまではやっぱりウィニア、いやいやフレイア、だがアクアさんも捨てがたいなどと小声で話しをする程である。
そして精霊側からすれば、全く逆の事を考えているのである。精霊王の誕生とさえ騒がれているのだ。そして7精霊が護衛の名目で張り付いているんだとさえ噂されているのである。
こうして奇妙な共生関係が出来上がったのである。
町に近づくと彼女達は姿を消して、意識のみで会話をするのである。
サラエノ公国に入ってからも賑やかな道中は継続していた。そうした美女を見ると襲いたくなるのが下劣な人の根性である。
「おうおう、女を引き連れての旅たあご大層だが此処までだ」
「なんでしょう、魔獣には見えませんが」
「うん、あれは冒険者か、傭兵ってとこだね」
「リック様如何しますか」
レビンが対応に出ようかと問いただしたのだが、其れより早く動いた者がいた。
「ビビっとね!」
エクレールが刀を抜きながら近づこうとした男をまず電撃で仕留める。
「全く、手が早いのですから」
そういいながらウィニアがドンッと体当たりで吹き飛ばし。
「本当だよ、まったく」
同意しながらもテッラが拳を叩き込み悶絶させて。
「ヤレヤレです」
呟きながら怒りながら突撃する集団をアヴローラが目潰しすると、
「これだから脳筋は困るのよ」
そう言いながらルナは暗闇を纏わせて敵の行動を阻害する。
「美しくスマートに」
全員に水の散弾を弾き飛ばして置きながら涼しい声で、アクアが締めくくり。
「「「止めをどうぞ」」」
と述べてきた。止めは出来れば刺さない方がと思いながらも【雷閃】をしっかりと叩き込んだ。全員を縛って町の警邏に引き渡したが、その頃には精霊達は姿を消していて、彼等の訴えは言い逃れの為に女性に返り討ちにされたと供述していると判断され鉱山送りとなった。ご愁傷様である。
「信じてくれ、光体の女性がこうバーンって」
「ドカーンって」
「ビリってやられたんだ」
何れも真実を述べていたのだが、正式な身分証明書まで提示して引き渡したリックを疑う警邏は居なかったのである。