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第17話 国王候補

「お父様の紹介をしようと思ったんだけど、男性キャラクターの外見に興味は無いって…」

「それは、仕方ありませんわ、誰得と言われますもの」

「だから別の人ってことで、はい」

エリーゼ・バンクス

種族 :人間

性別 :女性

年齢 :5歳

婚姻 :未婚

二つ名:リックの義理妹いもうと侍女メイド見習い

所属 :ブラウン家

戦闘 :近接戦闘F(E)

魔法 :Dランク 攻撃D-防御E補助E-

外見 :少女版メアリー 

ライトブラウン ブラウンアイ107cm55:47:53

リックと同い年だが妹的存在 魔術をリックから教わっている。

才能もあって現在はフィーナに言葉を教えたりしている。

お兄様と呼びかけ、エリーゼと呼ばれると拗ねる。

「キャアアア!

フィーナお兄様の目を塞いで」

「了解しました」

「え、なんでどうして」

 エスタット王国の首都、レンガ造りの美しい町並みである。

 現在王位継承争いが水面下で行われ混乱が続いている、とはいえ首都である、それ故に表向きは平穏が保たれている。


 クルネヴィアと違って本人同士の抗争が殆どである。静かな戦争状態と言えた。

 なにせマリー王妃の兄達の争いである。互いにそれなりの権力を既に保有しているし、それぞれが貴族などを取り込む勢力争いに注力しているので、民間に関してはそれ程酷い影響は受けてなかった。


 ボルテウス辺境伯からの忠告もあったので、貴族間の争いや王族の権力闘争からは極力逃れたいと考えたリックは、完全に裏方として競売オークションの行方を見守る事になった。


 最初の印象こそ3流の組合(ギルド)代表だったが、流石に一都市の代表を務めるだけに、巷の商人とは違い、それなりの人脈を持っていた。その繋がりから、王都に存在する商人達が組合(ギルド)の枠組みを超えて参加を申しでた程である。チャリティーの意味合いも多いので見栄などで参加した者も多かった。


 そして悪い意味で、金の匂いのする所には妙に鼻が利く男なども現れるのである。


 それから身を隠すように行動していたリックであるが、大規模な競売会となってしまった事で莫大な金額を手にした事によって集ってくる相手を払い飛ばす必要が出来てしまった。


 ごり押しとも言える手段で面会を申し込んできたのは、ヘイタル男爵という一代貴族であったのだが後ろにはモレッテ伯爵、そしてどうやら王子達の一人であるルベン大公が見え隠れしていると言うのである。


「さて、商会の跡取りと冒険者の諸君か…

 今回の競売オークションでは相当の利益を上げたそうじゃないか」


 不遜とも取られかねないがリックは黙って話を聞き続ける。


「…そこでこの国にも還元をして頂きたいのだがね。

 勿論只でなどとは言わないよ。

 もしも全額を寄付してくれたりすれば男爵の地位を約束しよう」

「失礼ですが、ヘイタル男爵、私は商人です、

 男爵の地位は役に立つ事などありません。

 それに男爵の方が約束すると言うのも…

 男爵が与える男爵の地位とは如何なものですかね」

「ククク、いや実に面白い子供だ」

「とにかく、私共には必要の無い商品で御座いますので、

 買い上げる必要もありません」


 男爵家という一代ではあるがプライドの塊の様な人物のヘイタルには屈辱意外の何者でも無かった。

 己の寄って立つ権力を必要ないと言い切ったのである。


「貴様!

 子供だと思って無礼な、叩ききってっ」

 バキンッと叩き折られたのはヘイタルの抜いた剣である。

「何か御座いましたか」


 刀を鞘に納めながら涼しげに話すリックの態度、そして叩き折られたのはヘイタルの心だった。


「ヒィ…」


 と一言だけ発したヘイタルはそのまま漏らした事も隠さずに逃げ帰った。


「リック様大丈夫でしょうか」

「まあ、仕方が無いね。

 オークションに関しては確かに王都でやったお蔭で、

 莫大な金額が手にはいっている。

 そのお蔭で遺族にも十二分な手当てが出せるだろう。

 それに野盗の被害にあった村などにも義捐金が回せるんだ。

 多少の災難は引き受けるとしよう」

「しかしその刀というものの切れ味は恐ろしいですな」

闇輝人(デュアルブ)の渾身の一作だからね」

「あの男爵もまさか子供相手に刀を抜いて折られたなどとは言いふらさないでしょう」


 レビンもマークも反応する前に事が済んでしまったのである。

 これではどちらが護衛なのかわからないと思いながらも小さな主君に尊敬をもって話していた。


 しかし世の中には恥を恥と思わない人間もいる。

 そこはレビンとマークのように騎士として誇りを持つ人間に予想出来ない事でもあった。


 それだけリックの稼ぎ出した金額が凄まじいという事でもあったのだが、翌日出発しようとする所に私兵が取り囲みに訪れたのである。


 勿論国軍でも無い為逮捕権も何もない只の暴力行為である。

 しかしその私兵の後ろには伯爵と大公がついているので遣りたい放題という事もあったである。


 有無を言わさない態度で拘束に掛かった私兵は自分たちの運命を後々に呪う事となった。


 モレッテ伯爵としては後で揉み消す心算で放った20名の配下である。5名の腹心の騎士と傭兵上がりが15人であった。元々傭兵が戦争の無い時期に私兵になる事などまず無いのだ、そうして拾われる者などというのは大体において戦場で活躍する力がない町のゴロツキである。戦狂いの者は戦場を探し回り、実力のある物などは軍などから既に声がかかるか軍団に所属しているのである。


 其の点この日拘束しようとしたのは只のゴロツキであった。


 スタスタと歩いて来るリックを子供だと舐めていたのが最初からの間違いである。昨日の話を男爵としては話していたのだけれども誰一人として信用しなかったのだ。


 その所為でリックの最初の投げ業から魔術までを全て喰らうハメになった。

 繰り出される定威力の【ライトニング】を浴びせられた兵士が次々と倒れていった。

 レビンやマークに倒された者は骨折などを負っていたのでどちらに転んでも無傷だっただけリックの方にやられた者の方が良かったと言えなくもない。所詮は五十歩百歩の違いでしかなくなるのだが…


 全員を首の後ろで手首を縛って縄に繋いでリックは王城へと向かった。

 慌てたのは報告を受けたモレッテ伯爵とルベン大公である。


 活動資金を濡れ手に粟をつかむ気持ちで手に入れようと画策したにも関わらず、私兵が捕まった上に王城へと向かったとなれば何を話されるのか判ったものではない。


 大公の命令として近衛兵が城から出発し私兵を引き取る為にと行動したのだが、時既に遅く、後の祭りとなってしまうのであった。



 ◆◇◆          ◆◇◆          ◆◇◆



「初めてお目にかかります陛下、リック・ブラウンで御座います」

「ふむ、そちが我が曾孫か、うむマリーの血筋じゃな」

「母にも似ていると言われております」

「うむ、して今日は突然の来訪故に驚いたのだが如何した」

「本来は留学の為だけに領内を通過する予定でしたが、

 少々問題に巻き込まれましたのでお力をお借りできればと」

「なに、問題じゃとな。詳しく話してみよ」


 この時点で謁見の間にいたモレッテ伯爵とルベン大公は顔面蒼白である。もう一言二言話が進めばどうなるか怪しい程の顔つきであった。


 国王がマリーを可愛がっていた事を誰よりもよく知るのは兄である大公自身なのである。


 ボルテウス辺境伯との出会いから始まって先程の襲撃騒動まで話終えた時にはモレッテ伯爵は気を失い、ルベン大公は膝を付いてしまっていた。


 挙句にリックは国王に残った盗賊の財宝からの利益を、エスタット王国としての盗賊被害者などの孤児育成の基金としてもらうように進呈してしまったのである。


 第一王子派の財務を預かる貴族が喜色を現したがすぐさま絶望する事になる。


 契約魔術によって使用制限を掛けられてしまったのである。国に対して契約魔術を行使できるなど思って見なかった彼は膝を折ることになるのであるがこれはまた別の話である。その前から彼は打ちのめされていたのである。


 自らの孫に優秀な者がいる事を国王は喜ぶと同時に、我が息子達の情けなさを嘆いた。

 勝ち誇ったバケット公に対しても叱責を浴びせて私室へとリックを招いた。


 私室から出てきたリックは何事も無かったようにお別れの挨拶だけを告げて王宮を出て行ったのだが、エスタット王国の激震はこの後の出来事である。リックと国王が何を話したのかは誰にも語られる事は無かったが、国王は一旦王位継承権を全て白紙に戻し今後の息子達の活躍に期待すると発表し、私兵をもって暴挙に出ようとした伯爵に関しては領地を取り上げ処刑としてしまった。


「お兄様、どのようなお話をされたのですか」

「大したことじゃないよ」

「てっきり国王になって欲しいと頼まれたかと思っていました」

「ハハハ、流石にそれは考えすぎだね」

「いいえ、きっとお兄様に留まるように言われたのでしょう」

「まあ、それに近い事は頼まれたけどね」

「なら本心では孫のお兄様に継いで欲しいと思ったのでしょう」

「ご主人様、王様器あるのです」

「まだ5歳の子供を捕まえてそれは無いと思うけどなあ」

「何れ判ることですわ」

「そうそう、ご主人様凄い人なる王様ぐらい当たり前」


 実際には暫くの滞在と孫娘との婚約まで薦められたのだが、5歳で留学に行く身ですからと丁重に断ったのが事の真相だったのである。


 リックは参ったなあと、鋭い指摘をした妹の感の鋭さに驚きながらサックスを咥え、今日も楽しく旅路を進んでいった。

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