第14話 依頼
メアリー・バンクス
種族 :人間
性別 :女性
年齢 :22歳
婚姻 :未婚
二つ名:無し
所属 :元王宮近衛騎士団
戦闘 :近接C+
魔法 :Cランク級 攻撃D防御C補助C
外見 :ダークブラウン ブラウンアイ 170cm 85C:63:83
「あのリック様この資料は…」
「これか前の資料だな、そのまま釣書に使えるかなって」
「え!」
「幸せになってもらわないといけないから、母上達に厳選してもらってるぞ」
(嬉しいんだけど、ちょっと悲しいわね、フフ)
翌日、エスタット王国を通り抜ける最短ルートを選んだリック達は街道を進んでいた。
レビンとマークはボルテウスから貰った装備一式に着替えている。
リックは元々着ている灰色のコートやシャツにズボンと私服の戦闘服に関しては貴族の物だとまでは思えないものなので問題はないとしていた、成長しても問題ないように若干裾などは折り返しで縫いこまれているのだが、そのちょっと大きいサイズに着られている感覚が見た目を狂わせてもいるのである。
エリーゼも普段着として町で買ったワンピースを着ているし、フィーナも先日買った洋服である。
子供3人に護衛の冒険者が2人、もしくは冒険者の移動についてきている子供といってもなんとか見えなくもないのである。
「しかし態々このような物まで用意して下さっていたとは…」
「うむ、私たちの分まで用意して頂いてありがたい」
「2人とも感謝は間違いじゃないけど、
これだけの情報を既に伯爵が持っていたことの方が大事だよ。
そっちに気をつけないといけない」
「確かに、言われてみれば」
「手回しが良すぎると」
「うん、伯爵は味方だったからいいけどね」
「そうですな、これからは喋り方にも注意しましょう」
「敬語から崩す必要があるね」
「これは参りました」
「じゃあ、2人は今日から元騎士の冒険者。
僕らは商家の息子ってことでいこう、
伯爵のくれた通行証もそうなってるからね」
「それならなんとか、誤魔化せそうです」
「それにほら、僕は二六時中ギターを弾いているからね。
商家の道楽息子って設定だ」
「エリーは妹、フィーナが侍女で問題ないさ」
「私もそれなら何時もと変わりません」
「私も同じです」
ザ・ブリティッシュ・グレナディアーズを演奏し始める、足踏みもあわせて陽気に街道を進む一行だった。
「猿!ゴリラ!チンパンジー」
いつの間にやら曲が繋がって違う曲になった途端にリックが呟いた。
「お兄様、なんですの其の変な歌詞は」
「いや、なんでだろう、こんな風に歌った記憶が…」
「曲名は相変わらず覚えてらっしゃいませんの」
「うーん、一度聞くとリズムと楽譜は覚えたみたいだけど。
曲名まで正確には覚えてないんだよね」
「それで国歌を作ってお仕舞いになるのですから…」
「やっぱり国を象徴する音楽も要るかなと思ったんだ」
クルネヴィア王国に国歌を残してきたリックだがそれにあわせた楽器作りもしていったのだ。
簡単なリコーダーやタンバリンなども闇輝人に作ってもらっていたのでエリーゼもフィーナも適当に叩いたり吹いたりと賑やかである。
次第にアイリッシュ系のメロディーが増えてきて新たな楽器として闇輝人にして渾身の一作とまで言わせたアルトサックスモドキまで使って音楽を奏でる。
町に入るまで演奏が止む気配は無かった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「ご主人様の音楽、魔力がある」
「え、そうなのかな、余り意識はしなかったんだけど」
「間違いない、強い力、精霊が喜んでた」
「ハーフ光輝人のフィーナが感じたって事は、
恐らくそれで間違いないんだろうね」
「音楽で魔力か…研究してみる価値はあるかもしれないな」
精霊が反応するという現象も面白い。呪文を仕様する魔術とは結局のところ声という音に魔力を込めて呪文を生成し、事象改変能力を発動させているのだ。
もしかすれば【魔法の理】に音楽で対応する物がある可能性も存在する。
そんな風に暢気に町を歩きながら宿屋に辿り着いた一行はその日の疲れを癒す為に部屋へと入っていった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
一応は冒険者登録をしている為、リックが代表としてマークと組合へと足を運んだ。
冒険者組合に来るのはただの義務だけでなく旅に必要な情報が集まるという理由もあるのである。情報の取り扱いはそれぞれの組合によって違うが旅に関する情報においては冒険者組合を超える組織は存在しない。
商人組合よりも大規模なネットワークを構築しているのだ、商人組合は多数存在するが冒険者組合は一つの組織で情報の蓄積量が違う。
対抗する組織としては傭兵組合が挙げられるが、こちらも商人組合と一緒で複数存在する上に専門は戦争である。こうなれば情報に関しては商人達も冒険者組合を利用した方が費用も安く済むのである。
「こんにちは、もうこんばんわかな」
「はい、こんばんわ」
5歳児のリックが喋りかければ多くの受付嬢は確実に優しい態度で接してくれる。
中身が何歳なのかわからないのだから詐欺のような物だが、それを主張しても誰も得をしないのである。であればその少女と間違えられる程の容姿を見た人を失望しないだけの対応をするまでであると判断するのはリック流の処世術と言える。
「お姉さん、最新の王都までの旅の状況を教えて下さい」
「あら、僕は王都に向かうの」
「うん、そのまま北に抜ける予定だけど何かあったの」
「そうね、この町を出た街道で盗賊被害が報告されているのと、
魔獣の報告が出てるわ。
それに王都は今王族の争いで荒れてるらしいわよ」
「その盗賊達って何人ぐらいなの」
「20人ぐらいの集団だって聞くわね。
一応討伐依頼書も出てるんだけど。
20人ともなれば軍が動くまで皆静観しているわ」
「魔獣は怖いのがでてるのかな」
「魔獣は魔犬よ、
僕なんて美味しそうだから危ないわよぉ」
「うーん、僕なんて食べても美味しくないよ。
それよりお姉さんその二つの依頼って、
ここで受けて次の町で精算は可能な依頼書かな」
「良く知ってるわね、討伐の依頼も知ってるなんて凄いわ」
「じゃあその二つ引き受けたいから、
このカードで宜しくお願いします」
「え?」
「そのカードじゃ無理なレベルかな」
「あれ?」
「一応討伐が一番強くて鋼7になってるはずだよ」
カードを差し出す時に『守秘義務は守ってね』という紙も同時に渡しているのである。
「リベラ、噂に聞いただけの登録団体だとばかり…」
「まあ眉唾な噂もあるから仕様がないんだ」
「でも貴方がその代表なんでしょ」
「うん、まあそうなっちゃう」
「では、此方の依頼書をお持ち下さい」
「じゃあね、お姉さん」
走り去って行くリックとそれを黙って追随していくレビン。
カウンターに残った女性だけが唖然として見送っていた。