突撃砲兵隊の装備更新計画
ブーフェンでの戦いで勝利した第六歩兵師団や突撃砲兵隊は市民から冷たい目線を受けていた。
そのはずである。味方でも榴弾砲で町ごと砲撃し廃墟と瓦礫になってしまったからである。
服や体が泥と血にまみれ極度に疲弊した姿で街中央部に留まって居たため普通の人から見るとゾンビに近いものがあった。
「く・・・多大な犠牲・・・か」
「そんなに落ち込まないでくださいよ隊長」
「そう言われてもねてもね・・・」
「いつものミリアちゃんなら気にしないと思ったけど」
「ヤーク 私がそんな冷徹な女だと思ってたの?」
「そうじゃないけどさ」
「と・・・とりあえず休憩!各砲長は状況を報告して休憩」
8両の105mm自走榴弾砲は砲身内が磨耗し始めていたがいたが問題ない。
6両の装甲兵員輸送車は、半数が装甲と履帯が損傷し擱座状態である。
14丁の機銃は銃身の交換が必要で使い物にならなくなっていた。
隊員は7割何かしら傷を負っていたが死亡は無し。
「あれだけ激しい戦いだったのに脱落者無しか」
「彼女たちは天使なのか悪魔なのか・・・」
「しかし彼女たちが居なければ我々は全滅していたところ」
「話に聞くところによると彼女たちは、田舎の街の私兵部隊らしい」
「そうなのか?ずっと正規軍だと思ってたけど」
次の日、第6歩兵師団の消耗が激しく、虎の子の突撃砲兵隊も負傷者多数でこれ以上の反撃は不能と判断した司令部は、進撃を止め補給と戦力の補充を待つように命令を下した。
「装甲車の修理は出来ますか?隊長」
「溶断しないと動けないのがいるがなんとか応急は出来そうだ」
「私も手伝うよ」
装甲兵員輸送車の装甲は内側に変形しそれが履帯と接触、これ二より履帯がちぎれ擱座している。エンジンまで貫通する兵器がプロシアには牽引砲しかなく砲兵を持たない部隊には、手榴弾や至近距離戦闘でしか止める手段かなかったのだ。
ミリアは装甲兵員輸送車の応急修理を行いながら今後の事を考えていた。
「今回の戦闘では運良く重症以上の被害は無かった・・・今後の事を考えると変えないといけなくなるな~」
「後で皆に訊いてて回ろうか?」
「頼むね 私は装備の事に集中するよ」
ヤークがソフト的改良を、ミリアはハード的改良を行うことにした。
現状の問題点は、装甲兵員輸送車の装甲・車載機銃の熱強度・それの整備性向上・エンジン高出力化などであり、それらを考えながら一週間ブーフェンで応急修理と休養を取った。
前線補給所から援軍として予備役の第101歩兵師団をが次々と送られ戦力の増強がなされ、それに伴い突撃砲兵隊の予備部品や弾薬も運ばれていた。それでも装甲兵員輸送車の本格的な修理ができる施設が無いため、損傷箇所の部分補強だけになった。
機銃は予備の銃身を得たことにより交換がなされ、精度が新品と同等なくらいに回復し銃座に戻された。
輸送車は前線補給所から建材と食料を運び住人の移動に従事
第101歩兵師団は、街の再建と第6歩兵師団の人員補充と怪我人の後送を行っていた。
1ヶ月が過ぎた頃には、街に賑やかさがかなり戻り都市機能が回復すると、街の空きスペースに作っていた野営地を街の外に移し車両をそこにすべて移した。そして、第6歩兵師団と第101歩兵師団は街の再建に注力しその間防衛は突撃砲兵隊が担っている。
ヴィーレ市に戻れないミリアは野営地の指揮官室で新装備の設計をしヴィーレ市に送るようにしていた。
その内容は、装甲兵員輸送車の装甲部分の改良・装甲兵員輸送車の防御火力の強化・指揮車を除くすべての車両のエンジン出力強化・エンジン出力強化による足回りの強化・小銃弾のマガジン化などである。
装甲兵員輸送車の再設計では、プロシア軍のライフル弾で変形してしまうことが多かった事があり20mmの装甲厚を増やすか角度をつけないといけないため装甲の設計図を2案からなるものになった。
第1案:従来の形状のまま装甲圧を増やす設計 長所:変更点が多くないため量産しやすい 短所:重量増加が顕著に出る
第2案:装甲に角度をつけ避弾径始(厚さは変わらず三角法により見た目の装甲圧を上げる方法)を得る設計
長所:重量増加を抑えることができる 短所:装甲を溶接したり、新しく作る形状のため工数が増えることによる量産性低下
次に防御火力の強化の案である。
今までの30口径機銃では、車両に乗せて運用させても車両自体が盾になってるだけで打撃力にはなっていなかった。そのため、小口径の新型砲を乗せようと考えていた。
既存の装甲兵員輸送車は助手席の天井に穴をあけそこに30口径機銃を据え付け攻撃したのだが。
主砲を乗せるとなるとその大きさが小さく載せきれない。そのため、穴を拡大。
新型小口径砲は30mm~50mmを考え、重量増加による砲の旋回能力低下を避けるため砲塔バスケットを採用、それまで開放されていた機銃座全体に薄い装甲を施した砲塔方式とした。
砲と砲塔を乗せた事による重量増加と装甲の重量増加はエンジン出力を上げないと加速・速度が実用レベルじゃない計算になる。
エンジンの出力は大まかに気筒数・気筒の直径・空気の圧縮率・圧縮空気の温度などで変わってくる。
エンジンの設計はかなり時間を要するため後回しに。
足回りは重量増加による履帯沈み込みを防ぐため拡張グローサーをつけるか千鳥式転輪をつけて幅広な履帯にする方法の2案を出した。
最後に小銃弾のマガジンの設計
これは30口径機銃から得た技術を応用しバネの耐久性を向上させた物を組み込み弾倉の上から弾薬を押し込むと押し込んだ弾薬が、弾倉の中のバネのついた板を底に追いやり入っていくもので10発ほど装填でき、ミリアⅡの装填口を改造して下から装填できるように真っすぐな弾倉を設計したのだった。