ノーヴの(馬)車窓から3
「へっへっへ~。お嬢さん達、検問だよぉ~」
私、今まで色んな世界に行ったけど、こんなコテコテな三流悪役初めて見た!
ボロボロの皮鎧に錆びた片手斧、斜め下から見上げるようなポーズ。
そのうち『世紀末だぜヒャッハー』とか叫びだしそう!
カルメンさんから『盗賊注意~!』と聞いてから一泊野営。
翌日の日も大分登り切った頃。
道の真ん中にバリケードが出現しました。
良く、まぁ、この場所にバリケードなんて作ったものです。
樹木もまばらだし、草地もない岩場。あまり凹凸の有る地形でも無いので視認性抜群。
築材も……土嚢ですらなくて、馬車(そのまま)とか何か入ってた箱とか。
一応、主目的(なのかな?)のこちらに向けて銃眼開けてるのは評価してあげる。
乗り出して銃(この世界にもあるんだね)を構えてるおバカさんを除けば。
「はぁ。一応……念のために言っておくけど、私は公務中なんだけど分かってるかな?」
身分証をチラっと。
肩書きは『常勤公務官』です。(リュミちゃん達は非常勤公務官or国民になるんだって)
銀狼さん曰く『常勤になるのは部隊長クラスだから、見る人が見れば分かるぞ』らしい。
あんまり見せびらかしたくは無いよね。そんな事言われちゃうと。
「見たところ、他国の方みたいだけど作戦許可証を見せてもらえるかな。指揮官は誰?」
他国から来た人のノーヴ内活動は許可証が必要なのです。
カルメンさんが持ってるのは、ノーヴ内で商業活動をする許可(商業活動許可)。
ギルドの人たちとか、他国の軍や警察機構の人たちは『国内作戦許可』が必要になるね。
もちろん、伊予ちゃんとか私、三公の承認が必要になるよ。
承認巡り(通称:スタンプラリー)は醍醐味よね!
「ンだとこのアマ!ナメくさってると奥歯に……なんだっけ。お頭~!なんでしたっけ~?」
……アホの子だ。この子。
「『耳に指突っ込んで奥歯がたがた言わす』だ。私の部下が失礼をした」
チェーンメイルの上に趣味の悪い紫色のローブ。ゴテゴテと勲章を付けた怪しげな男が出てきました。
金属鎧と弾帯(+拳銃)って合わないんだね。違和感バリバリです。
下手に紋章とか入ってる帯掛けたりしてるからなのかな?
「私は宗教監察官のワマイだ。見ての通り、教皇閣下代理より正式な命令書を発行されている」
『平伏せ!』とばかりに見せつけてくれました。
どれどれ拝見しますか。
ふむふむ。
命令の発行者(つまり発令者だよね)が、なんと辺境伯と司教。
他国で使える命令書なら、せめて執政とか……キール教だと枢機卿かな?が発行して欲しい物です。
辺境伯って領地内の指揮権しかないでしょ。それに司教とか!せめて大司教連れてこいって感じですよね。
その時点で突っ込みどころ満載なのですが、
曰く、『キール教を信教とする地にて受令者に以下の遂行を命ずる』ですってよ。
このノーヴってキール教は少数派なんだけどね。まぁ、良いか。
曰く、『宗教監察遂行に必要な職務』
私、この書き方の命令書って嫌いなんです。許可範囲が明確じゃないし、恣意的解釈し放題だし。
なので、この命令書だと私は許可しません。せめて期間とか対象書いてあればね……。
最後にドドンと今日の日付で『ノーヴ国内で無制限の活動を許可する』と、伊予ちゃん、三公組、私のサイン。
はい、ダウト!
玄武さんと天龍さんは国外出張中、私はこんな命令でのノーブ内活動は認めません。
……そもそも綴り間違ってない?私の名前は『シズエ』じゃなくて『スズネ』ですよ。
そもそも、サインは『三笠』って書きますしね。
「ヴィル君、見てよ。この酷い許可証」
リュミちゃんは起こしても起きませんでした。
<<ヴィル君、私こんなの承認した覚えないんだけど、私の名前っぽいのが書いてるんだ>>
しょうがないのでヴィル君に聞いてみる。
公文書偽造みたいな概念って有るかな?
<<署名を勝手に書いたら偽造です。許可証の偽造は国際問題ですね。重犯追放か現場処刑か、どっちにします?>>
本から顔も上げないヴィル君。見る振りくらいしようよ。
重犯追放は、国外追放して、追加で『○○をしたから追放しましたよ~』って各国に教えてあげる。って処分です。
国書に準じる扱いってなってる活動許可証偽造なんて言い触らされたら、個人どころか所属組織や国の信用ダダ落ちですね。
「今取り消せば見逃しても良いです。俺も忙しいんで」
うわぁ。ワマイとやらの顔が真っ赤!紫の茹でダコ!キモい!
「亜人ごときが代行閣下に楯突くとは恐れ多いぞ!兵卒、この不届き者を捕えよ!」
……なぜ私を見る。
そりゃ、御者してるとか下っ端っぽく見えるんでしょうけど。
兵卒は無いでしょ。兵卒は。せめて『そこの美少女』とか。
「それじゃあ改めて。ノーヴ所属の三笠 鈴音って言います。なんか、そこの紙に私の名前書いてるみたいですが、私はサインした覚えありませんので」
ふふんと鼻で笑われた。
「ノーヴの参謀、スズネは成人女性と聞いている。貴様のようなガキが名乗ってもすぐ分かるわ」
わ、悪かったなー!童顔&女っぽくない体付きでっ!
「生意気な亜人に嘘つき小僧。辺境の蛮族国家に相応しい兵士ではないか」
小僧って……言うに事欠いて男扱いとな。
それにしても……見る限り、この紫とバリケードの陰(と、言っても身を乗り出してるけど)に二人。
たったの三人で良くここまで大きく出れたものです。
「まぁ、おふざけはこの位にして。許可証偽造の現行犯だから、この場で捕縛するね。抵抗しちゃダメよ」
バリケードの二人が見せつけるように初弾装填。
……ちょっとまって、弾込めしてなかったの!?
「抵抗の意思を示したよね。それじゃあ『捕縛』するよ」
指を鳴らすと同時に光の帯が二人に絡む。
イメージは某魔法少女(そう言えば私と同じ1尉だったね)の『バインド』ですよ。そのまま全力全壊で砲撃しちゃえばパーフェクトっ♪
それにしても部下さん達は偉いね。ちゃんと安全装置掛けてたんだ。引き金に指が掛かってるけど暴発してない。
「お頭~!捕まっちゃいやした!」
「助けてくだせぇ!」
頭抱えたくなってきた。
何このおまぬけ展開。
「で、あなたはどうするの?監察官さん」
お飾り程度の拳銃なんて、抜いたの見てから捕縛で十分。
私も実弾射撃の時にやってみたけど、弾帯から拳銃抜くのってすんなり出来ないんだ。
彼が付けてる蓋付きの革製ホルスターなら尚更。蓋が引っ掛かるのよ。
でも、ちょっと見たい気もするなぁ。この世界の拳銃ってリボルバー式なのか、オートマチック式なのか。
「な、な、なめるなぁぁぁ!!!」
おぉっ。意外と速いっ!
けど残念!安全装置掛かりっぱなし!
こんなゴテゴテ装飾付いたリボルバーを速撃ち(撃ってないけど)するだなんて、大分練習したんだろうねぇ。
尚、この世界の拳銃はリボルバー式の模様です。……私、それは撃った事無いや。
でもごめんね。私は無詠唱なんだ。
両手両足をがっちり捕縛。さっきと同じ『バインド』です。
「はい残念」
「だ、代行閣下の命令書を持つこの私にこのような仕打ちは……許されんぞっ!」
縛り上げてもうるさいな。この子。
「はぁ……まだ分からないかな。正式に入国していない時点で、君達はただの賊なんだよ」
スタっと御者席から飛び降りる。
危ない危ない。蹴り飛ばすところだった。そんな所で立ってると危険だよ~。
「賊なんて虫けら以下の存在、殺してバラして埋めて沈めてしまっても……構わないよね?」
見せつけるように氷の槍(複数)を生み出し、ワマイ君にゆっくりと近付く。
こうやって背後にふわふわさせると某ロボット物みたいだよね!逆シャアとか種とか♪
ファンネル射出~!みたいな。
わざと掠らせる形で撃ち出してみましょう。
ドスッ ドスドスッ
……撃った本人が驚くわ。鎧が豆腐のように切り裂けちゃった。
これ、『風の刃』とかやるより切れるんじゃないかな。
た、たぶんお肉厚そうだし大丈夫だよねっ!足元狙ったし!
「……あんま遊ばんで下さい。立ったまま気絶してますよ」
あらホント。白目剥いてる。
「時間無いんですし、さっさと進みましょうよ」
確かにヴィル君の言うとおりでした。
急ぎじゃなければもう少し遊ばせてもらうのに……。
<<別に現場処刑でも良かったんですが、生かして捕まえたんで誰かに回収してもらいます>>
<<ごめんね面倒掛けちゃって。捕まえちゃった方が、この後面白くなりそうだったからさ~>>
どうせ重犯追放なら……面白いコトしてあげちゃいましょう。
あーんなことやこーんなことも言い触らして……げふん。通達して。うふふふ。
私も公務員やってたから、やられると嫌な事とかキャリアが吹っ飛ぶ事分かるのよね~♪
「……ところで、このまま置いといて良いのかな?」
「ズイホウが拾いに来るそうなんで捨ててって大丈夫です。とりあえずアッヅ城の監獄に放り込むみたいですし」
なら良いか。
さて……遊んでた分、急いで進まないと。
闇スズネ様開眼
図上演習でも、おちょくったり、いたぶったり、といった戦術が好きでした。
「全力で遊んであげないと失礼じゃないですか」(スズネ語録)
「まな板」じゃないもん。ちゃんと有るもん!
by スズネ
スズネはスラっとしてて羨ましいのニャ。
私は胸が邪魔なのニャ……。
by リュミエル