表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/27

人手不足・・・と思ってました

お昼過ぎ。作戦会議室。


「う~~ん……人手が足りない!」

今日の窓口業務はお昼でストップ。

理由は目の前の編成表の通りで、

「残ってる部隊が2つなのに、魔獣の討伐依頼が3件に行商人の護衛が2件」

天龍さんは国外出張(他国のギルドへ応援らしい)、玄武さんははぐれ海竜の説得に。

銀狼さんがそろそろ帰ってくるはずだけど、それでも足りない……。

私も、まだまだ練習中だけど魔法が使えるから……でも足りない。

「む~……」


「なんか唸ってるところ悪いが帰ったぞー。土産でワイルドボアの肉貰ってきたわ」

肉は厨房置いてきたわー。と気楽な銀狼さんがお帰りです。

これで3組(私は戦力外です…)に。


「銀狼さん、だーいぶピンチなのです。手が足りません」

びしっと編成表(と、その隣の任務表)を指差す私。

「討伐は3件全部が人里に近いところですし、行商の方も外国の人で日程がギリギリとか」

手形の決済が数日後とか納品期日が明日とか、もう少し早く出てこい!と言いたくなりました。

魔獣の討伐依頼も村の近くだとか。

「共用井戸で水汲みしてるゴブリンが」とか「牧場で羊のかわりのオーガが居た」とか、「もっと早く気付けよ!」と言いたいです。

残り1件は「家の裏にワイルドベアの家族が住みついた」でした。住み着く前に言えと。


「ゴブリンとオーガ、ワイルドベアね。俺等が動くほどでもねーし、護衛優先にしとけよ」

サラっと言ってのけましたよこの人。


「そりゃぁ、銀狼さんからすれば楽な魔獣でしょうけど、民間人からすれば強敵ですよ!」

害獣(魔獣)駆除が軍の仕事かどうかはともかく、民間人の安全を守るのが国の仕事でしょう。


「ん?……あぁ、そっか。スズネは他国基準か」

他国基準も何も、どこの国でも一般人でオーガなんてどうにも出来ないでしょう。

魔獣事典(図書室に有ったの借りてきました)見ても、「凄腕の冒険者でも一人で居る時に見かけたら逃げましょう」って書いてますよ。

「うちの国は大抵ギルドランク持ちしか居ないぞ。部隊の連中だって当番で来てるだけの連中だしな」


……なんですと!?

「え、それじゃあ何で討伐依頼なんて!?」


「めんどくせーんだよ。自前の武器でやると手入れとか後始末が。そもそも金になるヤツなら自分で倒しに行ってるだろ」

土産の肉、何の肉か思い出せよー。と言われて気付いた。

うん。ワイルドボアって『見つけたら逃げましょう。と、言うか見える位近付いたら逃げれません』って書いてたアレだった。

他にも『肉:美味』『皮:高級防具に使う』『牙:加工難度は高いが武器に最適』とか書いてたっけ。

『討伐する場合はBランク以上の冒険者パーティ又は騎士団二部隊以上をお勧めします』とかも有ったね。

「雑魚討伐ばっかり良く請けるな~。と思ってたけどそういう事か」

うんうん。と頷く銀狼さん。

先に言ってください。って言うか、今まで請けてきた討伐依頼って全部そうだったんですか……。

「んじゃ、シュテルヒ行きはイルケ隊でミルム行きはミルム隊で護衛。ミルム隊はそのまま交代させりゃ良いな」


思い出してみれば今までも、ビッグホーンのお肉やら噛みつき魚やらもらってました。

美味しいお肉やお魚ってだけじゃなくて、アレも十分に強力な魔獣でした。

「うー……何で気付かなかったんだ私」

く、食い意地張ってたわけじゃないもん!


「ついでにスズネも行って来い。現場知らねぇ参謀なんか使えねーからな」

仰る通りです。

何の役に立つのか分かりませんが、不肖私随伴させていただきます。

「準備は……まぁ良いか。ミルム組呼んどくから後はアイツ等に着いてきゃ良い」

そう言うと通信魔法で何やら連絡を始めた銀狼さん。

私も使えるけど、顔を知ってる人じゃないと連絡できないのです。

皆は魔道具で通信してるから違うみたいだけど、一回使わせてもらったら壊してしまいました。

練習して魔道具無しで似たような事出来るようになったから良いもん。ぐすん。


ガシャーン

「呼ばれて飛び出たニャ!」

「窓から来るんじゃねーよ馬鹿」

ここ、地上三階なんだけど……気にしないでおこう。

ショートカットの猫耳さん。寒そうな格好だけど、その……。

私、この世界来てからソッチの気に目覚めそう。何この可愛い子。


「駄目じゃないかリュミ。窓割ったら怒られるって言っただろ」

もう一人窓からピョコんと犬耳(片方垂れ耳だ。可愛い!)が。

「お前も外から来るんじゃねーよ」



―――

「ミルム村のリュミエルですニャ。今はミルム隊のたいちょーですニャ!」

猫耳がリュミエルちゃん。


「同じくミルム村のヴィルゲールです。リュミとは腐れ縁でいつも組んでます」

犬耳の方がヴィルゲール君。髪の色が青なのに耳の色は茶色なんだ。


「いじょーがミルム隊なのニャー」

うん。隊って言うか班だよね。


「カムイだったか導き手だったかやってます、三笠 鈴音です」

え?いつの間に『導き手』になったかって?

ウィルヘムさんから教えてもらいましたよ。

『導き手』って、単純にどこかの国に属してるカムイ(異世界人)の事を指すんだそうで。

玄武さんから言われた事を伝えたら「あぁ、それは語源です。一般的な意味はどこの国のカムイか。って程度ですね」だそうで。

「ところで、ミルム隊って2人なの?隊って言うからもっと居るのかと思ってたけど」

2人だと隊じゃなくて班か分隊じゃないのかな。


「あぁ、呼び方は他国基準にしてる。そーしねぇと他国支援の時めんどくせーんだわ」

あー……この国ってそういう人たちの集まりでしたっけ。

ワイルドボアとかワイルドベアをサクっと狩れる人たちなら二人で『隊』になるよね。

「んじゃま、後は任せたわ。居ない間の窓口はやっとくから息抜きしてこい」


「だんちょーが居ないうちに遊ぶのニャ!」

「聞こえてっぞ。お前等、次の任期は当直衛兵な」

「俺を巻き添えにしないでください……」



―――

はい。気が付いたら馬車の前に居ました。

ヴィル君(みんなヴィルって呼ぶからヴィルで良いそうです)に抱えられて(お姫様抱っこでした。少し幸せ)窓からジャンプでした。

みんな、窓から飛び出して気にしないのはどうかと思うな。

行商人さん、あなたもです。

「いやぁ、ノーヴの護衛さんは可愛い方ばかりで嬉しいですねぇ」

しまった!ここに真人間は居なかった!


皆で軽く自己紹介。

私は『見習いです!』と言い張りました。

流石に外の人に『導き手』を名乗る勇気は出ませんでした。

「私はヴィラード商会のカルメンと言います。皆さん御存じの通り、キーリ教国に本店を置いている魔道具商です」

キーリ教国。確か大陸側(ノーヴは島国なのです)で多数派のキール教の本拠地が有る国だったかな。

キールの国でキーリ。国家元首がキール教皇で国教がキール教だから教国である。だっけ。

ウィフィル連山の麓だとか、イェール湖が有るとか見たけど(本で)、それがどこかさっぱりです。

ノーヴは土地神(三公組が神獣って言う位だしね)を祭る感じで、神道みたいな土着教だからあんまり関係は無いけど。

その癖に何故か国交が有ったりする。と、言うか友好国だったりする。


「ニャーもヴィラードのブレスレット使ってるニャン!」

「そう言えば俺の弓具にも入ってます」

なるほど。知らなかったけどヴィラード社って大手なのね。

ほら、カルメンさん。期待しながら私を見ない。


「あ、私は使ってないです」

目に見えて落胆しない!

リュミちゃん(みんなリュミって以下略)もヴィル君も『空気読めよー(ニャー)』って目で見ない。


「……まぁ、皆さんに使って頂けて光栄です。スズネさんも是非、ご新調の際は我がヴィラード製品を」

使おうとして壊れないならどこの物でも良いよ……。

ちょこっと(私比)魔力通しただけで壊れちゃうと使えないですよ。


「荷物の積みこみが終わったら出発しますか。リュミ、出門申請任せた」

「はいニャー。……って、ニャーがたいちょーなのニャ!ヴィルは仕切っちゃダメなのニャ!」

何とも楽しい旅になりそうで。

4/2 思いっきり誤字ってたのを修正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ