第7話 実は最弱と思っていた奴は意外と隠れた才能があったりする
今日は月曜日である。土曜日は長田の家で色々あったが日曜日は特に何もなく県で1位を争うぐらい暇だった。
俺は、1年4組に入る。MGCの後初めての教室だ。結局あの10万円は貯金と手持ちの財布に入っている。それは、どうでもいいが今はお金よりこの状況を説明して欲しい。
「佐藤君って、Xランクだったんだね」
「おい、佐藤。お前は俺たちBランクの仲間だと思っていたのに」
「黙っていて悪かったな」
「まあ、別に言わないといけないってことでもないから謝んなよ」
「お前の瞬間移動カッコ良かったよ」
「ありがとう」
俺は、MGCで瞬間移動を使いXランクということがばれてしまった。俺的にはばらしたくはなかったが、相手が8位ということもあり流石に躊躇うのは自爆だと思い使ったのだ。
「佐藤君、ホントにカッコよかった」
「サンキュー」
「私は、東森美咲。美咲でいいよ」
「俺は佐藤輝樹。俺も輝樹でいいよ」
「輝樹君は本当に強いね。ビックリしちゃった」
「相手もなかなか強かったし俺の力だけで勝てたのは奇跡だよ」
「でも、瞬間移動は凄かったね。それにあの、翼?でバリアを一撃で壊すんだもの」
おかしい。どうもみんなは急所眼力のことを知らないらしい。あれは俺だけに見えるものだったのかな。なら、
「あれは、たまたまバリアの弱点を破ったときに全身の力で攻撃したからだよ」
と、急所眼力についてははぐらかす。
「へえ。でも、いい勝負ありがとうね。輝樹君」
「いいや、観客の応援も俺の助けにはなったし、ありがとう美咲」
「ちょっと、どいてどいて」
そこに長田が割りこんでいく。
「ちょっと、何やってんだよ。痛いだろ」
「いいじゃない。別に」
「別にって言い方はないだろ」
「2人とも仲いいんですね」
「仲いいとかじゃなくて、ペアとして話しているんだよ」
「ペアとしてって……2人でタッグ組んでいたの?」
すると、周りから「マジで?」とか、「カップル誕生」とか、「とりあえず、乙」とか、ペア誕生としての祝福の言葉がなんだか勘違いされている気がする。俺は、一応金目当てなんだけど。
「ちょっと、美咲。何言ってんの」
「何だ。じゃあ、もう二人は付き合っているんだ」
「いや、そういうわけではなくただ組んでいるだけであって」
「でも、千佳とパートナーとはね。輝樹君知っていると思うけど、千佳はDランクよ。輝樹君のXランクとは釣り合わないんじゃないの?」
「その分、俺が働きますから」
そういうと、長田の顔がいつも通り赤くなる。今回は私も働くっていう怒っている方かな?でも、間違えて地雷踏むのは嫌なので、会話を続ける。
「でも、実際長田の戦闘力は出していないだけなのでうまく使えるようにしようと思う」
「あ、ありがとう」
「別にいいって」
「今日から特訓な」
「じゃあ、あたしも行っていいかな。輝樹君?」
「?別にいいけど。一緒に特訓するの?」
「まあ、そんなところかな」
「じゃあ、放課後で集合場所は……というか、どこでするの?」
「じゃあ、職員室の隣の補修室ですれば?そこだったら先生もいると思うし」
「先生は必要なのか?」
「というか、キャリーの変形とかバリアとかは普通に先生とか審判とかが持っている白のペンダントがないとできないよ」
そうだったのか。なら、土曜日行った意味って無くない?
「初耳だよ」
「というか、生徒手帳に書いてあるよ。でも、輝樹君あんまりそういうの読まなさそうだし」
「全く読んだことがない。っていうか、あったんだ。生徒手帳」
「そこからなの!その発言には顔だけでは表せないよ」
「別に顔じゃなくても……。でも、面白いね。美咲」
「ふふ。ありがとう」
この会話の間、クラス中から物凄く嫉妬というか殺される気配がした。そんなただしゃべっているだけなのに。それに、長田に至っては赤い顔のまま俺を睨みつける。こわっ。
放課後になる。俺は、長田と美咲を連れて補修室に入る。補修室というと悪いイメージしかないが真言高校の補修室はトレーニングルームのような部屋でキャリーでの基礎基本から戦闘形式まで行っている。 ざっと見ると、10人ぐらいだな。
「さてと。どれからしようかなって、まずは基礎からだよな」
俺は、長田に話しかける。どうせこいつのことだから、戦闘形式というと思っていたが
「じゃあ、早速やろう」
俺は硬直したように止まった。
「お前、正気か?」
「だから、人を異常扱いするのは良くないよ」
「わ、悪い」
「分かったなら今度からやめてよ」
「ああ。じゃあ、早速だが脳の回転について考えよう」
俺と、長田と、美咲は1週間補修室に通った。勿論理由は長田のキャリーの使い方を根本的に鍛えるためである。だが、俺もキャリーの使い方はこの前の試合でしか経験したことがないので、なぜか美咲が俺と長田を教えることとなった。
美咲に教えてもらうばっかりは悪いので俺も脳についてはしっかり教えた。
そして、今日は金曜日の昼食後。俺たちは2vs2に出るのである。
「よし、長田。今日は4日間の特訓の成果をみんなに見せようじゃないか」
「そうだね」
「でも、俺たちがどこまでいけるか分からないけどイケるところまで2人協力していこう」
「私も佐藤の力ばっかりじゃなくて、すこしづつ戦闘してみる」
「分かった。でも、危なくなったら呼べよ。いつでも助けてやるから」
赤くなる長田。
「助けは呼ばないからね」
「ふふふ。いつまでその強気が保てるかな?」
「絶対に呼ばないから」
「そうだ。お前に言わないといけないことがあったんだ。けど、それは2回戦勝ってから言うよ」
「今言ってよ」
と、若干上目づかいで見てくる。うわぁ。長田は可愛いのにさらに上目遣いされたら堪らないが、ここは我慢。理性を保て。
「我慢しろ」
そういった直後、
「バカップルか。見ていてイラッってくるな」
「何が『我慢しろ』だ。気持ワル」
「マジで、お母さんに朝7時に起こしてっていったのに起きたのは8時でお母さんを攻める奴ぐらいうざいな」
この学校どんだけカップル嫌い多いんだよ。しかも、俺たちカップルじゃないし。
腕時計を見ると、そろそろ時間だ。
「じゃあ、行くとするか」
「うん」
1回戦の相手はどうやら1年生と1年生のタッグだ。
「試合開始」
審判の声で試合が始まる。2vs2は時間が無制限だが早めに相手を全滅させないとブラッドがなくなるので長田を思うと短期決戦が好ましい。俺は相手がバリアを張ったのを見て
「今だ」
といい、同時にバリアを張る。長田のほうは心配ないな。そして、キャリーを変形させる。
俺は、wing of metalで、背中に金属の羽を生やす。長田はどうやら、巻物のようなものに変形させる。でも、なんで巻物なんだ?
相手は、明らかに俺を恐れている。どうやら、先週の試合を見ていたようだった。それに、瞬間移動も知っているようだな。これぐらいの相手なら俺は余裕だが、長田の巻物が何なのか分からない。ここで、作戦会議をする。
「その巻物はなんだ?」
そういうと、シュルルという効果音とともに巻物が開かれる。何か字が書いてあるな。でも、全く読めない。異世界の字か?
「長田はこれ読めるか?」
「何てかいてあるか分からないよ」
「そうか。じゃあ、とりあえず瞬間移動と急所眼力で男のほうをやってくるからやばかったら呼べよ」
「だから、助けは呼ばないって」
異能力は心の中で強く思えば思うほど効果はあるらしい。でも、その分ブラッドは消費する。
俺は心の中で、強く思う。そして、シュッ。気がつくと俺は移動していて、オーラが見えるような状態になり、男の赤いところに向かって音速で体当たりする。……すると、男はぶっ飛ぶ。
だが、飛んだ先が長田のほうだった。これは、ヤバい。音速で行くか?それより、瞬間移動のほうがいいか?そんなこと迷っていたら本当に間に合わない。これは後で謝らないと。
そして……。長田と男はぶつかる。はずだったが、どうやら、男だけが倒れている。これはどうしたことか。
俺は、音速で長田の元に行き様子を見ると本当に無傷だった。だが、一応怪我をしていないか聞く。
「大丈夫か?」
「全然平気。でも、こっちに飛ばさないでよ」
「ああ、すまなかった。でも、どうやって?」
「それが、私にもわからないの。気がついたら男の人が倒れているし」
すると、長田の巻物の字が読めるようになっている。どうしてだ? だが、それより、巻物に何が書いてあるんだ? なになに……この巻物は無限召喚という超能力です。思ったもの何でも何回でも取りだすことができます。しかし、螺旋〇などの現実に存在しないものは不可です。
超能力とは異能力の上をいく能力であり、巻物には5種類あります。それぞれ違う能力ですがどれも天から認められし人しか持つことはできません。
この巻物の文章は時としてアドバイスになるでしょう。
そして、5つの巻物がそろい5つの巻物を読めるものが集いし時、世界に革命が起こるでしょう。…………………読んでおいてあれだけど、規模でか過ぎるだろこれ。世界? 天? どんだけ凄いんだよ。しかも、今は戦闘中。とりあえず相手を倒そう。
3分後……。
「勝者、佐藤輝樹と長田千佳」
あっさりと倒したが、これは問題が山のようにある。とりあえず、長田に話しておかなければ。
「お前の巻物の正体がわかった―――」
さらに5分後……。
「じゃあ、私は天から認められた人でこの巻物を授かった。この巻物の超能力は無限召喚で思ったものを出すことができる。巻物は5種類あって5人が持っている。そして、巻物を読める人と巻物の所有者が集まったら世界に革命が起こるってこと?」
「まあ、そう書いてあった」
「じゃあ、私は男が飛んできたとき守ることを強く思っていたから盾か何かで守っていたわけね」
どうやら、超能力とやらも異能力と同じで思う強弱で威力が変わるらしい。
「そうらしい」
「今更なツッコミだけど、規模でかすぎるよ。天とか世界とか」
「俺も思った。でだ、この話を会議に持っていく?」
「多分そうした方がいいと思う」
「じゃあ、この大会が終わってからいいに行こう」
俺はなぜ長田に2回戦で大切なことを言おうと思ったのかは、対戦相手がまさかの俺と同じ10位と12位のXランクタッグであり、その10位が俺たちの恩師であろう東森美咲で、12位がクラスで阿呆だと思っていた雨端海翔の2人だったからだ……。