第4話 音速って、秒速340mより、秒速322mのほうがただしいらしいよ。(正しいかわかりません)
キャリーを使う人にはランクが与えられる。ランクは高ければ高いほど強いということとなっている。
高い順に、A→B→Cという順になる。だが、俺が施設の時に全国の中学生が受けたテストなどで高い評価を得た人は例外とし、Aランクより上のXランクが与えられる。Xランクは学校内で12人ほどいる。 Xランクの人は学園から学力が高く、ブラッドの質・量が良く、そして強いと認められるとなることができる。
Xランクの長所は特別に異能力がキャリーに付く。好きな時に、キャリー付属の異能力ボタンを押せば発生する。
だが、良いことばかりではなく異能力を使うと大幅にブラッドをキャリーに奪われる。
その異能力は人によって違う性質である。ただし、Xランクでも順位があり、12位の人と1位の人では異能力の差は天と地の差もある。
俺のランクはスカウトされたこともあり、Xランクということになっている。順位は10位である。
俺は、1年生で10位ということもあり、学園から注目となっているはずだが本人が嫌なら別にXランクと言わずに生活できる。だが、異能力を使うとばれる為、Xランクの人はあまり使わないらしい。俺もあまり目立ちたくないので異能力はやばい時にしか使わないようにするつもりである。
なぜこんな話をしたかというと、これはやばい状況なのか判断できないため一応整理をしようと思ったからだ。
話は1vs1の1回戦。俺の相手は、長田千佳というお嬢様であり、お嬢様というからには頭いいんだろうな。舐めてはかからないようにしよう。
俺と長田千佳の間に審判がいて、試合の開始を今にもしそうで俺は興奮している気持ちを割と押さえつけ初勝負はいい勝負にしたいと思っている。
「試合開始」
審判が俺たちに声をかけ、俺はキャリーでバリアを張る。さっそく授業中に考えた作戦を使うつもりだった。だが、長田千佳のまわりにバリアが張っていない。どういうことだ?
バリアは審判の合図から2分以内に張らなければならないがもう1分30秒は超えている。
5,4,3,2,1……0。
「勝者、佐藤輝樹」
なんで、こいつはバリアを張らなかったんだ?
試合後、俺は長田千佳にバリアのことを聞いた。
「なあ、長田。なんでお前バリア張らなかったんだ?」
すると、またスルーらしく、
「聞いてるのか?」
今度は反応あったらしく、
「え? ごめん。聞いてなかった」
どうやら悩みでもあったらしい。初対面の奴をいきなり怒鳴るくせに。
「何かあったのか?」
「私はバリアが張りたかった。でも、張れなかった。なんでだと思う?」
「う~ん。ブラッドの質が良くないとか?」
「そう。そして私はDランクなの」
そうか、Dランクか。すっかり忘れていた。
学校側がランクを生徒につける際に、ブラッドの質・量や学力が悪い人にはCランクをつける。だが、それより悪いやつもいる。
そういう奴は、DランクというCランクより下のランクが与えられる。勿論異能力もなく、キャリーの機能を扱えない奴もいる。こういった人はバリアや、攻撃用に変換することができない。
だから、普通はMGCには出ないのに……。やっぱり悩みがあるんだろうか?
「そうか、Dランクか……。でも、なんでMGCなんかにでたんだ?失礼だが恥かくだけだったんじゃないか?」
「そうね。でも、私は才能があることを証明したかった。ブラッドは、頭の回転力とかが元になっている。私にはそういった素質がなかなか無かった。でも、心のどこかであると決め込んでいた。それを証明するために今日、MGCにでたの」
うんうん。と俺はうなずく。
「そしたら、初戦の相手が佐藤って聞いて相手が知り合いでよかった。って思っていたけど、あんたが言っている通り、ただ恥をかいただけで何も得るものは無かった。むしろ、絶望しか残ってない。こんなことになるんなら、やめておけば良かった」
俺は思う。俺はXランクであり、Dランクではない。だが、Dランクだから、恥をかいた。っていうのは違う気がする。ランク以前に俺たちは人だ。恥をかいて当たり前じゃないのか?ここまで考え、俺は長田千佳にランクとしてではなく、人として話す。
「恥かいて絶望?はっ。笑わせるな。人っていうのは失敗を繰り返して、繰り返して、何度も失敗してから大きく成長するんじゃないのか?なのに、お前は成長もしてないのにそこで挫折か。
俺もお前も高1で、お前はただDランクってだけだろ?それをお前はDランクっていう言い訳で才能がないことを認めようとしてたんじゃないのか?
だが、お前はMGCにでて、確かめようとする大きな勇気があった。その頑張りは誇れることだと思うし、誰でもできるわけではない。
けどな、お前の頑張りをバカにする奴が出てくるかもしれない。その時は、俺はXランクではなく喧嘩でお前を守ってやる」
……やってしまった。Xランクのことは秘密のつもりだったのに。しかし、長田の顔が赤い。そんなにXランクが珍しいか?まあ、珍しいよな。だが、昼食のミスを生かしてここは、
「長田。もしかして、照れてる?」
「うわっ。バカ。違う」
必死に抵抗するが顔はまだ赤いままだ。
「でも、生まれて初めて守るって言われたから照れているのかな?」
「さあな。でも、ちょっとはすっきりしたか?」
「うん。おかげさまで」
「そう。よかった」
「ちょっとそこのベンチで座ろうか」
「あ、ああ」
長田の驚愕内容暴露から早20分。長田はずっとなにか言いたそうだったけど、まあこの空気だしな。そういえば、さっきの俺の「お前を守ってやる」って告白みたいに聞こえないか?やってもうた。
ああ。天国ってなんだっけ?俺があれこれ考えていると、長田に話しかけられる。
「ちょっと。大丈夫?」
「ああ、肉体は普通だが精神はブエノスアイレス」
「本当に大丈夫?」
「因みに、日本の反対側の国はブエノスアイレスだよ」
「要するに、精神は普通の反対の異常ということ?」
「そう」
今の会話で、意識を取り戻した俺に、
「話があるんだけど」
といわれる。
「いいけど。なに?」
この展開だと告白しかないだろ。俺は分かっていながらとぼける。
「さっき、『俺が守ってやる』って言ってくれたよね」
「う、うん」
俺の好みだけど、まだ付き合うって感覚じゃないからな。ここははぐらかしてなかったことにしよう。
「それって、2vs2の時のタッグを組んでってこと?」
……what happened? 告白じゃなく、しかも俺がやっちゃたみたいな感じになってるし。しかし、俺は2vs2のペアがまだ決まってなかったのでこれを理由にペアだけ作って、戦闘は俺だけすればいいか。といつもの回転力を使い、
「ああ。他にどういうとらえ方があるんだよ?」
「え、ええ?ほんとに言ってるの?」
「ああ」
「でも、2vs2のペアってほとんどがカッ……プルって聞くし」
「もう一回言ってくれ。後半は全然聞こえなかった」
「だから、要するに私と付き合うってこと?」
は? だから、なんでそうなるんだ? しかも、大声出しやがって。周りの人たちが驚いてるし。2重の意味で。
それ以上いくと、恥ずかしいので話を戻す。
「俺は、2vs2が出たい。そして、(ピンポーン放送です)お前(2回戦のトーナメントが決まりました)目当てだ」
途中で放送が入りやがった。俺は「俺は2vs2が出たい。そして、賞金目当てだ。お前は何が目当てだ」と言いたかったが、ちゃんと伝わったか?
答えは……こいつの顔が赤くなっているので失敗だ。まあ、放送がなくても金好きのような文だったしもうこの際どっちでもいいや。
ピロリ。キャリーのメール機能で大会からトーナメント表が届く。俺はどこだろう。あ、あった。って、もうすぐじゃねーか。もう会場に行こう。
「俺、今から2回戦だからちょっと離れるわ」
「あ、う、うん」
「そうだ。ペア組むんだったら携帯番号とメールアドレス交換しないとな」
と言いながら、キャリーの赤外線通信で情報交換する。どうやら、長田は携帯機能はつかえるらしい。
「じゃ。」
俺は会場に向かう。
会場には時間内に着けた。相手はメールでみたが2年生であるので、異能力を使うことも考えないと。
「試合開始」
審判の声が響く。俺はバリアを張る。相手は……ちゃんと張っているな。どうも確認してしまう。相手はキャリーを変形させた。どうやら、剣のようだ。一応先輩なので手加減なしでやる。
俺もキャリーを変形させる。光が体を包む。やがてその光は消える。その瞬間に俺はジャンプする。
光が完全に消えたその時、観客・審判・対戦相手・そして俺。この会場のほとんどが驚いていた。俺もできるとは思わなかったからだ。
俺が変形させたものはWing of metal。すなわち、金属の翼。金属の翼で飛ぶことができないと思っていたけど、羽をバサバサと前後左右に動かすだけで飛べる。これはもう、チートだよな。自分で言うのもあれだけど……。
俺は頭の回転が非常に速い。俺のブラッドもその素質らしくどうやら移動スピードに変換されて、えげつないスピードが出る。実に、音速ぐらいだ。音速で金属の翼をぶつけたら頑丈なバリアでも、一瞬で破壊だった。相手はバリアが破られ、戦闘不能。よって、俺の勝ちとなった。
3回戦、4回戦と順調に勝ち進み、遂に準決勝。wing of metalにより次々と倒す。準決勝はAランクの人であったが、てこずることなく確実に決勝に。
そして、決勝戦。会場はたくさんの人がいる。だが、もう時間は放課後なので帰っている人もいる。
俺も早く帰りたかったが、決勝戦はきついかもしれない。なぜなら、相手はXランクであり、8位の
八賀克太だったからだ……。