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大富豪の手札  作者: 超常毎日
5つの巻物とそれを読めるもの
15/16

第14話 記憶再生

 試合が終わったのでただいま控え室に桜花と2人でいる。


 謎の相手のフードをめくると、そこには桜花がいたのだ。


「……ああ……」

 何かしゃべらなきゃいけないのにこういう時に限ってのどがカラカラになり、変な汗も出てくる。人間焦るとろくなことにならないなぁ。

 と、冷静に自己分析してる場合ではないよな。桜花も俺と同じような感じだし、ここは俺のほうから話かけるか。

 フゥー、とワザとらしく深呼吸をし、いざ話しかける。

「なあ――」

「ねえ――」

 …………。

 うん。こんなありきたりな展開をしてフラグ立てるのもあれなので、次はちゃんと話しかける。

「桜花。…………久しぶりだな」

 俺のバカーーー!! せめて、マシな会話にしろよ!!

「う、うん。そうだね……」

 さて、まともに会話が出来ないのはなぜだろう。答え? そんなの決まってる。好きな人と二人きりなんだぞ。緊張しないやつがいたら俺のところに来い。そいつのために俺がヘブンス・ゲートを開いてやる。

 いきなり、本題にはいるのは多分まずいのでとりあえずコミュニケーションを取り直す。

「桜花?」

「ん? 何?」

 マズイ。かなり開き直ってきてないか? ここで、もし俺が「好きな果物なに?」レベルのことを口走ったらそれこそ死亡フラグが立つわけだし……。しかし、特に聞くこともないし。

 でも、あまり時間を取らせたくなかったのですぐに返事をした。

「お、桜花の好きな……都道府県ってどこ?」

「「へ?」」

 いやいや。自分で言っておきながらなんだが、この発言には驚いた。今すぐ吐血したくなってきた。

 しかし、俺の目の前にいる女神――じゃなく、桜花はクスクスと笑っていた。

「フフッ。やっぱり変わらないわね、あなた」

「そうか? 結構成長したんだけどな……多分」

「うん。私の保障付きだから安心して」

 まあ、そこらの悪徳業者の勧誘並みに安心できないからスルーしとく。

「しかし、変わったといえば桜花の方が変わってると思う。特に……」

「特に……? なに?」

「言っても怒らないって誓うなら言うけど」

「誓うわ。アーメンでもしとこっか?」

「うん。地味にアーメンの使い方違うからやめといて。まあ、この際だから言うけど変わった点は――」

 といい、女性の……ふくらみの部分を見る。

 すると、桜花はその視線に気が付いたようで。もちろん俺はガードの構えを取っていたが襲われる気配は全くといってないのだ。

 あれ? と言って桜花のほうを見ると、顔を赤くしてなにやらモジモジしている。もしかして、俺、地雷踏んじゃった?

 まあ、後の祭りという言葉はまさに今の俺のために存在しているかのようだった。

「チョイ待って!! 桜花さん、誤解してます。俺は、変態じゃないですよ」

「じゃ、じゃあもしかして『変体』のほう?」

 こいつめ……。からかってやがる。

「でも、良かった。まだ、私に気があるみたいで。もう、長田さんと出来ちゃってるのかと思ってた……。あ!!」

 なにやら聞いてはいけないことを聞いてしまった気がするのだが。まあ、これでおあいこということで。

 でも、先ほど一度やられているので、1回だけ反撃しよう。

「え? 『私に』の次、何て言ったんだ?」

 桜花は、唇をかみ締める。おいおい。そこまで屈辱なのか、俺に攻められるのが。

「……」

 桜花は石化したかのように動かない。それほど、聞かれたくなかった内容らしい。

「あの、桜花さん? 言いたくなければ言わなくてもいい――――」

「『私に』の後は『挑戦する勇気と、行動する力があるみたいで』って言ったのよっ!!」

 無理やり改造しやがったぞ、自分の言ったことを。

「ふーん。了解でーす」

「なにその、先輩に片付けを任された後輩みたいな態度」

 ハハハと、どちらともなく笑い出した。それは、3年ぶりの会話で重圧が消えたからだったからかもしれない。


「さて、そろそろ本題に入ってもいいかしら?」

 ここからは、マジの話っぽいのでそれなりの態度をする。

 それを、肯定と見たようで桜花は話を続ける。

「私が、あなたのところに戻ってきたのは何もずっとではないの。もうすぐしたらいかなきゃいけないの」

「そ、それは…………」

 やめてくれ!! とは、言えなかった。なにより、俺がわがままを言う資格なんてない。

 言葉を途中で詰まらせたのだが、桜花はその先を悟ったらしく首を横に振る。

「ごめんなさいね、あなたに気をつかわさせるなんて……」

 そして一拍置き、

「それで、私のことを少し話してから本題に入ろうと思うの」

 俺は、3年前に聞き忘れたことをいま聞くことになる。

「私は、あなたと同じで親に捨てられた子だったの。それで、私の行く当てがなく病院が困っているところにあなたの――私の今のBOSSに拾われたの。BOSSは、優しくかっこよく、まるで正義の味方のようだったの。でも、私はその正義の味方によって今までの生活を180度変えることになったの。

 それはね、そこはマフィア関連の場所だったからなの。私は、調査隊として6歳から9歳まで訓練された。おかげで、射撃の腕は日本ランクにのるぐらいになったんだけどね。

 それで、9歳の春。私はあなたがいる施設に送り込まれた。あなたの観察者としてね」

 展開が速い。それだけ時間がないのだろうか。

「そこでの3年間はあなたが知ってる通り。時々、キャリーを使って連絡していたと思うけど思い出せる?」 

「うん。鮮明にね」

「そして、あなたの記憶を消してからの3年間は本当に苦痛で仕方がなかったの。本当にこれでよかったのか、とか常に思ったりして。でも、あなたの姿を遠距離カメラで見ていたら楽しそうに過ごしていたからこれでいいんだ。って自分に言い聞かせてきたの。

 そして、今日。訳ありでここにきたの」

「その前に、1ついいか?」

「うん。なんなりと」

「お前は、俺の記憶を消したといってるが、じゃあなんで俺はお前のこと覚えてるんだ?」

「あ。説明し忘れた。それは、2週間前から少しづつやってる『記憶再生(メモリー・リボーン)』ってやつのせい。『記憶麻酔(ロストメモリー)』は着弾すぐに効果がかかるんだけど、『記憶再生』は2週間で完全に思い出すの。いきなり思い出させると、脳の負担が半端じゃないらしいからね」

 そんなものいつ打ち込まれたかなんてまったく覚えていない。

「でも、それは一時的なものなの……」

「じゃあ、桜花を思い出せているのは今だけってこと?」

「うん。厳密にはあと、30分ぐらいなんだけど……」

 チクショウ!! 俺はなんて無力なんだ。桜花のために何一つすることが出来ない。

「わかった。腹をくくろう。手短に用件を話してくれ」

「ええ。私のBOSSからの伝言なんだけど、『これからがつらい時期だと思うがまあ、頑張りたまえ。あと、このメモリーの使い方に関しては藍神のほうから教えてもらえ』だって。で、これがメモリー」

 ん? これってたしか……。

「草薙の剣とかなんとかのやつだっけ? あれ? でも、それって俺が持ってたんじゃなかったっけ?」

「そうなんだけど、あなたと別れたときに一応私が保管してたの」

「まあ、それで? 使い方とかあるっぽいけど」

「キャリー出して、今使ってるメモステを貸して」

 俺は、言われたとおりのことをする。すると、桜花が草薙の剣のメモリー媒体と俺のメモステを合成っぽいことをしている。


 かれこれ5分。

「出来た!!」という声をあげながらキャリーに今のメモリーをセットする。

「で? 俺は何すればいいの?」

「んー、実戦は無理だから起動だけでもやっとかなきゃ。とりあえず、いつもどおりキャリーを武器に変えてみて」

「わかった」

 wing of metalを創造する。しかし、出来たものは……、

「なんだこれ?」

 全長1,6mぐらいある普通の剣だった。いや、普通ではないのだが。

「いや、待て。確か武器変えは学期に1回のはずだぞ。まだ5月後半なのにどういうことだ」

「それは、この学校がwing of metalを好きじゃないかららしいよ」

 答えになってねぇ、とか言ってる暇はねぇ。

「それもあるけど、やっぱりメモステの合成によるものが大きいでしょうね」

「で、俺はこれからこの剣で試合に出るんだな。了解っと」

「まあ、いろいろ機能があるっぽいから試しといてね」

 ちょっと待て。頭痛がしてきた。これは、記憶が消されているのか?

「ゴメン。もう時間っぽい……。最後に私から言う……があるの」

 ああ、ノイズが走ってきた。これは、本当にやばいかも。

「私は、多分あなたの……きかも……も、これだ…………せて」

 桜花は、俺の唇と自分のそれを重ね、すぐに離した。 

 桜花の最後の言葉は、ノイズが走っていても聞こえる定番句だった。


「ごめんね、輝樹」


 その声を聞きながら、初夏の訪れを感じる暖かな風とともに、俺の意識は深い深い闇のなかに潜っていくのだった……。

ゴメンナサイ!! 少し用事があり更新が遅れました。そして、最後のほうが雑にしてしまったこともですね。

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