第10話 lost memory 1
2vs2は3回戦敗退と言う結果だった。千佳との反省も含め、お互い次は1vs1で修業しよう、という結論になった。
そして、今日は1vs1の日。俺は順調に決勝戦まで行く。千佳はまあまあの戦績だったらしい。
俺は、決勝戦を待つため、個室にいた。
そして、ふと思う。最近は特に。あの人もこの事件に関係しているのではないのかと……。
「輝樹。ごめんね」
それは、俺が施設に入ってきて約8年後ぐらいだった。
「宜しくお願いします」
パチパチ。と俺の周りで拍手が起こるのでつられて拍手をする。
「じゃあ……輝樹君。あなたはこの子と一緒にいること。部屋も一緒ね。勿論ベッドは別々」
先生が俺を指名する。当時は、小学校3年生程度だったのでなんで俺が。って思ったが、彼女の容姿を見てその気は一瞬で変わった。
「か、可愛い……」
その姿は、小学校3年生程度でも分かるぐらい可愛かった。ショートカットの黒髪にパッチリしている大きめの目。整った顔。すべて可愛かった。
「先生。輝樹がやらないなら僕がやりまーす」
「あなたは、ちゃんと他の子がいるでしょ」
「えー」
「文句言わない」
こんなに可愛い子と部屋が一緒だなんて嬉しすぎる。先生ありがとう。
「先生。俺がやります」
「輝樹君、良く言いました。では、仲良くやってね」
「はい」
それが、俺と桜花の出会いだった。
「今日から俺と君の部屋になるけど、散らかったままだった……。今かたずけするから待ってて」
「私も手伝うよ?」
「いいよ。全部俺のだし」
「でも、2人でやった方が早いよ?」
「うーむ」
「ね?」
「分かった。じゃあそっちのほう頼むよ」
「うん」
初めての会話がこれだった。このころから施設で掃除は習っていたから一応できる。
「そう言えば名前聞いてなかったね。俺は佐藤輝樹。君は?」
「私は、藍神桜花。よろしくね」
「ああ、こちらこそ。でも、同じ部屋なら、あだ名考えないとなぁ。俺は輝樹でいいけど」
「じゃあ、私も桜花でいいよ。よろしくね。輝樹」
「こちらこそ。桜花」
「でも、男女部屋って先生も珍しいことしたなぁ」
「他の子たちも私たちみたいに男女じゃないの?」
「あ、うん。他は、男と男・女と女だけど……」
「いやぁーーーー」
「なんで?このタイミングで叫ぶ意味が分からないよ」
当時、男女が同じ部屋ということが何も分かっていなかった。
桜花が落ち着きを取り戻し、掃除も順調に終わってきた。
「桜花、そっちはどう?」
「うん。まあまあってところ」
「でも、今その箪笥の上から段ボールが落ちそうだけど……」
「へ?きゃぁーーーーーーーー」
「よいしょっと」
俺は桜花に襲いかかってきた段ボールからの攻撃を受け止める。
「あ、ありがとう」
「平気。平気。平……き。へい……器。兵……器。兵器。兵器」
思ったより重たかったので兵器で段ボールをどうにかしたかったけど、桜花からこいつ大丈夫か?という目線が当たる。助けてやったのに……。
「私はこの人と一緒の部屋で大丈夫なのかな。先がとても不安になってきたわ……」
今のはスルーしよう。精神的に立ち直れなくなるので。
「でも、助けてくれた時の輝樹。カッコ良かったよ」
「て、照れるなあ」
「褒め言葉じゃありません」
「じゃあ、なんだったの?」
「の、の、罵った(ののしった)」
「助けた意味は?」
「破壊の世へ」
「変なこと言わないで」
「で、death god」
「よくよく考えると、death godって死神?」
「未知なる世界へ」
気づいた人もいると思うけど、しりとりになっています。
「まあ、冗談はおいて本当にカッコよかったよ」
「あ、ありがとう」
ゴーンゴーン。6時を告げる鐘の音だ。やっと晩御飯か。さて、いっぱい食べるとするか。
「桜花。この鐘は6時を教えてくれるんだよ」
「6時って何があるの?」
「晩御飯だよ。みんなで食べるんだ」
「みんなで……なの?」
「あ……みんなで食べるの嫌なの?」
「その逆。みんなで食べたいよ」
「じゃあ、行こっか」
「うん」
桜花との出会いの日は終わりを迎えていた。11時30分を回っていて、もう日付は変わるころだった。 勉強をやめて寝ようとしていたところ、桜花が話しかける。
「今日はありがとう。絶対にこんなに親しい友達ができるとは思ってなかった」
「俺だってこんなかわいい子と暮らせるなんて幸せだよ」
「それでね、輝樹」
「なに?」
「私たち、部屋一緒なのにベッドが別々なのはどうかと思うから、一緒のベッドで寝ない?」
ドキリ。心臓の鼓動が高速になる。完全に俺は桜花に惚れてしまったらしい。仕草や、目の位置などきになってしょうがない。しかも、惚れた子が一緒のベッドで寝よう。と言っている。こんなこと二度とないチャンスだ。
「でも、いいの?まだ、あって1日しか経ってない男と」
「輝樹はそういうことしない人ってことが今日で分かったから。それに、一人だと恐いし……」
!反則だ。前半は鈍感ってことだからスルーして、後半は頼りにされているってことに違いない。もう幸せだぁ。
「分かった。でも、桜花が寝るまで俺も寝ない。それに、やましいこともない」
「やっぱり優しい」
「ちげーよ。お前の為じゃねーよ」
俺ってツンデレキャラではなかったはずだが……。
「ふふふ。面白いね輝樹は」
「お前のために面白くしてるんじゃないからね」
なんで、ツンデレしなくちゃならないんだよ……。
コーンコーン。これは12時を告げる鐘の音だ。
「さて、桜花。そろそろ寝よう」
「うん。輝樹」
2人で1つのベッドに入る。…………会話がない。めっちゃ静かだ。これはまずい。なにか話題……話題…………!そうだ。
「桜花って他の子より胸大きいよね」
何度も言う。当時は小学校3年生だった……。小学生の好きな女の子に意地悪するみたいなやつ?あれで良い感じのところまで行こうと思っていた。でも、帰ってきたのは……
「やはり、もう少し様子見てからのほうが良かったかもしれないわ……」
と、冷たい言葉。泣きたいです。
「でも、輝樹は何か分けあってこんな変態言葉を喋ったのよね?」
「そこを突かれると痛い……」
「まあ、隠し事を探るのはあまりいい気分ではないからやめるわ」
「ありがとう。じゃあ、桜花が同じような状況になった時、1回だけ探らないことを誓うよ」
「1回かぁ……」
「なんなら2回でもいいけど」
「いや、お互い1回ずつだから別にいいわ」
「そう……」
「さあ、そろそろ寝ましょう。もう夜遅いし」
「そうだね」
そうやって、俺は眠りに落ちていった。
その日は3時に目が覚めた。誰かが話している声で。誰だろう……。まだ眠いけど、一応確認する必要はある。
「だから、ボス。継承者は輝樹で良いと思います。え?でも…………分かりました。では、3年見極めるということで。報告は――――――――――」
「おはよう。桜花。速いね起きるの」
「!―――すいませんボス。切ります」
「あ、電話中だった?ごめん。気づかなくて」
「いいけど、輝樹こそ速いわね」
「いつもはもっと遅いよ。けど、なんで携帯電話持ってるの?」
「!こ、これは携帯電話じゃなくて……新しい武器と言うかバリアというか」
「?良く分からないや。まあ、もう一睡するよ」
「うん。おやすみ」
俺と桜花との出会いは幸せで始まるが、これからの生活はやはり幸せばかりではなかった……。
本編から少し離れ、回想編で回想をしています。何とも分かりにくい設定でございますが、ここでこの話の中間地点というかなんというか……
あと、この小説に対する感想是非ください。お願いします。