第9話 美しい友情とはどんな色より輝いて見える。
前にも説明したが、この学校の会議メンバーは特殊である。日本各地の優れた人を選びぬき、時にPTAとなり時に治安維持法となる。だから、会議メンバーが別にⅡxランクの人がいてもおかしくはない。だが、世界に10人のはずのⅡxランクの人がこの会議室に2人もいることにはびっくりした。
まあ、その内の1人は俺だけど。
「お父さんはⅡxランクだったんですか……」
「まあな。黙っていて悪かった」
「いえ、別に言わないといけないことではないのですから」
「そう言ってくれるとありがたい」
「このことは長田に言ったんですか?」
「いいや、あの子には何も言っていない。そして、俺からのお願いだ。このことは千佳には内緒にしておいてくれないか?」
「まあ、お父さんが言うならいいですよ」
「ありがとう」
「これからも巻物関連でお世話になると思うのでお互い様ですよ」
「そうだな」
おっと、そろそろ大会会場に戻らなければ。
「じゃあ、俺はそろそろ大会の時間なのでこれで」
「その前に一応アドレス交換をしよう」
「あ、はい」
…………ピロリ。交換が成功した。
「じゃあ、さようなら」
「ああ、またな」
この時ぐらいからやっぱり異変は起こっていたのだろう。
俺はあるゆる攻撃が四方八方から飛んできてそれを避けるのに必死になり一度回想を終了し冒頭に戻る。
やはり、ここは地獄だ。俺だけの力ではどうにもならないがどうにかしてこの地獄から出たい。でも、どうやって?
ここはもはや戦場だ。しかも、ただの闘いではない。どうしちゃったんだよ2人とも―――――
戦いは先ほどよりマシになったので、続きの回想をしよう。この戦いを止めるヒントがあったかもしれない。待っていろよ。2人とも。
「試合開始」
美咲・海翔タッグとの試合が始まった。
その時、俺は美咲に試合前に言われたことを思い出していた。
俺は美咲に体育館で待っていてと言われていた。なので、待っていると
「ごめん。待った?」
「なんの用件だ?」
「次の試合私と海翔君のペアと戦うのは知っているよね」
「ああ、大会のほうからメールが来たからな。でも、美咲と海翔が付き合っているとは知らなかった」
「こっちはお互いの目的が似ているから組んでいるだけ。私だってまさかあなたたちと当たるとは思ってなかった」
「思ってはいるだろ」
「……」
「俺を倒したいなら1vs1でいい。でも、俺は1vs1で優勝したから1週間出られない。俺を倒したいなら来週の1vs1で倒せばいい。
だが、美咲はキャリーの使い方がうまいが、所詮俺らと同じ1年生。例えうまく使えても実戦ではできるとは思わない。だから、今週は1vs1に出て試すべきだ。普通は。
だけどお前のその考えは月曜日の朝で消えた。なぜなら、俺は長田と組んでいるって言った後、お前は、『輝樹君知っていると思うけど、千佳はDランクよ。輝樹君のXランクとは釣り合わないんじゃないの?』と言った。
俺とのパートナーだったらレベル高い人だと思っていたお前は、長田がパートナーということを知りチャンスだと思ったお前は急遽2vs2で倒すという作戦を立てた。そして、トーナメントに細工をして
俺たちとお前たちが当たるようにした」
一拍置いて美咲の様子を確認する。
「……」
どうやら図星か?
「俺は美咲たちの目的は俺を倒すことだと思っているけど、どんな目的なんだ?」
ここでやっと口を開く。
「まあ、海翔君はそんなこと言っていたけど私は違う。もっと重大なこと」
「その重大なことって?」
「それは――――」
「輝樹。とりあえず、今は嫉妬+部位破壊=怒り状態だから気をつけろよ」
海翔が何か言っている。部位破壊ってモンハ〇?破壊していないが、するなら思い切り顔にバリスタを打ちたい。
「はいはい」
俺は哀れな目で会話するが、今は戦闘中。遊んでいる場合じゃない。
バリアを張り、wing of metalに変形。とりあえず状況確認。
敵1 雨端海翔 12位のXランク。キャリー変形時は両手に鉄の手袋をはめている。どうやら手袋をはめた指は動かしたりできるらしい。異能力は不明。
敵2 東森美咲 俺と同じ10位のXランク。キャリー変形時は大きな金属箱だ。とても持てそうにはないが……。異能力は不明。
味方 長田千佳 Dランクではあるが才能がないだけっぽい。キャリー変形時は巻物。無限召喚という超能力をこの巻物にはあるが、異能力でさえかなりのブラッドを使うのだからその上の超能力はとてつもなくブラッドを消耗するだろう。使うにしても3回が限度だろう。
フィールドはかなり大きい。障害物は所々に岩や木などがある。
簡単にまとめるとこんな感じか。
全員バリアも張りキャリー変形も終えている。だが、相手もこちらも攻めない。どうやらこの中で一番少ない長田のブラッドがなくなるまで攻めないということか。
待っていても自爆するだけなので、瞬間移動で一気に攻めるという作戦があったが、1人で2人はキツイ。なら、いくら大きい部屋とはいえ確実に角に追い込めば戦闘は開始される。なので、部屋の対角線に並んでいた俺たちはそのまま直進することにした。
「長田、このまま前に詰めるぞ」
「なんで?」
俺の考えを伝えると、
「分かった」
と言ってくれた。
しばらく詰めると距離は100mぐらいになった。ここからなら遠距離攻撃も届くだろうが俺たちは投げる武器は持っていない。巻物を使えばいくらでも遠距離武器など出るが、いざという時に使えななければ困るのでこのまま距離を詰め続ける。
そして、もう25m。俺は音速で攻めようと思ったが、長田ががら空きになるのでやめた。ならどうやって攻めるべきだ?
「輝樹。攻めてこいよ」
「輝樹君。勝負よ」
くそっ。挑発されて集中できない。相手の異能力も分からないし、美咲の金属箱もよく分からない。
なら、あの金属箱が危険そうな美咲を狙う。
俺は落ちてあった小石を2つ拾う。そして、急所眼力になる。
「佐藤。目の色が太陽のような色になったけど充血?」
と、長田に言われ初めて気づく。どうやら急所眼力になると太陽のような色になるらしい。これも、太陽のペンダントと共通しているのだろう。
「まあそんなところ。俺は今から美咲を倒してくるから海翔と戦うようになったら無限召喚は2回以上使うなよ」
「分かった」
その声を聞き、俺は美咲と海翔の赤いところを見つけ小石を投げる。
「こんなの簡単に避けれるよ」
「そうだね」
ひょいと避けられる。だが、こっちから見て右に美咲で左に海翔だったのでお互い避けるには美咲は左に海翔は右に避けないと2人で激突する。
それを予測した俺は海翔と離れた美咲に瞬間移動で後ろに回る。
「もらった」
俺は思い切り攻撃した。だが、同時にバリアに異変が起こる。上を見るとあの金属箱がのっかっていた。なぜ? だが、このままでは重力で押し潰されると思ったので一度瞬間移動で引くことにするが、状況は一転していて、海翔は長田に何かをしていた。
「何しているんだ?」
「俺の異能力、『操縦人形』で長田をとりあえず落ち着いてもらった」
「落ち着くって何を?」
「感情とか行動とか」
要するに、長田の動きが封じられたってことか。流石だ。美咲はわざと攻撃に当たったのか。
……。悔しいが、やられたな。
「で、美咲の金属箱の移動のなぞは?」
「あれは私の異能力、『物体移動』だよ」
「どういう能力だ?」
「まあ、輝樹君は瞬間移動でしょ?瞬間移動は自分しか移動できないけど、物体移動は私は移動できないけど物体は瞬間移動するっていう能力」
なるほど。同じ10位だから能力的に差が出たらまずいが同じなのも駄目なので対となる能力にしたのか。
「じゃあ、まず1人目」
といいながら美咲は動かない長田に物体移動で金属箱を上にセットし、落とす。
これは冗談なしでヤバい状況だ。俺が動かないと長田はやられるだろう。だが、俺が行ってあの金属箱を持てるとは限らないし、俺がつぶれる可能性は大だ。だが――――――――
「俺は、例え死んでも長田を守るって言ったんだぁぁぁぁ」
お父さんにそう言ったのは覚えている。なので、瞬間移動で移動しwing of metalで金属箱は宙に浮いた状態にすろ。俺は結構な力を出し切り踏ん張る。
「おぉ~」
「今のセリフはいいね」
「なかなか見どころがあるな。あいつ」
今のセリフに驚く必要はないはずなのになぜ観客は驚いているの?
ああ、このセリフだけだったら間違いなく驚くわな。
俺は金属箱を遠いところに投げてゆっくり大地に降りる。さて、どうするべきか。下手に動くと同じようなことになる。さらに、ダメージはこちらのほうが明らか多い。長田が起きたら勝算はあるのに。
こうなったら俺1人で2人を倒すしかない。これで万事休すか?
「降参します」
「俺も降参します」
……は?なぜに?
「勝者、佐藤・長田ペア」
「……」
「はああぁぁあぁああぁぁああ?」
「なんで?なんで降参したの?明らか戦局はそっちだったのに」
「目的を達成したからね」
!あの呼ばれた意味がそういうことだったのか。
「あれ?私たちかったの?」
起きた長田は周りの雰囲気を察したらしい。
「ああ、向こうが降参して」
「へえ~。あの美咲がか」
「そういえば、お前と美咲って仲いいのか?」
「勿論。1番の親友だもん」
ここで、納得した。美咲の今回の企みが。
「次は3回戦かぁ。あ、それより何か重要なことが2回戦勝ったらあるって言っていたけど?」
「そうだな。場所を変えよう」
ここは、誰もいない教室だ。ここでいいか。
「俺は、お前のお父さんに死んでもお前を守るっていった」
「それは知ってるけど」
「そこでだ。俺たちは2vs2のタッグだ。目的が違ってもタッグはタッグだ。なので、仲を良くするために今度からお互い名前で呼ばないか?」
「え?まあいいけど」
なんだそのそれだけ?みたいな雰囲気は。結構勇気出したんだぞ。
「じゃあ、俺のことは輝樹で」
「私はなんでもいいけど」
「じゃあ、千佳でいい?」
「いいけど」
「じゃあ、これからも戦いが続くと思うけどお互い頑張ろう。千佳」
「こちらこそ。輝樹」
「あ、そういえば巻物の神話とか言ったっけ?」
「聞いてないけど」
「昔―――――――」
「じゃあ、輝樹の目の色が変わったのは太陽のペンダントの力ってこと?」
「そういうこと」
「っていうか、せっかくのいいムードだったのに台無しになったじゃない」
「え?でも伝えないと――――」
「後ででも良かったじゃない」
やっぱり人って難しいと改めて思ったわ。
「俺は美咲たちの目的は俺を倒すことだと思っているけど、どんな目的なんだ?」
ここでやっと口を開く。
「まあ、海翔君はそんなこと言っていたけど私は違う。もっと重大なこと」
「その重大なことって?」
「それは――――」
「それは?」
「輝樹君は千佳を守れる器なのかってこと」
「器?」
「そう。それを今回の試合で試したくて」
「俺ってよく人から試されるなぁ~」
「そうなの?」
「まあな。でも、美咲と長田って仲いいのか?」
「勿論。だって1番の親友だもん」