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ひきだしのオルゴール 〜おばあちゃんの魔法と、旅立ちのメロディ〜

掲載日:2026/03/27

お母さんがお買い物に行ったので、おうちにはだれもいなくなりました。

花ちゃんは、宿題のノートをひろげたまま立ち上がって、おばあちゃんのお部屋にそっと入りました。

おばあちゃんのお部屋は、ちょっとだけ、おばあちゃんのにおいがします。


花ちゃんはトコトコと窓際に置いてある鏡台の前に向かって、カタンとひきだしを開けました。

ここには、おばあちゃんのオルゴールが入っているのです。

小さなオルゴールです。

カチリカチリとネジを巻いて、木の箱を開くと、かわいい音が流れはじめます。

おばあちゃんがまだ元気だったころに見せてくれてから、ずっと花ちゃんのお気に入りです。


おばあちゃんは、去年お星さまになりました。

お父さんが泣くのをはじめて見ました。

花ちゃんも、大好きなおばあちゃんに会えなくなるのが寂しくて、いっぱい泣きました。


それからというもの、花ちゃんは時々こうして、ないしょでおばあちゃんのオルゴールを聴きにくるようになったのです。

はじめのうち、オルゴールはいつも同じ音楽を奏でていました。

でも、そのうちーーー。


雨の日には、雨の歌。

楽しい日には、楽しい歌。

花ちゃんがちょっと寂しい日には、元気なマーチ。

しかられた日には、優しい歌。


箱を開く度に、色々な音楽が流れてくるようになりました。


花ちゃんが、好きなアニメの歌が聴きたいなぁとおねだりすると、その曲が流れます。

でも、同じところを何度もくりかえしたり、ちょっとまちがえたりします。



月日は経ち、花ちゃんは花さんになりました。


夜、花さんはおばあちゃんの部屋にふと入ってみました。

普段使っていない部屋なので、少しだけ、埃っぽい匂いがします。


花さんは鏡台の前に座って、ちょっと髪を直しながら、カタンと引き出しを開けました。

そこには、おばあちゃんのオルゴールが眠っていました。

花さんは、懐かしそうにオルゴールを手に取って、丁寧にカチリカチリとネジを巻きました。


そして、木の箱を開くと、幼い頃に聴いたかわいい音で優しいメロディが流れ始めました。

花さんは静かに耳を傾けていました。

徐々にメロディがゆっくりになって、リロリン、と音が止まりました。

花さんは、そっと箱を閉じて、オルゴールを引き出しにしまいました。


明日、花さんは家を出ます。

お嫁にいくのです。

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― 新着の感想 ―
花ちゃんが寂しくないように、たくさんの音楽を流していたオルゴールの箱。 おばあちゃんの気持ちがいっぱい入っていたんだろうなと思いました。 そして、最後のリロリンという音。 切ないけれど、どこか安心した…
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