君の微笑みに、秘密が咲いた。
春の午後。
窓から差し込む光が、教室の床を淡く染めていた。
風がカーテンを揺らし、外では桜がまだ少しだけ残っていた。
俺は、いつも通り、誰とも目を合わせずに席に座っていた。
静かで、何も起こらないはずの時間だった。
「転校生を紹介します」
担任の声に、教室がざわついた。
その中心にいたのは、長い黒髪の少女。
静かに立ち、ほんの少しだけ口角を上げていた。
「リザです。よろしくお願いします」
その微笑みは、どこか遠くを見ているようで、でも確かに俺の胸をざわつかせた。
まるで、誰にも見せない秘密を、ほんの少しだけこぼしたような笑顔だった。
「ねえ、レオ。あの子、すごい絵を描くらしいよ!」
コナが俺の席に駆け寄ってきた。
美術部の部長で、俺を何かと部室に引っ張り出そうとする、太陽みたいなやつだ。
その笑顔は、リザの微笑みとは正反対で、まっすぐで、眩しい。
「俺は幽霊部員だ。関係ないだろ」
「でもさ、リザちゃん、ルーヴル美術館のコンテストで賞取ったんだって! すごくない?」
ルーヴル。
そんなやつが、なんでこの高校に?
俺は、リザの微笑みをもう一度見た。
そして、確信した。
あれは、何かを隠してる。
俺の観察眼がそう告げていた。
そして、なぜかその“秘密”が、気になって仕方なかった。