第8話 「勇者」「賢者」「聖者」
ゴンダラフは3人の転移人に魔王討伐の使命を説明する。
「テラウス」星の世界観。
宇宙の神、9代目神龍「ゲンダルフ」の存在。
テラウス星の国の情勢、多種族との対応の一通りの説明を終える。
「あ、テラウス星の「精鋭者」というのは「勇者パーティ」と同義語ですね。
昨今地球では勇者物のお話が流行りですから便宜上、ここでは勇者パーティと呼ばせていただきます」
「聖者」のノゾミは真剣に耳を傾け、
「賢者」のアヤカは茫然自失状態。
「勇者」のタケルは興奮して熱く語る。
「70年ぶりに魔王復活。オレたちは勇者パーティとして魔王軍、魔王を討伐する為に召喚されし者。これは胸熱展開!!」
「当面は貴族などの悪意や思惑に利用されないようお気をつけください。先代の転移人達はそれはそれは苦労されておりました。
特に「真龍神教教団」という邪神教団の存在には要警戒です。できるだけ関わらず極力避けるよう警戒してくださいね」
「虐げられる転移人。特権階級との確執。邪神教。異世界テンプレてんこ盛りだねぇー。
けどお話し的にはちょっと、古くささが否めないねー」
「熱いぜ!」
「起きたら夢。起きたら、夢……」
「兄の心はもう異世界無双勇者。姉は思考停止かー」
「ここまでのところ、ご質問はありますか?」
「はーい」
ノゾミは手を上げる。
「はい、希美さん」
「国や権力者からも転移人は異端扱いとか詰んでませんかー?」
「そこは信頼に値する最良の仲間を探し出すのです。
王道イベントのように冒険者を目指し、ギルド、商人、領主、王族関係へと少しずつ信頼関係を築き上げてゆくのです。
さすればおのずと道が開けていくことでしょう。
これが異世界冒険の醍醐味、要は小説やRPGと同じ展開ですね」
「神さま、けっこう地球に精通してますよねー?」
「地球のアニメやラノベ、ゲームのコンテンツは私たち神や管理者にも絶大なる人気を誇っていますよ」
「地球、スゲー!」
「地球人が生み出した芸術、絵画、音楽という文化、この宇宙ではベスト260位と上位に位置しています。私も色々なジャンルを嗜んでいるのですよ」
「それでも上が259もあるんだ…」
「スゲーー!」
「神さまって観念じゃなく、実在するんですね。実在するとしても霊的な存在と思ってました」
「転移人で、そこまで踏み込むとは貴女が初めてですよ。
もちろんこのガワは容物なのですよ。
思念体に語り掛けるより、親しみが持てますからね」
「なるほど、人間への配慮というわけですか」
ノゾミはゴンダラフの頭の龍の冠を指す。
「話しを聞く限り、神さまは龍の化身。神龍の龍はこの世界を象徴するものなんですか?」
「この世界だけに留まりません、全宇宙です。
宇宙の新たな星々は、私たち神龍の初代宇宙神が創生したものです。
特にこのエンダー星域は昔から龍の影響が色濃く、至る所に象徴の神龍像が飾られ、祀られております」
「「テラウス」星だけの神さまじゃなく、広大な宇宙全域ですか…。
ちょっと頭が混乱状態です」
「無理もありません」
「全宇宙ということは、アタシたちの住む地球にも少なからず神龍の影響や感化が受け継がれているということですね。
日本のヤマタノオロチ。中国の青龍、北欧神話のドラゴン。たくさんの逸話が残され、これらはその名残りなんですね」
ゴンダラフは満足げに頷く。
「無宗教ですが龍のビジュアルが気に入りました。さすがに帰依とまではいきませんが、象徴の神龍像を敬いたいと思います」
「それは何よりのお言葉ですよ」
「けど懸念もありますね。神や宗教がまつわると言えば宗教戦争。巻き込まれるとかあるんですか? ちょっとコワイです」
「この星でも昔は宗教による戦は盛んに行われていましたが、今は国の権力者による領地合戦、侵略戦争がほとんどです。
現在は宗派同士協力関係を結び争いもなく平穏といえます。
先ほど危険と伝えた「真龍神教教団」に限り例外ですが。
「真龍神教教団」は他の宗派、私たち神龍との因果関係はありません。
独断で私利私欲の為に行動している狂逸な教団です」
「「真龍神教教団」は要注意という事ですね。
神さま的に認める正当な教団や教会とかはあるんですか?
異世界創作物の定番で、冒険中に教会で神さまと通信とかあるんですけど、もし降り立つとしたなら礼拝してみたいんですが」
「参拝は敬意の表れ。そんないい子たちには特別な情報を与えましょう。
「ゴッド・ドラゴン・スピリッツ」という私たち神が認める大聖堂が、王国の「タチテビ」領地の「リキズイ」という街にあります。
魔王と闘った過去の転移人に対して恩が有り、世代が変わっても信徒たちは転移人に協力や支援は惜しまないでしょう」
「協力者は少数ながらいるというわけですか。それは心強いですね」
「もし立ち寄ることがあるのなら大聖堂の神龍像を礼拝してください。
その像は特別な神像で現神の「ゲンダラフ」神様が傾聴してくれるでしょう」
「それって、アタシたち地球人が霊的な存在の神に祈るような、祈っても施しや望みは叶えられない抽象的なものなのですか?」
「その通りです。神が地上や人の前に顕現するわけではなく、概念的で超自然的な存在と捉えておいてください」
「現実には神龍「ゲンダラフ」神は実在してるけど、人類の前には現れることはない。概念的存在と捉えてくれと」
「はい」
「この「テラウス」では神像に語りかけても伝達だけ。
神さまからの応対はなし。
願いや要望にも応えられない。
「ゲンダラフ」神さまが、耳を傾けてくれるだけの一方的なものというわけですね」
「その通りです」
「神さまと対話して助力や援助を期待してたんですけど、無理ですかー」
「残念ですがこの宇宙にも規律があります。
神は星や人類、転移人に対して干渉できない立場となっております。
関知も助言もこの「神の白い部屋」までとなります」
「規律や立場って全能な宇宙神ですよね?
神さま以上の存在、妨げる者、制限や制約なんてあるんですか?」
「申し訳ありませんが、これ以上は禁則事項ですので」
「転移人を召喚して他の星に送り込む。これも干渉の内に入るんじゃないんですか?」
「詳しくは語れませんが神は案内人。
星々の危機により、召喚などを介してほんの少し手助けをする程度なのです。
その星での問題や今回の魔王討伐など、補完するのはあくまでその地の人間、もしくは召喚された転移人なのです」
「宇宙のルールはよく理解できませんが、
神さまは初動を補助するだけ、それ以降は傍観者ということですか?」
「さすがに召喚されるだけあり賢い子です。ここまで踏み込むとはなかなかな才ですよ」
「過大な評価を。全知全能の神さまと比べればまだまだお子さまレベルです」
「いえいえ、私の部下に欲しいくらいですよ」
「今回の召喚の件、自分なりに状況を把握し考察しましたが、やはり冒険は戦々恐々ですね。行動も死も自己責任。セーブもコンティニューもなし。
とても過酷な環境下のなか生き抜けるような気がしません」
「貴方たちを召喚した9代目「ゲンダラフ」神様の選定に間違いはありません。
武瑠さん彩佳さんは運動神経、身体能力が同世代と比べ超越しており、地球では複数のスポーツ、競技で頭角を現しております。
次女の希美さんは飛び級で海外の大学を卒業。現在はいくつもの企業を立ち上げ、さらに日本人初の女性初の棋士。
地球では文武兼備を兼ね備えた才能の持ち主たちです。
元来の天性。地球人は潜在能力、期待値、能力値が極めてハイレベルであり、
「テラウス」星では適性が特出しており、身体能力、魔術の底上に適しているのです。
そして召喚特典でもある神からの恩威。神の寵愛。
「テラウス」星ではさらに才能が開花することになることでしょう」
「ということはアタシたちは各能力、魔法やスキル、異世界物お約束の力を得るということですか?」
ゴンダラフはウンウンと頷く。
「おー!ラノベ展開、RPG要素満載だな! ハードモードらしいが、やりがいあるな!」
「タケ兄、熱量上げ過ぎー」
「ちょっと! さっきから聞いてるけど、意味分らなすぎでしょ」
「お、アヤ姉、復活」
「アンタらもなに真に受けてるのよ。こんなバカげた話し鵜呑みにする?
魔王?を倒さないと家に帰さない? 意味分んないって。
何の力もない私たちがそんなことできるわけないでしょうが」
「アヤ姉は現実主義者だからねー」
「アヤカアヤカ、ここの異世界にはスキルがあって、」
「黙れバカ兄!知らんわ!」
アヤカは猛烈な勢いで抗議する。
「あなた!私たちが行方不明になったら家族や警察が黙ってないわよ。誘拐よ、誘拐!大騒ぎになるわよ!」
「アヤ姉、もうそんな次元じゃないよ。神さまからのお言葉だよー」
「そんなお言葉なんて知らないわよ!拉致しておいて! インターハイの準備があるの!いいからとっとと家に返せ!」
「魔王討伐は数年を要します。通常は行方不明のままの帰還となりますが、希望するのなら討伐後は時間軸を戻し元の年齢、元の場所に戻る事もできますので、そこは心配はご無用です」
「…数、年?」
「長っ」
「過去の討伐は最短で2年、最長で30年でしたね。ですがご心配いりません。ここでの年月は帰還した際、原状復帰となりますから」
愕然とするアヤカ。
「じゃあ、地球に帰っても今の17歳から生活ができるということですか?」
「はい」
「かなりの待遇ですね」
「アフターケアは当然のことです」
「しかし元の地球に帰還できる保証があっても危険要素は変わりませんよね。これって拒否権はあるんですか?」
「申し訳ありませんが召喚された時点で強制です」
「それでもイヤだと抗ったら?」
「説き伏せるのが私の仕事です」
微笑むゴンダラフ。
「横暴よ!理不尽すぎるでしょ!帰せ!家に!」
「そうですかー、説き伏せますか。話し合いが決裂しても強制ですか……」
「貴方方はこの「テラウス」星の冒険により人間的に精神的にひと回りもふた回りも成長することでしょう。「テラウス」での冒険など長い人生の物語、過程でしかありません。
魔獣魔物が跋扈する過酷な世界。強敵や権力に翻弄され、世間の卑劣さ、あらゆる憎悪など冒険を通じて経験していきます。
しかし困難や絶望、負の感情ばかりの物語ではありません。
兄妹同士の絆、新たな仲間たちとの友情、信頼。そして悲しい別れもあるでしょう。あらゆる苦境苦難の事象を乗り越えた時、知見が広まり、そして冒険を為し遂げた時、この経験は貴方方の糧、将来の財産となることでしょう」
「おー、これは要約すると、オレたちが成長する物語か!」
ゴンダラフはウンウンと頷く。
「んー、良いこと言ってる風だけど、選ばれし者って特別感醸し出してるけど、アタシたちただ神さまに勝手に選ばれて巻き込まれただけなんだよね。何かもうアタシたち冒険する前提なんですけど」
「もちろん魔王討伐の特権として、地球では得られないレアの見返りが与えられますよ」
「ほほう、そのレアな見返りとは?」
「魔王討伐したあかつきには、健康体と病み煩いのない身体が与えられます。他には若返り、身体的な部分整形。
過去に1人だけ、当時の時代から数十年先の未来を望む人がいましたね。
希望すれば多少の過去未来など、好きな年代を選んで帰還し暮らすことも可能です」
「けっこう凄いんだけど、見返りがそれってちょっと弱くないですか?
過去未来なんて興味ないし、整形、健康体も望まないかな。今で十分だし」
「生涯病気と無縁は、人類が切に望んでも手に入らないものですよ」
「それはそうだけど、実感できないのもちょっとね。
どうせならこの世界で培った能力、地球でも魔法やスキルを引き継いで有用できるようなお得感がないと、うま味がないかな?」
「アイテムや金銀財宝を持って帰りたいです!」
「物欲的ー」
「申し訳ありませんが、ここでの魔法やスキルの承継、形なるモノの持ち込みは禁令とされておりますので」
「けど、こちらの要望も聞き入れてくれないと納得いかないかな」
「何の心配してるのよ!納得より今すぐ帰れる説得しなさいよ!」
「そうですね。彩佳さんのコンプレックスは胸の小ささですね」
「はあっ!?」 (////)
「胸の大きい妹さんや友人への劣等感が見受けられます」
「な!? なななな、セクハラ発言?」
「神さま、心の中読んでるのか?スゲー」
「そこは感心しちゃダメ。精神感応なんてさすがに人権軽視で反則技だよ」
「先ほど召喚した際に記憶のデータを読み込んだだけで、意思や思考など読み取る行為などはしておりません」
「だといいんだけど、さすがに心を読まれるのはねー」
ノゾミはアヤカの胸を見る。
「アヤ姉、そんなに悩んでた? たまにアタシの胸、犯すように見てたけど」
「はあああ!?」(////) (汗)
「では巨胸、一時的にその願望を叶えましょう」
ゴンダラフはアヤカに向け杖をかざすと、平らな胸が膨らんでいく。
「わ、わわっ!?」
「おー! 巨乳ちゃんになった!」
「………」
胸を凝視のアヤカ。
「魔王討伐を果たしますと、その胸のまま地球へ帰還することが可能です」
「………」
「D、E?」
ノゾミは胸を触る。
<プ二プ二>
「本物のおっぱいだ。外出用の見栄のダミーパットじゃない!」
「………」
「( ゜∀゜)o彡°おっぱい!おっぱい!」
杖を再度かざすと、膨らんだ胸が元通りになる。
「あ……」
「あー!元の小学生並のペッタンコペッタンに!
これはアヤ姉、異世界行き、一考の価値がありそうだ!」
「さて、いかがでしょうか?」
タケルは挙手。
「はい! オレは熱い冒険がしたいです!」
ゴンダラフはノゾミを見る。
「前向きに検討したいと思います。
ちょっと3人で話し合いしてもいいですか?」
「はい。かまいません」
「会話、聞かれたくないです」
ゴンダラフはイヤホンを取り出し、
「私は音楽を聴いていましょう」
「おし、作戦会議始めるよー」
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8 「勇者」「賢者」「聖者」 終わり (58)
9 ステータス・オープン! (59)
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