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第5話 ルーデル 転移人と遭遇する

雑木林。


右脚が紫色に変色して膨れ腫れあがり、気力と体力が衰えていく。

視界は霞み、意識が少しずつ遠のく。


完全に詰んだ……。

ここで死んで、獣に亡骸を喰われ…終わりか。


あの時……見捨てた罰だな。

罪悪感が半端ない。

だが、キング・ゴブリン。

あの状況は、逃げる一択、だろう……。

人の命より、自分、の、命……だ――ーー


意識が薄れていく中、女性の声が耳に響く。


「いたよ!」

「どんな人?盗賊なら放置よ」

「今まで遭った盗賊は徒党を組んでたから外見では見分けがつかないな。仲間割れとか捨てられた線も考えられるが」


2人の女性の声と男性の声。


人だ……。

しかし、こんな所に回復術師や、高価な薬を持っていたとしても、糞尿垂れ流しの薄汚い冒険者には…。

野盗や盗賊の末路に見える、よな……。


「盗賊じゃないよー。ジョブは斥候。名前はレーデル・ギャラガ―。この世界、苗字あるってことはそれなりの人かな?」

「LVは?」

「52。いままでの最高記録。状態は脱水症状。衰弱。リトル・ポイズン・スパイダーの猛毒異常」


何でオレの名前が? LVも?


「パンパンに腫れてるな。これはオレやアヤカの低い聖魔法では無理だ。

寿命1分切った。ノゾミ、頼む」

「じゃあ治すよ。 光よ……いや、聖なる、うーんと……」

「いいから早く!」

「[ポイズン・ピュリフィケーション LV 7]」


右脚の激痛が癒えていく。


「[ヒーリング LV 8]」


LV 8? 上位回復術師? こんな所で?


毒の解除で腫れた脚の痛みが引き、

回復のヒールで、瀕死の状態から身体が嘘のように軽くなる。


目を開くと少年の顔。


黒いローブ、マジックハットの少女が「クリーン」と言葉を発すると、

冒険服、身体の汚れを落ちていく。


「これで服も体もキレイキレイ、と」


「これが冒険者の末路か。油断大敵、気を引き締めないとだな」


「アタシがいるから大抵は何とかなるんだけどね」


心配顔の少年が、


「大丈夫か?」


マジックハットの少女が、


「危いところだったねぇー」


少年ともう1人の少女は緑と黒の縞模様の服装。


「ぁ…うぅ……」


喉がひりつき声が出ない。


「声が掠れてるね。水、アヤカ水の出番だよ」


「え?この人に?」


「アタシたちには飲ませたじゃん」


「アンタらは身内だからいいのよ。この人、他人よ」


「回復だけでは脱水症状まで改善されないよ、一刻も争う緊急事態だよ!」


緑服の少女は、黒い空間から水の入った瓶を取り出す。


空間、の収納!?


収納袋ではない空間収納に驚く。


「はい、お水」


瓶に似た形状を受け取ると、ガラスとは違う柔らかい感触の瓶。

蓋を取ろうとするが外れず、それを見て少年が蓋部分を回すと蓋が取れる。


「回す文化なし。これは空ボトルだけでも価値ある物になるね」


濁りのない透明の冷やされた水を飲み、喉が癒されていく。


生き返った!助かった……。


少年は笑顔で接し、

ローブの少女は好奇心、

もうひとりは心配そうな表情。


3人は10代中頃の年齢。

冒険者にしては身綺麗で見慣れない服装。


顔つき振る舞いは平民のような質素な印象はない。

差し出した手と爪に汚れはなし。


裕福層の、いや貴族か?

金持ちの興味本位の冒険ごっこ?


いや、それよりも名前やLVを知られていた。

鑑定? 聖女? こんな若い子が? こんな辺鄙な場所に?


「水はいくらでもあるからな。もっと必要か?」


翻訳された耳に届く言語は、この国でも帝国でもない不思議な響き。


「えっと、言葉通じてる? 襲ってきた盗賊の言葉は分かったが、こちらからは通じないとか?」


「…ああ、通じてる」


「よかった。立てるか?」


差し伸べられた手を取り立ち上がる。


脚の痛みの完治。体調も完全回復。

上位魔法だとしたらいくら請求される? 聖女からの癒しとなれば…。


「まだどこか悪いか?」


「いや、少し混乱しているだけだ。治療、水も助かった」


「よかったねぇー」


このローブの子が聖者? 

聖女がこんな辺境な地で冒険を?ありえないだろう。


それとも王国か帝国で選ばれた精鋭者(勇者パーティ)か? 

王国なら教団の聖者? 違う、教団の聖女は50近くと聞く。


聞きなれない言語。見たこともない服。不思議な瓶。


この3人は言い伝えの「転移人」の、勇者一行?


「オレはタケルだ」

「アヤカです」

「ノゾミだよー」


転移人特有の名前……。


「レーデルだ」


「レーデル、いろいろ教えてほしいことがあるんだが」


「あ、ああ。オレに答えられることがあるなら何でも、命の恩人だ」


「ちょっと遠い所から来てね。この国の事を知りたいんだ」


その遠い所とは、転移人がやって来るという「チキュウ」か?


問いただしてもいいのだろうか? 混乱してきた……。


「アタシたちねー、地球から召喚された転移人なの。ここでは勇者、賢者、聖者で通るよね?」


「おい、ノゾミ」


「自重はしないって昨日の夜に決めたでしょ。もちろん人は選ぶよ。誰彼かまわず転移人と宣伝するわけじゃない。信頼できそうだし、命の恩人だし、ねぇー?」


チキュウからの転移人確定か……。

オレの目の前に転移人、信じられないな。

変に隠されるよりはいいかもだが…。


「表情から察するに、感づいていたよね?」


「…ああ、その通り。戸惑っていた」


「アタシたち、まだこの世界に来て2日目なんだ。いろいろ情報やこの世界のルール、街とか案内してくれると嬉しいんだけど」


「オレに出来ることなら、助けられた恩は返したい。対価が見合わず返しきれなさそうだが」


「対価なんてそんなの気にしなくてもいいぞ」


「おし、テラウス第一冒険者ゲットだぜ!

そうとなったら腹ごしらえ。ねえ、そのリュックにお鍋入ってる?」


「…あるが」


「鍋!」


「アヤ姉、パン祭りも飽きて、お米禁断症状出てるしお米炊こう。

レーデルもお腹減ってるだろうし」


「何日、遭難してた?」


「…5日か、それ以上か、よく覚えてないな」


「やっとパンから解放される!」


傍に転がっている背負い袋から、持ち手のない鍋を取り出す。


「ワイルドだねー、蓋は?」


「すまん、蓋はない」


「え!? ああー! 蓋無いとお米がぁ……」


「この際、お湯沸かしてカップ麺でよくないか?」


「とりあえず、ガッツリならそれで我慢するわ!」


「獣や変な虫も集ってくるし、家の中で食べよか」


「そこまで明かすか」


「自重はしなーい。[ハウス!]」


目の前に屋敷が出現する。


なんだこれは? 家? 

何者? いや、転移人か……。


★★


家の中。

リビングと床続きになっているダイニングキッチン。


怯え挙動不審で辺りを見回すレーデル。


「靴履いてないと落ち着かないんだが」


「ここではこれがハウスルールだよ」


「レーデル、椅子に座ってくれ」


全員ダイニングテーブルの椅子に座る。


「転移人って家屋を出したり、みんなこうなのか?」


「多分違うな。オレらはけっこう特別かもしれない。

ちょっと聞きたいことがあるんだが、この国で裸で天狗の面を股間に付ける風習とかないよな」


レーデルは驚く。


「チキュウでは面を被せる奴がいるのか?」


「ないない。昨日森の中で股間に天狗の男を見かけたんだが」


「命知らずの変態だろ。猛獣や獣魔が潜む森でそんな馬鹿、今頃生きていないだろう」


「…まあ、うん……だよな」


「やっぱり何らかの理由があるんだよー」


「その話しはやめて、思い出したくもない」


タケルはカセットコンロにガス缶を設置して火を点ける。


「魔道具?」


「これはカセットコンロという火の道具。この世界では魔道具で通るのかな?」


「こんなきれいな型は見たことがない…」


「○WTANIのコンロだよ」


「メーカー名、言われても分からんだろう」



「そういえば、空間の、収納? 驚きなんだが」


「あー、やっぱし珍しいのかな? ギフトだよ」


「空間収納持ちは物語や、昔の大賢者くらいしか話を聞いたことがない」


「空間収納保持者はいない、もしくは未確認かー」


「魔皮を使う収納袋はあるが」


「魔の皮、それは興味深いねー」


「その火の魔道具ガスコンロもそうだが、ここまで光って洗練された物は初めてだ。それはこの周りの壁や、物、家屋、全部に当てはまるが」


「どれぐらいの文明レベルかまだよく分んないけど、中世ヨーロッパ的ならタイム・スリップした未来の世界だね」


アヤカは鍋を浄化して、ペットボトルの水を入れてコンロの上に乗せる。


「いろいろ聞かせてもらうよ」


ノゾミは愛用のノートパソコンの電源を入れ、壁紙を見せる。


「この子は軍人で「○ーニャ・○グレチャフ中佐」だよ」


軍服姿の幼女。


「姿絵? チキュウでは子供が戦争するのか?」


「そう」


「ウソ教えんな。これはマンガ、と言っても分からないか。架空の人物で架空の物語だ」


「娯楽本?」


「ねえ、無性に「○ター・ウォーズ」観せたいんだけど」


「地球が誤解されるだろう」


「じゃあ、ジャパニーズ・アニメの「○ピュタ」で」


「そこは指輪の物語だろう。ここの世界観と被ると思うぞ」


「それなら前日譚の「○ビット」からかな?」



ノゾミはワードをクリック。


前日に記録したプロローグの後に、

のぞみメモ、と打ち込む。


アヤカは次々と空間収納からカップ麺を取り出す。


「ラーメン、ソバ、ウドン、焼きそば。どれがいい?」


「アヤ姉、ちがうちがう。

これ見たことある? から始めなきゃ。で、見たことある?」


「…この形状は初めてだ。

これはウドン?…他のは分からない。ウドンに似てるようだが」


「日本のウドン? この世界にもあるのか」


「過去の転移人が食の調理で広げたんだよ。ゴンちゃん(神さま)から食事情は少し聞いてた」


アヤカは缶詰とチーズかまぼこを出す。


「この世界に缶詰はある?」


「ある。缶に絵は初めて見た」


「お高いの?」


「貴族の食料品。上級冒険者用の高級携帯食料だ。

これ1個で銀貨3枚以上は必要なんだが……サバの、ミソニ?」


「「え!?」」


「漢字、読めるんだー」


「かんじ、が何かは知らないが、

翻訳スキルで「神龍語」「古言語」以外は大抵は読めるはずだ」


「翻訳、宇宙共通? ヤバくね?」


「スキル、ギフト、力を入れ過ぎだろ……」



――

5 ルーデル 転移人と遭遇する 終わり    (55)

6 追放系突入?               (56)

――  

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