第42話 改革 (ゴトー編9)
(ゴトー編9)
平原。
地面に置かれたアイス・バッファロー5頭の亡骸。
元村長の料理人とエルメダは肉の解体作業を少年らに指導。
捌き方、各肉部位の説明。
成人女性、少女は料理人から料理の下準備、野菜の切り分け方を教わる。
幼い子はスイスイやリュウノスケのボール・ジャグリング。
トラキチやケルローの背に乗って遊んでいる。
ゴトーはその様子を動画で撮影。(主に獣人の子を撮影)
シーナがやってくる。
「のう、ゴトーよ」
「何だ」
「解体はゴトーがやった方が早いんじゃないんか? 魔法で浮かせ、パパッとの」
「ここでは子供たち、大人たちの全ての者に仕事を与える。食い扶持を得る為の労働は必須」
「それはええ心掛けじゃの」
「しばらくは流民のような生活が続くが落ち着いたら料理や調理。
農産物の栽培、家畜の飼育、薬草などの知識。
対人戦、獣の狩り方を教えるつもりだ。
それと並行に文字の読み書き、計算も教えるつもりだ」
「料理や狩りは子供でもやっとうが、孤児に読み書きや計算?」
「この世界では無学、無知の者を欺く輩が横行している。
平民は年齢を問わず、理不尽に搾取される対象。
とくに孤児に存在意義など無いに等しく、奴隷に堕ちいるしかないのが現状だ」
「…そうじゃの。じゃがそれは世の仕組みじゃ。仕方がないことなのじゃ」
「その見識ではいつまで経ってもこの世界は変わらない。改革を行う必要がある」
「改革て、そんなん口に出したらまずい言葉じゃわ」
「シーナほどの柔軟な考え方をもってしても保守的な階級至上主義か。その固定概念ではいつまで経っても世界が変わることはない。
従来の制度や習慣を変え新しい取り組み、文明開化をしなければならない」
「文明、開化…?」
「地球でも数百年前まではこの世界と同じく王族や政治権力が蔓延る社会制度だった。
だが人々は意識改革を行い、長い年月を掛け生活水準の向上など豊かで暮らしやすい生活や環境を築き上げてきた」
「生活の向上? ゴトーが言いたいことはチキュウのように暮らしやすい国を推進するいうことか? 無理じゃろ、動画のチキュウのようにド派手になるんは」
「俺の見立てでは可能性は十二分にある。
このテラウスには資源が豊富。自然から採取した化石燃料や鉱物物資。
地球もこれらを利用して今のような時代や文化を形作ってきた」
「戦争に発展するいう黒い水の事か。なかなか難しそうじゃがこの国でチキュウのようになるとか、やっぱ想像できんわ」
「文化のレベルが上がると音楽を奏でる機械、スマホの画像のような装置を作る事ができる」
「何と!」
「それらを利用して動画を映し出す機械。アニメを制作してそれらを鑑賞。自らゲームを制作して、遊戯できるようになる」
「何じゃと! ここでも「らぴゅた」を見たり、「てとりっす」で遊べるじゃと!」
「しかしそこに辿り着くまでは長い道のり。王侯、権力者、平民などの意識改革が必要だ」
「意識改革は分かるが、アレキ王も何年も苦労しとる。
上級貴族がそもが幅を利かせてるでの。
一向に変わる気配はない。どうやって意識を変えていくのじゃ?」
「まず第一歩として孤児や平民たちに様々な認知や知識を与える。第一段階として国語、算数の文字の読み書きと計算だ。
その他も地球の学科で例えるなら、理科、社会、体育、音楽、図工、音楽、家庭科だ。
作法や行儀、社会のルール、幅広い知識を教え育てていかなければならない」
「それで「てとりっす」が遊べるようになるんか?
それはいつ頃じゃ?10年後か?」
「とりあえず、ゲームから離れて考えろ」
「お、おう…」
「巨大な権力、情勢がそれを許さないのは分かっている。
身分社会のこの時代、平民への教育制度など支配者にとって騒乱の種。平民の優れた賢い存在など権力者にとって阻害や排除の対象にしかならないだろうからな」
「そうじゃの。優秀な平民など権力者にとっては目の上のたんこぶじゃ。
帝国のようにクーデターを起こされるんじゃ、その前に目を摘まされるかもじゃしの」
「しかし体制や制度を変えなければこの先の文化の発展は望めない」
「そのための意識改革なんか?そんなんできるんか?」
「できないじゃない。やるんだ。
「諦めたらそこで試合終了ですよ」と、安西先生の名言もある」
「……それ2回目じゃぞ。試合ってなんじゃ? 安西先生って誰ぞ?」
「絶対王政が悪とは限らないが、より平等で公正な社会を目指しその為の体制や新しい時代を築き上げていかなければならない。
君主が絶対的権力を行使した政治体制の脱却。
未来を見据えなければこの世界はいつまで経っても貧困のまま、社会の変化や時代に取り残された世界になるだろう」
「危い言じゃの……それに厳しい言葉じゃ」
「誰かが立ち上がらなければ、進歩も進化も遂げることはないだろう」
「なんか壮大じゃの……。じゃあ、どうすればええんじゃ?」
「地球を基準にするのなら、いま述べた意識改革を行い、産業革命を経て、今以上の経済活動を目指していかなければならない」
「想像もつかん物凄いことを言っとるの。
じゃがそうは言うても長い時間が掛かるんじゃろ?
いまチキュウがここと同じじゃったら何年かかって「てとりっす」を作り上げたんじゃ?」
「4、500年か」
「ワッチはもう生きとらんわ。頑張ってももう200年ちょいしか生きられんぞ」
「一朝一夕にはいかない。そこに至るまで長く時間が掛かるものだ。全ては小さな一歩から始まる」
「…それで勉強、なんか?」
「俺が知る限りの知識を与えよう」
「それって、ゴトーの仕事なんか?」
「異世界獣人孤児院を開設するということは、そういうことだ」
「………」
「やるからには真剣に取り組む姿勢だ。まずはこの先、奴隷のように搾取されず孤児が1人でも生活する手段、向上心や自立心を与え、俺がこの世界を去っても生きられる術を教えこむ」
「それなら、ゴトーなら得意そうじゃの…」
「その為には獣人孤児院が不可欠。
文化面や教育施設などこの国は遅れている。
ゆくゆくは学校を設立し、1人前になるまで勉学に勤しむ構想もある」
「がっこう…?」
「学び舎だな。この世界では貴族など身分の高い者が学ぶ学園という括りか。
自分らの制度を受容するような都合のいい特権や魔法を学ぶところではない。学校はこの先、生き抜いていく為の知識や道徳を教え込む所だ」
「…どうとくって、なんじゃい?」
「モラルだな。自発的に正しい行為を促すための内面的な理。
命を大切にする心や他人を思いやる心。
差別意識、善悪の区別など正しい人格形成を成す事だ。
それらを大人たちが導き、子供たちに規範を示していかなければならない」
「高尚な考えじゃの。ん? 矛盾しとらんか?
ゴトーはまるで聖人ムーブをかました言い方をしておるが、
チキュウでは暗殺者で、人をバンバン殺してたんじゃろ」
「俺のような人間を作らない為に、未来ある子供たちには正しい心や意識を持ち合わせてもらいたい。
しかし、自衛や自己防衛の為の殺人は可だ。理不尽な権力者、野盗や強盗などに立ち向かう術、その為の対処方や暗殺術、闇に葬る方法は教える」
「…これもまあ、物騒ぽくゴトーっぽいのう」
「これが本職だからな」
「獣人や平民の子供らの為の学び舎か。親が居る子は家職の知識や技術などを教えておるが、親の居ない孤児を学び舎で学ばせるとは……」
「全ては獣人孤児院の為。ここではこの世界の既成概念を払拭させ、何にも捉われず俺流でいかせてもらう」
「それ、大丈夫なんか…?」
「問題ない」
「なんか殺し屋の軍団が出来そうなんじゃが…。
まあゴトーなら、じゃな。
まったくもって凄い発想じゃわ。がっこう、意識とやらは」
「在学中、卒業後のサポートも充実させたい。
社会に出る為に魔法、職種の適正、各自指標を決め、可能なら各業種の職業訓練、斡旋場も設けたいが、そこは試行錯誤しながら進めなければなならないな」
「そこまで考えてるとは、至れり尽くせりなのじゃ」
「俺は小さな切っ掛けを与えるだけだ。
本来これは外様の地球人の俺の仕事ではない。
これが発端となり軌道に乗るのなら、後はシーナたち、この国、テラウスの大人たちの仕事だ」
「耳が痛いの…。ワッチらでこの国の事を考え、支えいうことなんじゃな…」
「ここで特定のストーリー展開を指すフラグを立てようと思う」
「……?」
「現この国の王は、アレキシード君だ」
「………」
――
<補足>
アレキシード君とは?
過去にシーナに求婚を申し込むも断られた当時王子のアレキシード。
現在レイブル王国27代目国王。25歳。独身。
歴代から続く悪政とは真逆(先代王父親除く)、
善政を敷き庶民から絶大なる支持を得る。
しかし国庫の財政難。帝国との領土争い(現在は停戦中)。
反国王派、教団などのパワーバランス。
王族による国全体への影響力は決して大きくはなく、
立場的にはそれほど強固とはいえない。
――
「過去にシーナを求愛。
生涯のパートナーを娶らず、独身を貫くのは、今だに恋、思い焦がれてるいるからだろう」
「……アヤツに協力を要請しろ言うんか?」
ゴトーは頷く。
「あまり気が進まんが、確かに一番の近道かもじゃの…。まあ頼むくらいなら」
「要請だけでは弱い。前進への意欲にはアレキシード君にも褒美が必要だ」
「………」
「シーナが告白を受け王女の座に付くようなら、モチベーションはとてつもないものになるだろう」
「おまっ、なんちゅうことを考えるんじゃい!」
「その為のサポートは俺は惜しまない」
「アレキ坊とは色恋なぞないわ、そんなん」
「シーナが生きている間に急速に文化が発展、ゲームやアニメが作られるかもしれない」
「……なんちゅう魅惑な言なのじゃ……いや、ないわ。天地がひっくり返っても婚姻は絶対ないわ」
「この婚姻の初回特典としてアナログにはなるが、このスマホから音楽が流れるようなレコードという音楽機。
スマホのような画像を撮る写真機。
長距離電話機。
魔法や魔石を頼らずに、この世界に現存する物で、
造ることが可能な設計図を送らせてもらおう」
「……は?」
「これにより、地球より文化面での発展は数百年は早まるだろう」
「………」
「ホトライト領での砂糖の生産や菓子の件。
シーナの子供の件。獣人孤児院建設。
その次はアレキシード君との接見、婚約、結婚の運か。
今後のプロットは決まったようなものだ」
「な!? いやいや、早計じゃろが!」
「これが王道のストーリーというものだ」
「アレキ坊など弟か甥、いや、もう子みたいなものじゃわ。
婚姻はない、変なストーリー組み立てんな。
ゴトーが喋ることは、ホントになりそうでコワいわ!」
「そうか・・・。さすがにこればかりは強要はできないか」
「当たり前じゃい」
「なら、忘れてくれ」
「分かればええ。この話し今後一切なしじゃ」
「結婚祝いとして、この「○witchlight」と、全ゲームソフト。
タブレット、アニメ付きを祝儀と考えていたが、これは無駄になるか」
「……何じゃと!?」
「ゲームは1日1時間。アニメは1日2時間。この縛りはなくなる。
シーナだけは文化の発展を待たず、ゲームやアニメを独占、享受できるが無理強いはできないか・・・」
「え? え? いや、そりゃ……」
シーナは動揺する。
「ゲ、ゲームがワッチの物に……」
エルメダがやってくる。
「ゴトー、なにを話してるの? シーナが挙動不審なの」
「今後の展開についての話しだ」
「まさかシーナとゴトーとは結ばれる展開なの(怒り)」
「は!? そんなことあるかい!」
「そのルートは存在しない。シーナは妹のような存在だ」
「それならいいの。解体が終わったの」
「御苦労だった」
「ゴトーのワイフとしては当然なの」
「エルよ、誤解を招くようなことはやめい」
「褒めるの。頭をナデナデするの」
<ナデナデ>
「シッポもフサフサするの」
<フサフサ>
「シッポに触れたの。求愛行動なの。もうゴトーのお嫁さんなの」
「いや、そんな騙し討ちみたいんはノーカンじゃろ」
「シーナ。いますぐ結論は出さなくていい。この件はゆっくりと考えればいい」
「………」
★★
ゴトーは「空間収納」から長テーブルや大量の椅子を取り出す。
「凄いの!」
「いつの間にこんなに作ったんじゃ……」
人数分の椅子。
背部分には名前付きのオオカミやウサギの絵。
「椅子を並ばせるのは小さい幼児の仕事だ」
「分ったの。伝えてくるの」
エルメダは魔獣と遊んでいる子供たちの所へと行く。
「これは猫獣人のカシナの椅子じゃな」
背には猫の絵とカシナの名。
「ここでもマメなんじゃな……。
大きさも微妙に違うし、ほんにオーダーメイドじゃの。
ん? 獣人じゃない人族の奴のマークはどうなっとるんじゃ?」
他の椅子を見る。
「あー! スイカのゲームの果物になっとる!」
「ここでは著作権フリーだからな」
「小さい子はサクランボで、一番老齢なアルバートがスイカになっとるの……。
ん? ワッチの椅子にスイカのマークが増えてるぞ?」
「年齢序列だ」
「………」 ←68歳
――
42 改革 (ゴトー編9) 終わり (92)
43 ハンバーグ実食 (ゴトー編10) (93)
――




