第41話 ノゾミのプライベート
ー7日目ー
林道を走行する4WDワゴン車内。
タケルは運転。
アヤカは助手席でコッペパンにジャムを塗り食べている。
「昼メシ食べてまだ1時間なんだが」
「お昼なんて昔でしょ」
後ろの座席では、アルメダとクリスは初めての車で恐怖と緊張に固まり、
レーデルは車酔いのため、気分が悪く俯いたまま。
ノゾミとイルメダは元気よくスマホの動画を観ながら歌を歌っている。
――
「らららコッペパン♪ らららコッペパン♪」
「ららら、いつも、かわらない、あじ~♪」
「~拳銃持って、威嚇で撃って♪」
「ようきゅうは、こっぺぱん♪」
「「~ら ら ら ら コッペパン♪」」
――
「ノゾミせんせいと、お歌、たのしいの!」
「アタシも楽しいよー」
車に酔ったレーデルが、
「すまないが、外に出たいんだが……」
「タケ兄、ちょっと止めて」
車を停止。
レーデルは急いで車から降り茂みに向かう。<オエエェェー>
全員が車を降りる。
「揺れ耐性ないかー」
「初めての車だし、体質もあるからな」
「くるま、すごいの!お馬さんよりはやいの!」
「イルちゃんは順応力高めだねぇー。レーデルを癒してあげてね」
「わかったの! [まじかる・ひーる!]」
「道が酷すぎるのよ。まるで未舗装路じゃない」
道は凸凹。
地面には石ころや大量の葉っぱが堆積している。
「本道なんだけどねー。日本はインフラ整備整ってるって実感するわー」
泥だらけの車体。へこんだフロントボディとバンパー。
「へこんだな。オークってもう熊の上位互換だろう」
「あれはもうグリズリーよ。壊れたら修理なんてできるの?」
「修理か、ノゾミなら……」
タケルはノゾミを見る。
「さすがに車の修理もメンテも知識なしではできないよ」
じゃあ広い所を探して、奥の手、ショートカットしますか」
★★
平原。
ノゾミは「空間収納」から軍用機「○スプレイ機」を出す。
「タ ケ コ プ タ~」 (ドラ風)
「どこに竹の要素がある」
「ツッコミあざ丸水産」
巨大な鉄の塊の物体にテラウス人たちは驚愕。
「地球の輸送機だよ」
「なんか、コワイ……」
「鉄の、竜?」
「こんなの、初めて見ます……」
「すごいの!かっこいいの!」
飛び跳ね喜ぶイルメダ。
「これ、お空を飛びます。鳥さんやドラゴンのように」
「「「……?」」」
「こんなモノ頼んでたの?」
「誰が操縦するんだ?」
「ア タ シ。当然、運転したことあるよー」
「車じゃないのよ。操縦の免許なんて持ってないでしょう?」
「この世界に、免許は必要なのかい?」
「さすが、これで飛ぶのはな…」
「兵員輸送機だから、この人数なら余裕で乗せられる」
「さすがに空の上は勘弁よ」
「そうだな。素人の操縦なんて不安しかない」
「ベテランパイロットからの講習時間、1時間」
「却下」「却下よ」
「2年前。とある外国の小さな王国でのお話。
アタシの会社と業務提携継続の契約時にね、そこの王子さまにベタ惚れされました。アタシが!」
「「……妄想?」」
「王子はアタシの気を引こうと最新鋭の戦闘機や、F1マシンに乗せてくれ、コレの操縦も一通り教えてもらい運転させてもらった」
「プロが側に付いてたんだろう? 状況が違うだろう」
「その、王子ってなんなのよ?」
「小さな国の王子って、まさか前に来日してきた鉱石の国のレアメタル王子の事か?」
「そう」
「イケメン王子のシェラール王子!? ワイドショーやニュースでやってた?」
「なんか、アタシに会う目的で来てねー」
「……それは、仕事か? 私事か?」
「何度も何度もしつこく求婚されてて、結婚してくれとアタシの会社に乗り込んできたの」
「「結婚!?」」
「それでどうしたんだ?」
「逃げた。ほら、2年くらい前に家族で熱海旅行したでしょ。
綿密に計画を立て、誰にも探られず、諜報員や追跡のプロから逃げれたよ」
「……そういやあの時、妙に警戒して挙動不審だったような? 延長するって無理言ってダダ捏ねたり」
「ちょっと!王子のプロポーズ断ったの? もったいなくない!」
「アヤ姉、メンクイ?」
「独身女性の憧れでしょうが!大金持ちで顔がいいなんて」
「アタシの姉が美男でお金が好きなミーハーだった件」
「空港やホテル前に全国から何百人もの女性が集まってたよな」
「あの時アタシ15だよ! とてもとても本気の大人のお付き合いとかないわー。王子、ロリ認定だわー」
「このうざいノゾミのどこに惚れる要素が…?」
「タケ兄よ、うざさは演出だよ。
それに人を外見だけで判断するのは過ちの元。
いやいや、アタシ外見もそこそこいいと自負しているんですけど!」
「一応、ほんの少しだが謙遜もするんだな…」
「要は内面よ。分かる人には分かる純粋無垢な乙女。
なおかつ気品や品性。何より野心の塊のような強い女性を体現したかの――」
<ヒソヒソ>
「ねえ、本当? さすがに王子とかって飛躍し過ぎなんだけど」
「ノゾミは虚言癖もあるが、謎人物のところもあるからな」
「仮に本当だとしたらこれもう人間? 宇宙人に乗っ取っとられてるとかなんじゃない?」
「おいおい、可憐で可愛い妹を宇宙高位生命体と疑がってるのい? 確かに機会はあったんだけど、家族と一緒に居たいがため断念したんだよ」
「……そうか、断ってくれて、ありがとう」
「比喩ではないんだけどね」
「悪いけど、さすがに王子とか次元が違い過ぎて信じられないわね。
アンタの言動はワタシらをからかってるようにしか思えないし」
「まあ、妹としてウザいよねー。アタシ異世界に来てだいぶ性格が変わってない?」
「一人でブツブツ、隠キャのような性格だったからな。稀に今のように、うるさいほど弾けてはいたが」
「異世界に来てこんなキャラも必要と判断してのこと。
タケ兄、アヤ姉がこの世界の習慣や環境、強い不安や葛藤を感じることなく、ストレス過多にならないよう、ウザキャラを演出してるだけ。
アタシがボケて突っ込むことで、ストレスフリーになるよう仕向けているんだよ」
「今のノゾミの性格は、本来の性格じゃないと?」
「アンタ、無理してたってこと?」
「いや、どれもアタシの素だよ。言うなれば、ギヤを変える感じかな? 生活環境に応じて人格が変わる、7変化のいい女と呼んでくれてもかまわないんだよ」
「「ウザっ」」
「アタシがブツブツと悪魔ー悪魔ーと囁くネガティブ思考なら気が滅入るし、仲間たちとの人間関係や冒険の旅にも支障がでるでしょ?
まあポジティブで陽キャな2人にはどのアタシでも問題なく接し、ストレスとは縁遠い話しかもだけど」
「アンタ無理はしてないのね?」
「見ての通り、ここに来てエンジョイしてるくらいだよー」
「正直、家では心配だったのよ。何考えてるか分からなかったし、自分の事、何も喋らないし」
「さすがアヤ姉、うれしい言葉をもらったよ。
もしアヤ姉が世界を敵に回すような展開に陥っても、アタシだけは味方で全力で守ってあげるからね」
「そういうところよ、アンタのウザさって」
「誰が見ても世界を敵に回す側はノゾミの方だろう」
「これからはもうひとつギヤを上げようかと」
「これ以上、上がるのか?」
「アタシの人間性を理解してもらうため、これまでの人生の軌跡を披露しましょう。王子との画像や普段封印している画像を初公開、解禁します」
「「……」」
ノゾミはスマホの画面をスライドする。
――
ー画像ー
アメリカ大統領とのツーショット画像。
大統領と肩を並べ、Vサインしているノゾミ。
――
「これはホワイトハウスの執務室だねー」
「「………」」
「…なんで大統領と?」
「アタシの会社が開発したセキュリティ・システムが役に立ってテロリストを一網打尽にしたって。それ関係で招待されたとき。
大統領自ら秘書か特別顧問にしたいとか、断るのに苦労したよー。
The President is a friend of mine.」
「「………」」
画面をスライドする。
――
ー画像ー
宇宙服を着て船内で浮遊しているノゾミ。
――
「○AXAの○SS、宇宙に行ったとき~」
「「………」」
「…なんで宇宙船に?」
「アタシの論文「スペース・デブリの安全性と対策」が評価されて搭乗させてもらった。
○ASAにも就職斡旋で誘われたけど、断るのに苦労したよー。
The Earth was blue」
「「………」」
画面をスライドする。
――
ー画像ー
豪華な調度品が飾られてる室内。
――
「英国王室に招かれたとき」
「なんで?」
「守秘義務で言えないけど招待」
「「………」」
「話しが弾んで気に入られてねー。
非公式だけど養子にどうかと誘われたけど、さすがにそれは恐れ多いし、お母様とお兄様とお姉さまと離れ離れはね。
愛する家族、兄妹愛がそれを阻止したんだよ」
「「………」」
画面をスライドする。
――
ー画像ー
外人が複数いる会議室の中。
威厳のある大人たちに囲まれているノゾミ。
――
「これは?」
「やべっ、これは見せれないやつだ」
「え? なんなのよ?」
「ちょっとした、会議だよ……」
「映画に出てくる、マフィアにしか見えなかったわよ」
「どうみても大物感漂う、怪しげな人たちなんだが……」
「まあ、大物には違いないかな?」
「まさか裏の世界の住人?
秘密結社の○ルミナティとか、○世界秩序とか……」
「そんな都市伝説的な……NATO関連の、平和会議、だよ~」
「言いよどむところが怪しいんだが」
「これこれ、ほらシェラ王子でしょ」
――
ー画像ー
王子とのツーショット画像。
F1カーに乗るノゾミ。
戦闘機に乗るノゾミ。
――
「羨まし過ぎるだろ、これ」
「男の子の夢だよねー。動画もあるよ」
―――
ー映像ー
360度展望レストラン。
夜景が映し出される。
目の前には豪華な料理。
対面にはシェラール王子。
「キレイな夜景だねぇー」(ノゾミの声)
「ノゾミにプレゼントだ」
王子は手を上げ合図。
花火が上がる。
「おースゲー、映えるー!」(ノゾミの声)
四方八方、隙間なく花火が上がる。
「ワ、ワワワ、やりすぎじゃない?」
「ノゾミの為に1万発、日本から花火を取り寄せた」
「カオス過ぎでしょw。目で追い切れないよー」
球体展望台の上横、上下全方位に花火。
「キレイだねぇー」
「君の瞳の方がその何倍も綺麗だよ」
「またまたぁー、他の女性にも言ってるよねぇー」
「ノゾミ! 私の生涯のパートナーに!」
「うおっ!?」
宝石箱を開けると、輝く赤いダイヤモンド。
「は? いやいや、困る困る!」
「私と共に生涯を!第一夫人に!」
「いやいやいや、」
<プツン>
――
動画が途切れる。
「「…………」」
「彼はアタシの外見と内面と才能に惚れたのかな?
シェラも地球基準なら行動力もあって文句はないんだけどね。
危く受けそうになったけど、アタシには夢があった。
そう、それはこの世界で叶えられるのかもしれない!
受けなくてよかった!あの時のアタシ、good job」
「「………」」
「この子なら地球でも召喚とかで悪魔を呼び出したりとかできたんじゃない?」
「怪しげな儀式で、生成して産み出すくらいしたかもな」
「神が選んだんじゃない、アタシが引き寄せた感じかな?
ここに来たのは必然だったのさ。
さあ!ルシーさん、未来の夫の魔王さまをアタシの前に連れてきて!」
「この子、もう誰も止められないの?」
「これもうノゾミが主人公でもいいよな……」
――
41 ノゾミのプライベート 終わり (91)
42 改革 (ゴトー編9) (92)
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